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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第26話
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新しく淹れてもらった紅茶とクッキーのような焼き菓子を食べながら、イアンはぼんやりと周りを眺めていた。
グスターヴァルも疲れたのか、いつの間にか体を丸くして眠っているようだった。
極寒と言われていた北の森とは思えない程、穏やかな空気が流れている。
そして、ふと思い出したようにイアンは自分の手をじっと見つめた。
先程グレースによって魔力を上げてもらったはずだが、全く変化は感じられない。
本当に魔力が上がったのだろうかと、両手をグーパーと握ったり開いたりしてみる。
やはり何か変わったようには思えず首を傾げた。
「ふんっ。魔力というのは簡単に分かるものではない。自身の魔力が強い者か、感覚が鋭い者でもない限りは感じ取ることは無理だろう」
何を考えているのか分かったのか、グレースがカップをソーサーに置くとじっとイアンを見つめながら話し掛けてきた。
「……そうなんだ……」
ちらりとグレースを見た後、へぇっと頷きながら再び自分の手を眺める。
「休憩は終わりだ。おい、そこのドラゴン。さっさと起きろ」
グレースは席から立つと、後ろで丸くなっているグスターヴァルに向かって声を掛けた。
どうもグレースはグスターヴァルの扱いがちょっと酷いように感じるのは気のせいだろうか。
しかし、特に文句を言うわけでもなくグスターヴァルはむくりと体を起こした。
じっとしていたが、本当に眠っていたのだろうか。
「私が手を貸したのだからな、失敗は許さんぞ」
すると今度はイアンの方をじろりと見ながらグレースが話す。
「えっ!……あ、はいっ!」
驚いて声を上げてしまったが、確かにそのとおりである。
失敗するわけにはいかないのだ。
イアンも慌てて席を立つと、グスターヴァルの横へと移動する。
じっと見上げると、グスターヴァルもイアンを見下ろした。
ついにグスターヴァルを人間に戻す時がきたのだ。
緊張して手が震え出す。
気持ちを落ち着かせようと、ぎゅっと両手に拳を作って握り締めた。
「フェイ、こっちに来てお前も手伝え」
どこかにいるだろうと思われるフェイをグレースが呼ぶ。
いつの間にか少し離れた所を飛んでいたらしく、ふわふわとフェイが飛んできた。
「グスターヴァル、失敗しても僕を食べたりしないでね」
ふわりとグスターヴァルの顔の近くを飛ぶと、フェイはそんなことを言っていた。
「食べたりはしないから心配するな」
表情を変えることなくグスターヴァルは淡々と答えている。
ふたりとも本気で言っているのか冗談なのか全く分からなかったが、なんだか深い友情みたいなものを感じてちょっと羨ましく感じてしまう。
じっとふたりを見上げながらイアンはまた少し寂しさを感じていた。
「まったくお前も欲しがりだな」
すると突然横からグレースに声を掛けられた。
「えっ? 欲しがりって……」
言われた意味が分からずぎょっとする。
「あのふたりの関係とお前とドラゴンの関係は種類が違うだろう」
腕を組み、ふんっと鼻を鳴らしながらグレースが説明をする。
「…………」
どうやらイアンが考えていることがグレースにも分かったようだった。
そんなに自分は気持ちが顔に出ているのだろうかと思わず頬を擦る。
「まぁ、これからは思うことがあればちゃんと言ってやれ」
そう言ってグレースはグスターヴァルを見上げた。
「……うん」
グレースに言われた言葉でなんだか気持ちが落ち着いた気がした。
こくりと頷くとイアンもグスターヴァルを見上げる。
「では始めようか」
グレースのその言葉で再び緊張が走る。
ごくりと唾を飲み込み、拳をぎゅっと握り締めた。
☆☆☆
グスターヴァルとイアンが向かい合い、グレースがイアンの右側に、フェイが左側についた。
じっとグスターヴァルを見上げながら更に緊張して動悸が激しくなっていく。
「あ、あの……どうすれば……」
緊張し過ぎて忘れていたが、口付けをするとは言われたものの、それだけでいいのかどうかが分からなかった。
困った顔で横に立つグレースをちらりと見る。
「お前は何も意識しなくていい。どうせ魔力の引き出し方も分からんだろうからな。それは私とフェイでやる。お前はドラゴンが人間に変わることだけを考えながら口付けをすればいい」
真面目な顔でグレースが説明する。
やり方を聞いただけなのだが、イアンは思わず顔が赤くなってしまった。
グスターヴァルを人間に戻す方法とはいえ、人前でキスをするというのはなんとも恥ずかしい。
たとえ相手がドラゴンだとしても。
「私もか?」
ちらりとグスターヴァルがグレースを見下ろした。
