大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

案内と扉

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「とりあえず《緋眼騎士》さんはこちらへ。…ところで彼女は…?」
カイル…だったか?彼に連れられ、一週間とちょっとぶりに聖学の門…と言うか玄関を通る。門なんてものは無いからね。
「あー、アーネ・ケイナズだ」
「あぁ、彼女が十五号室の…余程仲がいいみたいですね」
ちなみに、なんで俺がアーネを紹介したかと言うと、アーネが降りる時の衝撃で気を失ったから。いくら何でも空中で落ちながら変身してアーネを下ろすのはやり過ぎだと思うんだ、トゥーラさんよ。
アーネからしたら、寝ぼけ眼を擦って状況把握をした時には上空ン十メートル、下手したら百メートル越えか?そんな上空で身体を椅子に縛られている上、乗っている黒い何かは超々高速で空を飛び、猛烈な風圧に煽られながらしばらく。止まったと思えば落下して…誰だって気を失いたくもなるだろう。
……なんか今日、コイツずっとこんなのだな。
「周りからはそう見えるらしいな」
ひとまずカイルのセリフには短くそう返し、「おや、おんぶまでして」なんて言うカイルを無視して彼について行く。
「目的地は?」
「学校長の部屋です」
あそこか。よく行っていたし、別に案内されるようなところでもないと思うのだが。
「そうか、なら勝手に行く。さっきのクッションは助かった」
「そうですか?けど僕も学長室に用があるので一緒に行きましょうよ」
「……そうか」
あとはカイルが一方的に喋り散らして俺が適当に返しながらゆっくり歩く。それでも五分と経たずに学長室に到着した。
うーん、扉が前よりか少し豪華になってんな。まぁ別にいいけど。
「では先にどうぞ。僕はここで待ってますから」
「ん?あぁ」
『にしても…これもしかして、学長が直々に呼び出してるってことか?』
シャルがポツリと呟くように言う。
さぁ…?そう言や、他の二つ名持ちはどうなってんのかね?
ま、今考えてもそう答えは出ないし、なんなら今から聞けばいい。
てな訳で行ってみますか。
「失礼しまぁ、すッ!!」
「えっ、ちょっと何を──」
挨拶替わりの回し蹴りが扉に突き刺さる──ん?変な手応え。
とはいえ扉はバァン!!と壁に思い切りぶつかって派手な音を鳴らす。壊れはしないが。
「………。」
「……あなたはどうしてそう騒々しい入り方をするのですか?」
ため息を一つ吐き、眉間を緩く揉むようにして学校長がそう言う。
俺はひとまず扉を閉め、学校長の方を向いて低めの机の上に腰掛ける。
「………無駄なところに変に力入れたな。障壁をたかだか扉一枚に刻むとは。いくらかかった?」
「毎度毎度壊されて直すより、多少手間がかかっても壊れないように工夫をすべきなのは当たり前でしょう?」
うーん、蹴りで壊れなかったか。髪で強化入れるか。
『ンな事どうでもいいだろ。ホレ、本題は入れ』
あ、そうか。忘れてた。
「で?本題は?」
ソファにアーネを置き、自分は机の上に座り、立膝を立てて聞く。
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