大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

要請と説得

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「俺、明日から聖学に戻るわ」
朝の食卓でそう言ってみると、アーネがピキリと固まった。ちなみに飯食ってんのは俺とアーネとシエルだけ。エルストイは昨日から泊まり込みで仕事してていないし、アーネの両親はまだ帰ってきてない。そろそろ帰ってくるという話を昨日聞いたのだから、今日か明日あたり家に着くんだろう。着くんだろうが………
「な、なんでですの?」
「ほれ」
と言って放り投げたのは昨晩の矢。アーネはそれを恐る恐る拾い、検分し始める。
「聖学の紋章……どうしましたの?」
「どーもこーもねぇよ。手伝いしろって駆り出されるだけだ」
つーか聖学の紋章なんてあったのか。嫌い過ぎてロクに見てなかったから知らなかった。
どこかでシャルの溜息が聞こえた気がしたがスルーして話を続ける。
「春休み終わって新学期まであと一週間無いだろ?当然入学試験もそれぐらいなんだが…」
「あぁ…分かりましたの。つまりその試験監督ですの?」
「そこまで上等なモンじゃないと思うぜ。文面的に」
と、言いはしたもののアーネは首を傾げる。そりゃ当然。文面的にもクソもない、なんせ見てないんだし。
「噛み砕いて言っちまえば雑用だよ。監督はあくまで先生達。俺とか他の二つ名持ち、あとは旧クラスの生徒が雑用するんだと」
「雑用…ですの?」
雑用と言ってもかなり変わってる…と言うか聖学らしいと言うか。
「コース上に放つ魔獣の世話とか、ドロップアウトした奴の介護とか応急処置、あと出来たら死体の回収とか、その辺のヤツだろうな」
死体の回収と言った所でアーネの顔が少し強ばる。
「ち、朝食の席でそういった事を言わないでくださいまし!」
悪い悪いとひらひら手を振り、矢をアーネに返してもらう。
「んで、物は相談なんだが」
アーネの方を向いて、少し考えてからもう一度口を開く。
「もし良かったらアーネも一緒に来るか?」
「えっ?」
なんだそのキラッキラの目。
「実はどうもヒーラーとかが足りねぇらしいんだ。本業が炎とかブッ放すお前から少し不服かもしれんが──」
「行きますわ」
即答かよ。よくもまぁ嫌いな奴からのお願いをそう食い気味に受諾出来るもんだ。俺なら鼻で笑って「一昨日来やがれ」ぐらいは言いそうだが。
「いいのか?面倒なだけで、お前にメリットはほとんどないと思うんだが…」
「いいんですの!」
「………ん、いく」
「シエルも行きたいのか?」
こくこくと頷くシエルだが、彼女には残ってもらう予定だ。
「シエル、悪いけどお前には残ってもらうつもりだ」
「………?」
なんで?と首を傾げるシエル。少し言いにくいのだが…なんと言おうか。
まさか直球で「連れていくメリットがないから」とは言えない。だってシエルは回復魔法も治癒魔法も使えないし。あとマキナを回収して欲しい。
「シエルには……そうだ、おつかいを頼みたくってな。シエルが聖学に来るまでにはマキナの調整が終わっているはずだから、それを俺の所に持ってきてくれないか?」
とかなんとか言ってやや強引にシエルをゼランバに残す説得をした。
あぁそうだ、この会話で思い出した。
一度ベルの所に行かんとな。
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