「阿呆。お前はちゃんと魔力を意識しろ。あとは人間に戻ることを願っていろ。願いが本物でなければ失敗するぞ」
大きく溜め息を付き、グレースはグスターヴァルを睨み付けながら答える。
「分かった」
グスターヴァルは真剣な表情でじっとグレースを見る。
そしてぐっとイアンの方に顔を寄せてきた。
「っ!!」
目の前にドラゴンの顔が近付き、どきんと大きく心臓が飛び跳ねた。
(グ、グスターヴァルと、キスするんだ……)
更に緊張して鼓動が物凄く速くなっていく。
顔もどんどん熱くなっている。
グスターヴァルと見つめ合った状態のまま、体が動かなくなっている。
すると突然、グスターヴァルがべろりとイアンの頬を舐めてきた。
「ひゃっ!」
恥ずかしくて更に顔が赤くなり湯気でも出そうだった。
しかし、先程までの緊張感が少しだけ緩んだのか、体が動くようになっている。
もしかしてグスターヴァルは緊張をほぐしてくれたのだろうかとじっと見上げた。
グスターヴァルは表情を変えることなくじっとイアンを見下ろしている。
「さっさと始めないか」
苛立つようにグレースが口を挟んだ。
「っ!」
言われてイアンは気持ちをぐっと固める。
ぎゅっとグスターヴァルの口元を両手で掴み、そっと自分の唇を当てる。
固くて温かい口が少しだけ開き、舌先を出してイアンの唇をそっと舐めた。
「っ!?」
ただ口を当てるだけではダメなのかと、イアンもそっと舌を出す。
温かく柔らかくて大きなドラゴンの舌の先に当たる。
ドキドキと緊張しながらグスターヴァルの舌を舐めてみる。
先程飲んだ紅茶の香りと味がした。
じっとお互いを見つめ、イアンはぎゅっとグスターヴァルの口を掴んだまま舌を舐め、グスターヴァルもそれに応えるようにそっと舌を動かす。
まるで本当にグスターヴァルとキスをしているようだった。
ふたりが口付けをしている間、グレースとフェイは両手をふたりに向けて魔力を注いでいた。
目を閉じて、じっと時を待つ――。
口付けを初めて数分後、突然グスターヴァルの体が白く光り始めた。
「っ!」
なんとなく目を開けた瞬間、光に驚いて思わず離れそうになってしまったが、すぐに横からグレースが声を上げた。
「離れるな、続けろっ! 口を付けるだけで構わん」
その声でイアンは離れることなくグスターヴァルの口を掴んだまま口付けを続ける。
「んっ……」
言われた通り、ぎゅっとグスターヴァルの口元を掴んだままお互いの唇を押し当てる。
先程までの緊張はなかったが、どうすればいいのかと困惑していた。
すると白く光っていたグスターヴァルの体が更に大きく光る。
「っ!」
眩しくて思わずイアンは目を瞑ってしまった。
グスターヴァルも疲れたのか、いつの間にか体を丸くして眠っているようだった。
極寒と言われていた北の森とは思えない程、穏やかな空気が流れている。
そして、ふと思い出したようにイアンは自分の手をじっと見つめた。
先程グレースによって魔力を上げてもらったはずだが、全く変化は感じられない。
本当に魔力が上がったのだろうかと、両手をグーパーと握ったり開いたりしてみる。
やはり何か変わったようには思えず首を傾げた。
「ふんっ。魔力というのは簡単に分かるものではない。自身の魔力が強い者か、感覚が鋭い者でもない限りは感じ取ることは無理だろう」
何を考えているのか分かったのか、グレースがカップをソーサーに置くとじっとイアンを見つめながら話し掛けてきた。
「……そうなんだ……」
ちらりとグレースを見た後、へぇっと頷きながら再び自分の手を眺める。
「休憩は終わりだ。おい、そこのドラゴン。さっさと起きろ」
グレースは席から立つと、後ろで丸くなっているグスターヴァルに向かって声を掛けた。
どうもグレースはグスターヴァルの扱いがちょっと酷いように感じるのは気のせいだろうか。
しかし、特に文句を言うわけでもなくグスターヴァルはむくりと体を起こした。
じっとしていたが、本当に眠っていたのだろうか。
「私が手を貸したのだからな、失敗は許さんぞ」
すると今度はイアンの方をじろりと見ながらグレースが話す。
「えっ!……あ、はいっ!」
驚いて声を上げてしまったが、確かにそのとおりである。
失敗するわけにはいかないのだ。
イアンも慌てて席を立つと、グスターヴァルの横へと移動する。
じっと見上げると、グスターヴァルもイアンを見下ろした。
ついにグスターヴァルを人間に戻す時がきたのだ。
緊張して手が震え出す。
気持ちを落ち着かせようと、ぎゅっと両手に拳を作って握り締めた。
「フェイ、こっちに来てお前も手伝え」
どこかにいるだろうと思われるフェイをグレースが呼ぶ。
いつの間にか少し離れた所を飛んでいたらしく、ふわふわとフェイが飛んできた。
「グスターヴァル、失敗しても僕を食べたりしないでね」
ふわりとグスターヴァルの顔の近くを飛ぶと、フェイはそんなことを言っていた。
「食べたりはしないから心配するな」
