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5日間の猶予を貰えたので、デザイン案をしっかり作り込んでも時間が残ってしまった私は、就職情報を漁っていた。
就職先をあっせんしてもらえるとの話は有難いけど、やっぱり自分でも探しておかないと!という申し訳なさと、無職であるあせりがそうさせたのだ。
出ている会社は変わり映えせず、掲載されているのはすでに落ちた企業や返答待ちの会社ばかりだ。
まだ会社を辞めて1カ月も経過していないのに、そう簡単に求人情報が入れ替わるわけもない。
息抜きでもしようと外へ出ると、急に神社にお礼を言いに行かないといけない気がした。
電車に乗り、たしかこの辺りだったとビル街を歩くと、ぽっかりと緑で彩られた一角が現れる。
あの神社だ。


あの時は、本当にたまたまたどり着いたから気にしなかったけど、本当に神聖な空気がある場所だなあ。


そんなことを思いながら、鳥居をくぐる。
あの時とおなじ、凛とした空気と外界と切り離されたように喧騒が消える。
心の中にあった焦りがすっと引いていく感覚がある。


癒されてる感じがする。これが神様の力ってやつかな?


ゆっくり大きな深呼吸をして、緑の香りを楽しむ。
手水をし、神様に参拝する。
二礼二拍手
手順を踏んで賽銭箱にお賽銭を以前よりは多めに入れて、神様に感謝をする。


この神社に来なければ、私は「あやかし街」にたどり着くこともなく、今も不安な毎日でした。
ありがとうございました。
まだ先行き不安な状態ではありますが、おかげで落ち着いて前に進むことができます。


お祈りが済むと、最後に一礼をして踵を返す。
すると、お社のほうから何かに呼ばれたような気がした。
振り向くと、そこには綺麗なグレーの毛並みの犬が座っている。


こんなところに、犬?しかも首輪もリードも付いていない・・・?


「綺麗なワンちゃん、どうしたの?」


聞く間もなく、犬は変化した。
栗栖によく似た、しかしもっと大人の男性がそこに現れる。
端正な顔立ちは少し瞳に憂いがあり、栗栖よりもっと黒に近い紫がかったグレーの髪が風になびいている。
まぶしくて見ることも出来ないくらい、美しい。
見とれている私に近づいてきた男性は、開口一番こう言った。


「君が六狼ろくろうの言っていた、板狩杏美いたかりあずみですか?なるほど。普通とは少し違った空気を纏っている。何より私を怖がらない。」

「あの、どなたですか?六狼ろくろうって誰ですか?」


流石に美青年とはいえ、知らない人に声をかけられるのは怖い。
少し後ずさりながら答えた私の言葉を聞いて、美青年は困ったように首をかしげている。
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