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お風呂を作るのじゃ
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城の裏庭には何もない土地があり、絶壁のような岩山が外からの侵入を拒んでいた。
ふくはそこに立ち止まると、にゃんに向かって口を開く。
「にゃんよ。お前さんは【お風呂】というものの作り方は分かるのかの?」
「お風呂……ですか?……うーん、オ……じゃなくてポチおだったらわかると思います。インフラについて詳しいというか、人間の頃はDIYを拗らせすぎて一人でログハウスと五右衛門風呂作ったりしてましたから」
「い、いんふら?でーあいわい?ろぐ……はうす……?」
にゃんの口からふくにとっては未知の言葉がたくさん出て不思議な呪文に聞こえる。
五右衛門風呂は時代的にふくの知らないもので、わかった言葉は一つもなかった。
ヴォルフも気になる単語があり、それを訊くと、ふくは安心したような表情を浮かべる。
「なあ、インフラって何のことだ?」
「ええっと、電気水道ガスの生活に必要な設備です。この世界で例えると水と火をどこの家庭にでも使えるように普及させることを指します」
「そりゃ、凄いの。皆、川から水を汲み、火は使えるものから分けてもらうしかないからの」
「……それなら魔道具で【水】【火】の元素魔法を使えたら解決できるんじゃないの?」
「いや、魔力が少なければ扱う事は難しいのではないじゃろうか?……しかし、【水】と【火】の魔道具を作られれば風呂は出来そうじゃの。ならば……」
ふくは手を二度パンパンと叩くと腰の丈の高さの木を生やした。
枝を折り、地面に大きな楕円を描いていく。
「ぼるふよ。ここの円の中を掘るのじゃ」
ヴォルフは狼の姿に戻り、ふくの言う通り、円の中に入る。
「本当に掘るけど良いの?」
「よいのじゃ。しかし、あんまり深くするでないぞ?」
ヴォルフは頷くとザッザッと前足で掘っていく。
腕力も爪の鋭さも桁違いの力を持つヴォルフはバックホウ(ショベルカー)そのものであり、凍りついて非常に硬いはずの大地を簡単に掘っていく。
にゃんはふくの隣に立ち、顔色を伺いながら訊ねる。
「どうして……国民からあんなに嫌われているのですか?わたしとポチおは事情を知らないのですが、ふくさんの行動を見て嫌われる要素が少ないと思うのですが……」
「……わしはまだ尻尾が二本だった頃、夫がおったのじゃ。そやつは【命令】の魔法でわしを含め野狐族を操って、好き勝手しておったのじゃ。その事は皆知っておるのじゃが、操られとったとはいえ、わしの責任でもある。せいら……鳥の女子じゃ、あの者に頼んでわしを含め野狐族を悪い種族として扱うように噂を流すようにしたのじゃ」
「……ですが、ヒトは生きている限りやり直せます。信用も少しずつ……長いと思いますが回復できると思うのですが……?」
「これ以上はヒミツなのじゃ。別の目的がある事ぐらいは言っておこうかの。わしら王族は皆知っておるが、民はそれを知らぬ。じゃが、これからの為を思うとそれが良いのじゃ」
「そう……なのですね。ふくさんが、そのように決めたのなら、これ以上は聞きません」
「そうしてくれると助かるの」
二人は再び楽しそうに穴掘りをするヴォルフをみる。
掘った時は汚れているのだが、どう言った理屈なのか掘った端から彼の毛についた砂埃などの汚れはみるみる落ちていく。
少し休憩すると、元の綺麗な毛並みに戻る。
「羨ましいの」
「……気づいた時からコレだったから、あんまり気にした事なかったよ。あ、水アリガト」
