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Black & White~そして運命の扉が開かれる~
第13話
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「エーテルの剣……」
優希はぼそりと繰り返すように呟く。
瑠依が言っていた言葉。そして今、セバスチャンが話す言葉。
一体『エーテルの剣』とは?
それで魔女を倒すことができるのだろうか?
優希の頭の中でたくさんの疑問が駆け巡っていた。
「私らも一緒に行くよっ!」
突然アンがそう口を開いた。
その言葉に優希はびくりと体を震わせる。
(そうだ……考え込んでる場合じゃないっ)
ふと海斗のことを思い出す。
魔女を倒して海斗を助け出さねばならないのだ。
こうしている間にも、海斗は魔女に捕まっているのかもしれない。
もしかしたらもう……そんなことは考えたくない。
優希はぎゅっと両手の拳を握り締め、セバスチャンをじっと真剣な瞳で見上げる。
「どこへ行けばいいのっ? そのエーテルの剣を探し出せば魔女を倒せるのっ?」
「それは分からん。エーテルの剣を探し出したとて、使えなければ意味がない。お前が本当にホワイトキャットならば話は別だが」
必死に詰め寄る優希を見下ろしながら、セバスチャンは静かに答える。
「お、俺はっ……その、ホワイトキャットってのじゃないけど……でも……海斗を助けたい……助けたい」
優希は更にぎゅっと拳を握り締め、ふるふると震わせながら俯く。
自分は英雄でも勇者でもない。
海斗を助け出す自信もない。
しかし、今は何か少しでも方法があるのであれば、それに縋りつきたい気持ちでいっぱいであった。
「大丈夫だよっ! キミはホワイトキャットだよっ。エーテルの剣は僕とホワイトキャットで探しに行くっ」
満面の笑顔でアリスが優希に向かってキッパリと話す。
そして、セバスチャンをじっと見上げながら言い切った。
「私らも一緒に行くってばっ」
先程から完全に無視され続けているアンが再び声を上げた。
「アンおばさん達はここで待ってて。大丈夫、僕らにまかせてよ」
アリスは腰を屈め、アンを見下ろすとにっこりと微笑みながら話した。
「なんだい。私らは足手まといってことかいっ?」
アンは後ろ足で立ち、前足を腰に当てるとぷっくりと頬を膨らませアリスを見上げる。
「そんなことないよ。でもさっきセバスチャンが言ったでしょ? きっと僕らで行かなきゃダメなんだよ」
アリスは少し困った顔で、猫の耳をたらんと垂らしながらアンに言い聞かせる。
「アンさん。一緒に行くって言ってくれてありがと。でも大丈夫だよ。俺とアリスで必ず見つけ出すから。セバスチャン、どこへ行けばいいんだ?」
優希もアリスの横からアンに向かって笑顔を見せる。
そして再びセバスチャンをじっと見上げると、真剣な表情でセバスチャンの返事を待つ。
「……西の森だ」
セバスチャンは低い声で優希とアリスを見下ろしながらそう答えた。
「西の森っ!?」
アンとダニーが悲鳴のような声を上げた。
その声に優希はビクッと体を震わせる。
西の森に一体何があるというのか。
優希はふと横のアリスを見る。
アリスは声もなく驚いた表情をしている。
優希は不安な気持ちを抱きながらもう一度セバスチャンに尋ねる。
「セバスチャン。西の森に行けばその『エーテルの剣』があるんだね?」
「そうだ。西の森の『グスターヴァル』が守っている……」
「グスターヴァルッ!!」
セバスチャンの言葉にアン達リス一家が悲鳴と共に大声で叫んだ。
「え……何? そのグスター……?」
優希はセバスチャンとリス一家の反応に更なる不安を覚える。
一体何があるというのか……。
問い返してみたものの、答えを聞くのが怖ろしくもある。
横を見ると、アリスの顔が真っ青になっている。
それだけでどれほどの恐怖が待ち受けているのか想像できる。
「グスターヴァルはこのワンダーランドの守り神。その姿を見た者は生きて帰れないという……」
セバスチャンは静かに答える。
梟の姿のセバスチャンからは表情も考えも読み取れない。
ただ、その言葉から恐ろしさは十分に伝わってきた。
「……守ってるってことは、簡単には手に入らないってことだよ……ね?」
黙ったままであったアリスが青い顔をしたままセバスチャンに問う。
セバスチャンの話を聞き、行くと断言した自分の発言に後悔をしていた。
アリス自身、グスターヴァルの恐ろしさは十分に理解していた。
しかし、今更自分の言葉を覆すことはできないことも分かっている。
「さぁ、それはホワイトキャット次第だな」
「えっ?」
セバスチャンの言葉に優希がぎょっとして声を上げる。
自分をホワイトキャットと認めた訳ではないが、セバスチャンの言う『ホワイトキャット』が自分のことだというのは分かる。
だからこそ、なぜそこで自分のことが出てきたのか分からなかった。
(俺がホワイトキャットなら何とかなるってこと?)
