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しおりを挟むエリナは落ち着きを取り戻し、大人しく食事を再開した。久美子はほっとしたように息をつき、基之はにこにこと姉妹を眺めた。
「アンナはエリナの扱いが上手だな」
「そう?」
「そうよ。わたしなんてわかってても、ついこれはだめ、あれはだめって怒っちゃうのよ」
母は反省したようにふたりの娘たちを交互に見てつぶやいた。
ときどき奇行を起こすエリナを見守りながらも、家族四人のひと時は穏やかに続いた。食事しながらアンナは昨日の就職活動の結果を両親に報告した。
「というわけなの。だからわたし、こっちで店を開こうと思うのよ」
「そう……、残念だったわね。そのマリヤちゃんの従兄の彼が飛行機にさえ乗り遅れなければ、あなたの料理を食べてもらえたのにね」
「人生は筋書き通りにはいかないこともあるよ。気を落とすな」
「うん、ありがとう」
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