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「何であんたが縮こまってるんだ?世の人間は、俺の美貌を放っておけないから俺が注目を浴びてしまうのは仕方ないけどさ。」


栗栖のその堂々とした姿を見て、この子の自分を知っている力はなかなかのものだ、と感心する。
引率が私みたいな冴えない女でごめんなさいと心の中で思いながら、プリントアウトしたものを確認して、店の端に用意された机で断裁する。


「それ、何で切るんだ?ちょうどいい紙に印刷すれば切らなくていいんじゃねーの?」

「うん、そうなんだけどね。ここが紙の端まで入っているデザインだから、印刷領域を超えちゃうから。
 少し大きい紙に印刷してきれいに端まで入るようにしてるの。」

「へえ、面倒なことするんだな。別に見えなくても誰も気にしないぜ。」

「まあそうなんだけど。そう言うのが気になるのがデザイナーって言う職業なのよ。今回は枚数も少ないから私が自分で切ればいいかなって。」

「ふうん。」


今回の注文は3セット。メニューは見開き2ページで両面印刷。
お試しで置くので簡易的にラミネート加工して二つ折りにすることになっている。
このプリントサービスのお店では、ラミネート加工もしてもらえるので切ったメニュー表をラミネート加工と、折りやすくするために真ん中に線を入れてもらうスジ入れしてもらう。


「栗栖くん、興味があるならやってみる?」

「いや、俺はいい。見てるのが楽しいから。」


暇かな?と思って栗栖に作業をふってみたところ、ぶっきらぼうに断られてしまった。
一連の流れを側で見ていた栗栖の目が輝いていたので、ひょっとしたらデザインに興味があるのかもしれない。


もう少し仲良くなったら、デザインに興味あるのか聞いてみようかな?


かつての自分も、子どもの頃仲の良かった近所のお姉さんが、デザイン関係に努めていて憧れたのを思い出す。その頃の自分と重ねて、栗栖の様子をかわいいなと思う。
お会計を済ませて店を出ると、栗栖は出来上がったメニュー表を受け取ってその場で別れることになった。


「え?私お店までお届けするけど?」

「ここまでしてもらって、また店まで来てもらうのは申し訳ないから受け取って帰ってくるようにって、狐崎オーナーから言われてるんだよ。今日はありがとな。」


そう言って踵を返した栗栖は、一旦立ち止まり私に向かって振り返る。


「次は明後日じゃなくて5日後にデザイン案持ってきて欲しいって狐崎オーナーが。詳細はメールするって。じゃーな!」


爽やかな笑顔を浮かべて、手を振りながら帰って行った。
そういえば、お店をお借りして結構長く打ち合わせをしてしまった。次の予定があったかもしれない。
貴重な時間を沢山いただいてしまい申し訳なくなったが、次もまたデザインが提案できる喜びの方が増して、帰り道の心は軽かった。


今度、お祈りした神社にお礼を言いに行かないと。こんなに素敵な出会いがありましたって。
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