表情を変えることなくグスターヴァルは淡々と答えている。
ふたりとも本気で言っているのか冗談なのか全く分からなかったが、なんだか深い友情みたいなものを感じてちょっと羨ましく感じてしまう。
じっとふたりを見上げながらイアンはまた少し寂しさを感じていた。
「まったくお前も欲しがりだな」
すると突然横からグレースに声を掛けられた。
「えっ? 欲しがりって……」
言われた意味が分からずぎょっとする。
「あのふたりの関係とお前とドラゴンの関係は種類が違うだろう」
腕を組み、ふんっと鼻を鳴らしながらグレースが説明をする。
「…………」
どうやらイアンが考えていることがグレースにも分かったようだった。
そんなに自分は気持ちが顔に出ているのだろうかと思わず頬を擦る。
「まぁ、これからは思うことがあればちゃんと言ってやれ」
そう言ってグレースはグスターヴァルを見上げた。
「……うん」
グレースに言われた言葉でなんだか気持ちが落ち着いた気がした。
こくりと頷くとイアンもグスターヴァルを見上げる。
「では始めようか」
グレースのその言葉で再び緊張が走る。
ごくりと唾を飲み込み、拳をぎゅっと握り締めた。
☆☆☆
グスターヴァルとイアンが向かい合い、グレースがイアンの右側に、フェイが左側についた。
じっとグスターヴァルを見上げながら更に緊張して動悸が激しくなっていく。
「あ、あの……どうすれば……」
緊張し過ぎて忘れていたが、口付けをするとは言われたものの、それだけでいいのかどうかが分からなかった。
困った顔で横に立つグレースをちらりと見る。
「お前は何も意識しなくていい。どうせ魔力の引き出し方も分からんだろうからな。それは私とフェイでやる。お前はドラゴンが人間に変わることだけを考えながら口付けをすればいい」
真面目な顔でグレースが説明する。
やり方を聞いただけなのだが、イアンは思わず顔が赤くなってしまった。
グスターヴァルを人間に戻す方法とはいえ、人前でキスをするというのはなんとも恥ずかしい。
たとえ相手がドラゴンだとしても。
「私もか?」
ちらりとグスターヴァルがグレースを見下ろした。
「阿呆。お前はちゃんと魔力を意識しろ。あとは人間に戻ることを願っていろ。願いが本物でなければ失敗するぞ」
大きく溜め息を付き、グレースはグスターヴァルを睨み付けながら答える。
「分かった」
グスターヴァルは真剣な表情でじっとグレースを見る。
そしてぐっとイアンの方に顔を寄せてきた。
「っ!!」
目の前にドラゴンの顔が近付き、どきんと大きく心臓が飛び跳ねた。
(グ、グスターヴァルと、キスするんだ……)
更に緊張して鼓動が物凄く速くなっていく。
顔もどんどん熱くなっている。
グスターヴァルと見つめ合った状態のまま、体が動かなくなっている。
すると突然、グスターヴァルがべろりとイアンの頬を舐めてきた。
「ひゃっ!」
恥ずかしくて更に顔が赤くなり湯気でも出そうだった。
しかし、先程までの緊張感が少しだけ緩んだのか、体が動くようになっている。
もしかしてグスターヴァルは緊張をほぐしてくれたのだろうかとじっと見上げた。
グスターヴァルは表情を変えることなくじっとイアンを見下ろしている。
「さっさと始めないか」
苛立つようにグレースが口を挟んだ。
「っ!」
言われてイアンは気持ちをぐっと固める。
ぎゅっとグスターヴァルの口元を両手で掴み、そっと自分の唇を当てる。
固くて温かい口が少しだけ開き、舌先を出してイアンの唇をそっと舐めた。
「っ!?」
ただ口を当てるだけではダメなのかと、イアンもそっと舌を出す。
温かく柔らかくて大きなドラゴンの舌の先に当たる。
ドキドキと緊張しながらグスターヴァルの舌を舐めてみる。
先程飲んだ紅茶の香りと味がした。
じっとお互いを見つめ、イアンはぎゅっとグスターヴァルの口を掴んだまま舌を舐め、グスターヴァルもそれに応えるようにそっと舌を動かす。
まるで本当にグスターヴァルとキスをしているようだった。
ふたりが口付けをしている間、グレースとフェイは両手をふたりに向けて魔力を注いでいた。
目を閉じて、じっと時を待つ――。
口付けを初めて数分後、突然グスターヴァルの体が白く光り始めた。
「っ!」
なんとなく目を開けた瞬間、光に驚いて思わず離れそうになってしまったが、すぐに横からグレースが声を上げた。
「離れるな、続けろっ! 口を付けるだけで構わん」
その声でイアンは離れることなくグスターヴァルの口を掴んだまま口付けを続ける。
「んっ……」
言われた通り、ぎゅっとグスターヴァルの口元を掴んだままお互いの唇を押し当てる。
先程までの緊張はなかったが、どうすればいいのかと困惑していた。
すると白く光っていたグスターヴァルの体が更に大きく光る。
「っ!」
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