大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

怒りと沙汰

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突き出したナイフは、ナナキの右肘に刺さり、捻ったことにより、恐らく二度と使うことが出来なくなっただろう。その痛みに彼女は悶絶する。
とでも考えたのだろうか。
「いったいなぁ…!」
ナナキの右腕はナイフに突き刺されつつ、そのまま伸びて彼の喉を掴む。
そう、『伸びて』。
手首が飛び出し、そのまま締め上げ、彼の喉を潰さんばかりに握る。
その手と腕は糸で繋がっている。アルケーの糸だ。
「あぐっ…!」
「アンタは言ったよね?」
ぎりぎりと締めつつ、気道は確保しているらしい。
「『俺達が近づいただけで斬られた』、『俺達は何もしていない』だから?だから『明らかに魔獣』だって?」
生かさず殺さず、そんな力加減で締めつつ、言葉でも締めていく。
「なら…ボクもただ近づいただけで腕を斬られた。アンタらも魔獣ってコトだね?」
「ちがっ…!」
「違わない!」
何か言いかけた班長くんを遮り、声を上げるナナキ。
「一体どこが違うんだ!近づいただけでボクは怪我をした!誰がさせたのか?お前だろうが!闇に紛れて近づいて、それに怯えた子達がアンタを攻撃した!それが答えだろう!確かにアンタらのセリフは何一つ間違ってないだろう。けど、私が見た、感じたものはアンタらのものとはかけ離れてた!」
そう言うと、ナナキは一気に締め上げた。
「…ぁ」
班長くん、オチたな。
それでも締めるナナキ。流石に不味い。
「ナナキ!そこまでだ!」
「…」
無言で手を離し、そのままスルスルと手が腕に戻っていく。パチンという音がし、殆ど元通りになった。
違うのは、ナナキの右肘がボロボロにやられている事と、班長くんがオチたことか。
「アーネ、班長くんに回復魔法を」
「指図しなくともやってますわ!…というか、班長くん?」
おっとイケナイ。ついそのまま言っちゃった。
「アンタら…」
「お前達も人形を壊したのか?」
流石にここまでキてるナナキに全部任せるわけには行かないので、自分が喋っていく。
「い、いや、私達はただ人形を囲め、としか…」
そう魔法使いの女の子が答える。ん?なんか糸みたいなものが人形を囲ってるな。魔法か?それともスキル?どんな効果かもわからないが、どのみち人形をそれで出られないようにしていたのは明らかだな。
「お前らの事は先生と相談してみるか…」
「そんな!せめて内密に…!」
あぁ?コイツら、まだ求めるのか?
「「いい加減にしろよ?」」
おっとハモった。
ナナキの火に油を注ぐなよな…。
「アンタらを今すぐ全員をバラしてその辺りに捨ててもボクは構わない。むしろ、それをしないだけありがたいと思え!」
…先生との話し合いには、ナナキも連れた方がいいだろうかと、本気で悩みはじめた。
それにしても、と足下の班長くんを見る。
なんでこんなにも人形にこだわったんだろ?
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