大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

能力と『救出』

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いい加減、ナナキのスキルをしっかりと教えておこう。
効果をわかりやすく説明すると、『モノを操るためのモノを生み出す能力』が一番わかりやすいだろうか?
…訳分からんよな。
実際、ナナキが人形を作るところを見せてもらった所、青白い糸みたいなものを手から出して、それが人形に入っていったら、人形の完成だ。
ちなみにこの糸、生きてるらしく、ナナキにはどうなっているのかとかが分かるそうな。
だから人形がピンチだとか分かるらしい。
え?作るのが大変なんじゃないかって?聞いた感じ、簡単そうだって?
…実は、人形一体作るのに、大量の素材が必要となる上に、自分じゃ理解できんぐらい複雑な仕組みになってる。
で、あの人形、体中そこらにやれ刃物だの、やれ杭だの、やれ弓矢だのと仕込まれている。
しかも、人形なのに生きているらしく、経験を積むと、どんどん強くなっていく。
…特に森の外は、片っ端から倒すような人形だと危険だから、長い年月をかけて育ってない個体だと無差別に…それこそ殺戮人形キリングドールよろしく狩りまくる。
そして、森の中を警護、もしくは魔獣を狩る役割をしているのは比較的若い人形と、数体の長い時間を生きた人形。
ナナキが四班班長くんと話してたのは、実話だが、彼が言ってたようなケースも若い人形によって引き起こされている事実もある。
…さっき言い合いしてた四班班長くん、明らかに不服って感じだったもんなぁ…。
そんなことを思いつつ、ナナキと一緒に現場に向かおうと、門の方へ再び足を向ける。
「シィルさん!彼らを無事、助けてきてください!」
先生が焦りを含んだ声をあげる。
いくら人形が魔獣じゃないって言っても、そう簡単に認識は変わらないか…。
明らかに四班が人形を『狩っている』のに、四班を『助けて』、か…。
思わず舌打ちの一つでもしたくなる。
さっきも言ったように、人形は無手に見えて武装している。
そしてくわえて、その戦闘能力は一番若い個体でも、変化して産まれたタイプの魔獣なら上半身のみで倒せる。
正直、四班が人形に勝てる見込みはないと思っていたのだが…警戒音は鳴り止むことはなく、ずっと人形がやられていることがわかる。
「ナナキ、方向は?」
「東」
いかんな。ナナキ、ブチ切れてる。
「先生、一応急いで探すし、助けもするけど、万が一手遅れだった場合は諦めてください」
「…っ」
先生がなんとも言えない表情になる。
「アーネ、いい加減狸寝入りはやめろ」
顔を蹴ろうと足を振り抜くと、ひょいと避けられた。やっぱりか。
「なんですの!」
「一応、回復役として来てくれ。どうせ、全部話は聞いてたんだろ?」
アーネが舌打ちし、無言で肯定する。
「ナナキ、どのぐらいかかる?」
「約五分」
「だそうだ。五分だけ堪えろ」
人形は…いや、アイツらのところへ行くのに人形を使うのは不味いか。
アーネをまた髪で引っ掴み、門から出る。
アーネが何か抗議の声を上げてたが、無視だ無視。
ナナキは…いない!?もう出た!?
不味い!
「アーネ、ホントに気絶すんなよ?」
「ふぇ?ーーーーーーぇえ!?」
何か言ったか?そんな事に気を使う暇なんてない。
五分で着く東方向…ポイントとしては大樹か?
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