上 下
56 / 150

(55)

しおりを挟む

 エリナは落ち着きを取り戻し、大人しく食事を再開した。久美子はほっとしたように息をつき、基之はにこにこと姉妹を眺めた。

「アンナはエリナの扱いが上手だな」
「そう?」
「そうよ。わたしなんてわかってても、ついこれはだめ、あれはだめって怒っちゃうのよ」

 母は反省したようにふたりの娘たちを交互に見てつぶやいた。
 ときどき奇行を起こすエリナを見守りながらも、家族四人のひと時は穏やかに続いた。食事しながらアンナは昨日の就職活動の結果を両親に報告した。

「というわけなの。だからわたし、こっちで店を開こうと思うのよ」
「そう……、残念だったわね。そのマリヤちゃんの従兄の彼が飛行機にさえ乗り遅れなければ、あなたの料理を食べてもらえたのにね」
「人生は筋書き通りにはいかないこともあるよ。気を落とすな」
「うん、ありがとう」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ノスタルジーは異世界の鏡を割る

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:1

流されて

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:228pt お気に入り:0

とりあえず離婚してもらっていいですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21,853pt お気に入り:448

すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:930pt お気に入り:122

大賢者様の聖図書館

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:36

Nurture ずっと二人で

青春 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:3

処理中です...