大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

森と芋虫

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そんなこんなの結果、朝飯も取らず、魔獣を狩りつつ飯も探さなきゃいけないらしい。
ちなみに夕飯までに帰ってこいとのこと。
「あれ?森が…」
「ああ?」
門の外の森は、普通に森…ってのも変な表現か。
まぁ、紅くないってだけなんだが。
まだ門のところにいた四班リーダーの代理、ナナキが答えてくれた。
「あぁ、それかい?この森って、危険な人とかが来たら、真っ赤になって警告を出すんだよ。…レィア、知らなかったの?」
知るか。
「なるほど…そんな理由だったのか…」
ラウクムくんは納得したように頷く。
「ほら、さっさと行くぞ。腹減ったし、ついでに寝不足で眠いったらありゃしない。終わらせて寝たいんだ」
「それは貴女の事情でしょうに…」
腹減ってんのはみんな共通だろ。
門を出て、すぐにナナキ達四班と別れた。
「レィアくん、ここってどんな魔獣がいるんですか?」
クアイちゃんが聞いてきた。
「初日にも言ったけど、なんでも。結界のすぐそばだし、破られたら真っ先にこの森が狙われるしね。ちなみに地理的な理由だかなんだかで結構ほかの結界より脆いらしいぞ」
そこで一旦セリフを切り、アクビを一つ。
…クアイちゃん、めっちゃ怖がってるんだが…。
「数年前まではここまで酷くなかったんだけどな。ほら、新しい聖女様はまだすこし未熟なんだろう」
「レィア、レィア。話ずれてるよ」
おっと。ナタリさんに感謝。
「で、何がいるかだっけ?結界の向こうのヤツは何でもだけど、結界のこっち側のヤツは…あぁいた」
指をさした先には…馬鹿デカイ芋虫が。
サイズは…ちょうど赤ん坊より一回り大きいぐらい。そんなのがそこらじゅうの木の上からぶら下がってる。
「ヒッ…」
誰か知らんが悲鳴が出かかったな。
「あれが結構どこにでもいる。多分魔獣かな?」
「多すぎですわよ!」
「やかましい。耳元で叫ぶな。キンキンする」
軽く殴りながらアーネを黙らせる。
「速く、迅く、疾…った!」
「馬鹿かテメェは」
思わずもう一回殴ったわ。
「なんですの!まだ気づかれてない今が好機ですわ!邪魔しないでくださいまし!」
「本気で言ってるならいっぺん死んでこい」
頭を掻きながら突っ込んどく。
「ラウクム、説明」
「えっ、僕!?」
「わかんだろ?なんとなく」
「…えーと、多分、こんなところで火を使うなってこと?」
「大正解」
コイツ、こないだの炎の矢の魔法使う気だったろ。
そんなもんをここでぶっぱなされると、森が燃えるわ。
あと、この芋虫は…。
「コイツ、油を大量に含んでて、村じゃ普通に燃料によく使うぐらいだから。こんなところでそんなことしたら、全員ウェルダンだぞ」
パッと見、十匹はいる。即死級だボケナス。
「あと、そこそこ硬いから、金槌とかで殴った程度じゃ砕けないと思う」
「じゃあどうするっていうんですの!?」
アーネが少しイラつきながら聞いてきた。
あと叫ぶな。喧しいといったばかりだろうが。
「中に通す系の打撃、もしくは胴体と頭の間を切り落とす。アーネは凍らせて砕けばいいだろ」
それぐらい考えろ。栄養が脳じゃなくて胸に偏ってんじゃねぇのか?
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