心の中で問う。
自分にそんな力があるのだろうか?
「行くのか? 諦めるのか?」
セバスチャンは優希に問い質すようにじっと見下ろしながらそう訊いてきた。
「……ここまで来たんだ。俺は……諦めない」
優希は再び拳をぎゅっと握り締めた。
怖い。でも、諦めたくない。
「ホワイトキャット……」
その横でアリスは眉を顰め、困ったような表情でじっと優希を見つめる。しかし、
「僕も……僕も行くっ。ホワイトキャットと一緒に行くっ!」
アリスも決意したかのようにぎゅっと拳を握り締め、セバスチャンを真剣な表情で見上げた。
セバスチャンは優希とアリスをじっと見下ろし、ふと何かを考えるかのように目を閉じた。
そして再びその金色の大きな目を開くと、ゆっくりと話し出した。
「そうか、行くか……。グスターヴァルは西の森の奥にある岩山に住んでいる。高い山だからすぐに分かるだろう。できるだけ日が出ている間に行くんだ。日が暮れるとヤツが活動的になる。それからヤツの弱点は目だ。目を狙うんだ、いいな?」
「うん。分かった。セバスチャンありがとうっ」
優希もまた真剣な表情でセバスチャンを見つめ返す。
「セバスチャン……僕、絶対にまたここへ帰ってくるから。アンおばさん、ダニーおじさん、キティ、ロイ」
アリスはじっとセバスチャンを見つめ答えた後、リス一家を順番に見下ろす。
「2人共、必ず戻ってくるんだ。必ず」
セバスチャンは低く、そして強い口調で優希とアリスにそう話した。
「アリス、ホワイトキャット。死ぬんじゃないよっ。私より先に死んだりしたら許さないからねっ」
アンは少し涙ぐむようにして優希とアリスをじっと見上げる。
「もちろんだよっ。ね? ホワイトキャット」
アリスはにっこりと笑みを浮かべ、アンに答える。
そして優希にも笑顔を見せる。
「う、うん。大丈夫だよ」
優希はそう答えたものの、再び不安に襲われていた。
皆の話を聞いているうちに、改めて怖ろしさが増してきていたのだった。
もしかしたら海斗を助けるどころか自分が死ぬかもしれない。
魔女を倒すなんて、初めから無謀なことだったのかもしれない。
(ゲームのようには……いかないよ……な?)
セーブもリセットも効かない戦いに、優希はせめて武術か何か習っておけば良かったなどと心に思っていたのだった。
優希はぼそりと繰り返すように呟く。
瑠依が言っていた言葉。そして今、セバスチャンが話す言葉。
一体『エーテルの剣』とは?
それで魔女を倒すことができるのだろうか?
優希の頭の中でたくさんの疑問が駆け巡っていた。
「私らも一緒に行くよっ!」
突然アンがそう口を開いた。
その言葉に優希はびくりと体を震わせる。
(そうだ……考え込んでる場合じゃないっ)
ふと海斗のことを思い出す。
魔女を倒して海斗を助け出さねばならないのだ。
こうしている間にも、海斗は魔女に捕まっているのかもしれない。
もしかしたらもう……そんなことは考えたくない。
優希はぎゅっと両手の拳を握り締め、セバスチャンをじっと真剣な瞳で見上げる。
「どこへ行けばいいのっ? そのエーテルの剣を探し出せば魔女を倒せるのっ?」
「それは分からん。エーテルの剣を探し出したとて、使えなければ意味がない。お前が本当にホワイトキャットならば話は別だが」
必死に詰め寄る優希を見下ろしながら、セバスチャンは静かに答える。
「お、俺はっ……その、ホワイトキャットってのじゃないけど……でも……海斗を助けたい……助けたい」
優希は更にぎゅっと拳を握り締め、ふるふると震わせながら俯く。
自分は英雄でも勇者でもない。
海斗を助け出す自信もない。
しかし、今は何か少しでも方法があるのであれば、それに縋りつきたい気持ちでいっぱいであった。
「大丈夫だよっ! キミはホワイトキャットだよっ。エーテルの剣は僕とホワイトキャットで探しに行くっ」
満面の笑顔でアリスが優希に向かってキッパリと話す。
そして、セバスチャンをじっと見上げながら言い切った。
「私らも一緒に行くってばっ」
先程から完全に無視され続けているアンが再び声を上げた。
「アンおばさん達はここで待ってて。大丈夫、僕らにまかせてよ」
アリスは腰を屈め、アンを見下ろすとにっこりと微笑みながら話した。
「なんだい。私らは足手まといってことかいっ?」
アンは後ろ足で立ち、前足を腰に当てるとぷっくりと頬を膨らませアリスを見上げる。
「そんなことないよ。でもさっきセバスチャンが言ったでしょ? きっと僕らで行かなきゃダメなんだよ」
アリスは少し困った顔で、猫の耳をたらんと垂らしながらアンに言い聞かせる。
