大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

判決と処分

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さて、夕飯から魔獣の襲撃、さらに四班(というか班長くん)の暴走を止めたところでようやく一段落。あとは風呂入って寝るぐらいで終わり。
「なわけないでしょう?シィルさん?」
…デスヨネー。
逃げようとしたら先生に捕まった。
「フィーネさんとエデルネスさんを連れて一緒にあとから来てください。あぁ、大至急で」
先生、顔が怖いです。
「えーと、場所は?」
「……とりあえずテントにいるので、適当な部屋を見つけて用意しておいてください」
あぁ、先生、とりあえず呼んだだけで、場所とか考えてなかったのか…。
さて、エデルネスって誰だ?
………。
……。
…。
エデルネスって班長くんの事だったのね。
自分の班メンバーじゃなかったから、四班の班長くんに聞いたら、凄まじく不機嫌そうに「俺だ」と答えてくれた。
ちなみに彼は運んでからすぐに目覚めたそうな。
まぁ、それはともかくとして、三十分ほどで用意は整った。
二階の自分の部屋を一つ適当に用意して、先生とナナキ、あとは主犯のヴォルテールくん(エデルネスくんの下の名前。苗字で呼ぶのはなんか嫌)を呼び、机を囲んで座る。
今回のことについて自分とナナキで説明していくにつれて先生の顔がどんどん険しくなって行く。
「ふむ、エデルネスさん、今回の事で何か弁明することはありますか?」
説明が終わると、先生がヴォルテールくんに確認をとる。
すると、ヴォルテールくんが本当に、本当に不思議そうな顔をして爆弾を落とした。

「何故、魔獣を攻撃しただけでここに呼び出されたんだ?」

瞬間。
空気が。
凍った。
「伏せろ!」
瞬間、ナナキの手足が爆ぜるようにして『開いた』。
手足から出たモノは、槍、剣、ナイフ、矢等々…。
それらが一気に射出、ヴォルテールくんに殺到したが、忠告が幸いし、全て彼の後ろの扉に突き刺さった。
伏せるのがギリギリ間に合ったヴォルテールくんは、再び声を上げる。
「見ろ!やつもまた魔獣だ!魔獣が魔獣を庇っただけに過ぎん!」
馬鹿が…!ナナキを煽る結果にしかならないのがわからないのか!
当然、ナナキが踏み込み、さらに蹴りを加えようとして…。
「そこまで!双方下がれ!」
先生の声が響いた。
どれぐらいの音量かというと、さっきの攻撃でボロボロになった扉が崩れるぐらい。
こっちからは先生の顔が見えないが、見たこともないぐらい怒っているのが、後ろ姿でもわかる。
そして、その怒りを向けられたヴォルテールくんは、伏せたまま、動けなくなってる。
「ヴォルテール・エデルネス。お前は『聖女直属英雄育成学校』に相応しくない」
先生の言葉から敬語が消え、ドスの効いた声が響く。
ヴォルテールくん、真っ青で歯をガチガチ鳴らしてるんだけど…。
「度重なる住民への非礼、忠告の無視、そしてそれらを全く反省しないお前は強くもなく、美しくもなく、さらに品位にも欠ける…!」
学校に初めて来た時のことを思い出した。
強さ、美しさ、あと品位。この三つが大切だ、とこの先生が教えてくれたんだったな。
「今の話は全て学校側に伝わった」
そう言うと、さっき壊れた扉から、蝙蝠が飛んで来て、先生の周りを飛び始めた。
あぁ、先生のスキルか…てことはアレも魔獣?しかも伝達とか出来る?便利だなぁ…。
「そして今…」
先生がなにか今言いかけた瞬間、窓を破って矢がヴォルテールくんの真横に突き刺さった。
「学校側の判断が下された」
先生がゆっくり、見せつけるようにして矢を拾い、へし折る。
その矢から白い光が放たれ、映像が浮かび上がる。
映っているのは、つい最近の筈なのに、遠い昔に思える入学式で祝いの言葉を言っていた美人さん…。あぁ、学校長か。
『ヴォルテール・エデルネス。貴方を退学処分とします』
簡潔に、それでも内容は一発で伝わる、そんな言葉がその口から放たれた。
流石に少し厳しいと思わなくもないが、心のどこかで当然という思いがあった。
そして、その一言は。
「っっえ?」
彼に対する罰としては、充分すぎたようだ。
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