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Simulation Introduction
一、メイオウ領(1)
しおりを挟むこの世のすべての大地とすべての海をいだく強大なる「居神国」。
居神国はさる惑星における人類の平行世界。
最も近しい例を上げれば、日本国における弥生時代にも似た原始国家である。
大きく違うのは、徹底した女系王が管理する女性優位の社会であること。
政治的権力と社会的優位性を持つこと、また継承できるのは女のみ。
男は子種をもたらすだけの家畜である。……
居神国に属するメイオウ領。
ここに生きるリェンという男がこの物語の主人公である。
メイオウ領主サライは大変な好き者だという。
それだけでなく、性格が残虐非道で男たちをいたぶって楽しむ癖があるという。
これまでも何人もの男がその毒牙にかかって死んだ。
領主には一人娘ミライがいる。
ミライも七人の男を抱えていたが、母親の嗜虐性には辟易していた。
サライに仕えた男が死ぬ度におびえる七人にミライはいつもこういった。
「俺はみな平等に愛しているよ。なにも案ずることはない」
サライの血を分けた娘だとは到底思われぬほどにミライは愛情深く、また情事の手練手管のコツを心得ていて、自分が楽しむこともそうだが、男たちを楽しませることも得意としていた。
ミライに仕える男たちはみな骨抜きで、だれもがミライの一番になりたがった。
「子ども? まだ持つ気はない。先代も健勝だしな」
七人の男たちはミライの寵愛を受けようと必死である。
互いの足の引っ張り合い陥れるというようなことは茶飯だった。
男たちを寵愛を受けた順番から並べるとこうだ。
二十六歳のゲツ。大人しい堅実な性格。
二十四歳のキョウ。金に細かく芸達者。
二十八歳のギョク。陰気で占い好き。
十八歳のガイ。がさつ者だが味覚が鋭い。
二十歳のリェン。美しく高慢。
二十三歳ジン。浅はかで幼稚。
十五歳のシュン。目端が利く。
七人が七人とも、互いをけん制しあっていた。
その晩、ミライは男たちを住まわせている部屋のうち、リェンの暮らす部屋を訪ねた。
「はあっ、はあっ……。
ミライさま、どうかわたくしめの種をおとりくださいませ……」
「リェン、いっただろう。俺は子どもはいらんのだ。子どもなどなくとも、俺はお前を捨てたりしないよ。
こんなにかわいいお前を誰が捨てるというんだい」
「ああっ、ああっ!」
毎晩、男たちはミライが自分の部屋に泊ってくれることを待ちわびながら、そうでないときは一人寝に枕を濡らしているのだった。
翌朝になると、お渡りのあったリェンは我が物顔で歩き回り、他の男たちはがん首をそろえてリェンの影口をいう。
そんなある日、リェンのお膳に毒が仕込まれた。
命を取り留めたリェンが犯人はジンだと言い張った。
「ああ、ミライさま! 犯人のジンをやつざきにしてくださいませ!
でなければ、この屋敷からどうか追いだしてください」
「ミライ様……、わたくしではありません。どうか信じてくださいませ……」
「なんどもいうが、俺にとって七人が七人とも大事なのだ。
だからみなケンカをせず仲良くしてくれ。
あんまり騒ぎ立てて母君がなにかいい出しては面倒だ」
ミライは愛情深い性格ではあるものの、ことこのような男たちの些末な争いのこととなると、とんとめんどくさがって事なかれ主義になるのだった。
ことあるごとにサライのことを口に出しては大人しくしていろというだけであった。
翌晩、ミライはジンの部屋に泊まった。
「ああんっ、あんっ!」
「ジン、お前は本当に感じやすい。後ろの穴が大好きなのだな」
「はあん……、ミライさまぁ……」
「ジン、毒を入れたのは本当にお前じゃないんだね?」
「……もちろんです」
「お前がいうなら信じるよ」
優しい言葉をかけられ、ジンはころっと自分の犯した罪など忘れてしまう。
翌日、目ざといリェンに毒の入れ物が見つかって、しどろもどろになるのであるが、本人はあまりにも浅はかな性格をしていて次の日にはもう何事もなかったかのようにけろりとしているのである。
七人の中でも大人しそうな顔をして泣けば許される甘えれば許される、挙句の果てには床の中でどんな行いも嫌がらずに仕えれば許してもらえると思っているジンが、リェンはことのほか大嫌いだった。
リェンは心ひそかに、ジンをいつか亡き者にしてやろうと心に決めている。
ミライと七人の男たち。
積もる話は山あれど、語る機会はまたいずれ……。
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