「アンさん。一緒に行くって言ってくれてありがと。でも大丈夫だよ。俺とアリスで必ず見つけ出すから。セバスチャン、どこへ行けばいいんだ?」
優希もアリスの横からアンに向かって笑顔を見せる。
そして再びセバスチャンをじっと見上げると、真剣な表情でセバスチャンの返事を待つ。
「……西の森だ」
セバスチャンは低い声で優希とアリスを見下ろしながらそう答えた。
「西の森っ!?」
アンとダニーが悲鳴のような声を上げた。
その声に優希はビクッと体を震わせる。
西の森に一体何があるというのか。
優希はふと横のアリスを見る。
アリスは声もなく驚いた表情をしている。
優希は不安な気持ちを抱きながらもう一度セバスチャンに尋ねる。
「セバスチャン。西の森に行けばその『エーテルの剣』があるんだね?」
「そうだ。西の森の『グスターヴァル』が守っている……」
「グスターヴァルッ!!」
セバスチャンの言葉にアン達リス一家が悲鳴と共に大声で叫んだ。
「え……何? そのグスター……?」
優希はセバスチャンとリス一家の反応に更なる不安を覚える。
一体何があるというのか……。
問い返してみたものの、答えを聞くのが怖ろしくもある。
横を見ると、アリスの顔が真っ青になっている。
それだけでどれほどの恐怖が待ち受けているのか想像できる。
「グスターヴァルはこのワンダーランドの守り神。その姿を見た者は生きて帰れないという……」
セバスチャンは静かに答える。
梟の姿のセバスチャンからは表情も考えも読み取れない。
ただ、その言葉から恐ろしさは十分に伝わってきた。
「……守ってるってことは、簡単には手に入らないってことだよ……ね?」
黙ったままであったアリスが青い顔をしたままセバスチャンに問う。
セバスチャンの話を聞き、行くと断言した自分の発言に後悔をしていた。
アリス自身、グスターヴァルの恐ろしさは十分に理解していた。
しかし、今更自分の言葉を覆すことはできないことも分かっている。
「さぁ、それはホワイトキャット次第だな」
「えっ?」
セバスチャンの言葉に優希がぎょっとして声を上げる。
自分をホワイトキャットと認めた訳ではないが、セバスチャンの言う『ホワイトキャット』が自分のことだというのは分かる。
だからこそ、なぜそこで自分のことが出てきたのか分からなかった。
(俺がホワイトキャットなら何とかなるってこと?)
心の中で問う。
自分にそんな力があるのだろうか?
「行くのか? 諦めるのか?」
セバスチャンは優希に問い質すようにじっと見下ろしながらそう訊いてきた。
「……ここまで来たんだ。俺は……諦めない」
優希は再び拳をぎゅっと握り締めた。
怖い。でも、諦めたくない。
「ホワイトキャット……」
その横でアリスは眉を顰め、困ったような表情でじっと優希を見つめる。しかし、
「僕も……僕も行くっ。ホワイトキャットと一緒に行くっ!」
アリスも決意したかのようにぎゅっと拳を握り締め、セバスチャンを真剣な表情で見上げた。
セバスチャンは優希とアリスをじっと見下ろし、ふと何かを考えるかのように目を閉じた。
そして再びその金色の大きな目を開くと、ゆっくりと話し出した。
「そうか、行くか……。グスターヴァルは西の森の奥にある岩山に住んでいる。高い山だからすぐに分かるだろう。できるだけ日が出ている間に行くんだ。日が暮れるとヤツが活動的になる。それからヤツの弱点は目だ。目を狙うんだ、いいな?」
「うん。分かった。セバスチャンありがとうっ」
優希もまた真剣な表情でセバスチャンを見つめ返す。
「セバスチャン……僕、絶対にまたここへ帰ってくるから。アンおばさん、ダニーおじさん、キティ、ロイ」
アリスはじっとセバスチャンを見つめ答えた後、リス一家を順番に見下ろす。
「2人共、必ず戻ってくるんだ。必ず」
セバスチャンは低く、そして強い口調で優希とアリスにそう話した。
「アリス、ホワイトキャット。死ぬんじゃないよっ。私より先に死んだりしたら許さないからねっ」
アンは少し涙ぐむようにして優希とアリスをじっと見上げる。
「もちろんだよっ。ね? ホワイトキャット」
アリスはにっこりと笑みを浮かべ、アンに答える。
そして優希にも笑顔を見せる。
「う、うん。大丈夫だよ」
優希はそう答えたものの、再び不安に襲われていた。
皆の話を聞いているうちに、改めて怖ろしさが増してきていたのだった。
もしかしたら海斗を助けるどころか自分が死ぬかもしれない。
魔女を倒すなんて、初めから無謀なことだったのかもしれない。
(ゲームのようには……いかないよ……な?)
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