魔法で水の玉を作り、それを直接ヴォルフの口の中に放り込んで飲ませる。
食べるように飲み込み、ペロペロと口の周りの毛を整えていく。
既に穴掘りは終わっており、肉球のスタンプで地面を転圧していた。
それを見たライラも地面の転圧に参加する。
ダンッダンッと勢いのあるスタンピングで押し固めていく。
ふくは楽しそうに転圧をしている姿を見て微笑むと、岩山に目を向ける。
一本の指で、空中に直線を引くように腕を振るうと、風の刃が飛んでいき、岩山を切り崩す。
程よい大きさにカットしていき、ヴォルフはそれを並べていく。
お風呂は千年前の犬族の集落で見た為、ヴォルフでも作り方は分かる。
ふくは服の袖にある袋状の所から石を取り出す。
キラキラと輝き、ふくが手に持つとじんわりとした優しい光になる。
「綺麗ですね……!」
「これはの。昔ここの地域に住んでおったネズミ族の優秀な子での、魔物に集落を破壊され、ネズミ族を全滅させられたのじゃ。そのネズミの身体がこのような石に変わったのじゃ。あげぬぞ?」
綺麗な石に魔力を込めていき、それに気づいたヴォルフとライラは穴から離れる。
「『星の圧力よ、地を固く均せ』」
穴の範囲で重力波が地面を押し固めていく。
均等に押し固められていき路盤のようになっていった。
すると、ふくのお腹からグゥと音が鳴る、
「たくさん話をして腹が減ったのじゃ。にゃんの戦闘の練習を兼ねて魔獣でも狩りに行こうかの。ライラも付いてくるのじゃ。もし、魔物が現れたらお主しか対処できぬからの」
「うん!任せて!にゃんも頑張ろうねっ!」
「は、はい……!頑張ります!」
簡単に支度をするとヴォルフの背中に乗って魔獣のいる荒野へと駆け出していく。
ふくは多少慣れたものの、その速度に一同は翻弄されるのであった。
ふくはそこに立ち止まると、にゃんに向かって口を開く。
「にゃんよ。お前さんは【お風呂】というものの作り方は分かるのかの?」
「お風呂……ですか?……うーん、オ……じゃなくてポチおだったらわかると思います。インフラについて詳しいというか、人間の頃はDIYを拗らせすぎて一人でログハウスと五右衛門風呂作ったりしてましたから」
「い、いんふら?でーあいわい?ろぐ……はうす……?」
にゃんの口からふくにとっては未知の言葉がたくさん出て不思議な呪文に聞こえる。
五右衛門風呂は時代的にふくの知らないもので、わかった言葉は一つもなかった。
ヴォルフも気になる単語があり、それを訊くと、ふくは安心したような表情を浮かべる。
「なあ、インフラって何のことだ?」
「ええっと、電気水道ガスの生活に必要な設備です。この世界で例えると水と火をどこの家庭にでも使えるように普及させることを指します」
「そりゃ、凄いの。皆、川から水を汲み、火は使えるものから分けてもらうしかないからの」
「……それなら魔道具で【水】【火】の元素魔法を使えたら解決できるんじゃないの?」
「いや、魔力が少なければ扱う事は難しいのではないじゃろうか?……しかし、【水】と【火】の魔道具を作られれば風呂は出来そうじゃの。ならば……」
ふくは手を二度パンパンと叩くと腰の丈の高さの木を生やした。
枝を折り、地面に大きな楕円を描いていく。
「ぼるふよ。ここの円の中を掘るのじゃ」
ヴォルフは狼の姿に戻り、ふくの言う通り、円の中に入る。
「本当に掘るけど良いの?」
「よいのじゃ。しかし、あんまり深くするでないぞ?」
ヴォルフは頷くとザッザッと前足で掘っていく。
腕力も爪の鋭さも桁違いの力を持つヴォルフはバックホウ(ショベルカー)そのものであり、凍りついて非常に硬いはずの大地を簡単に掘っていく。
にゃんはふくの隣に立ち、顔色を伺いながら訊ねる。
「どうして……国民からあんなに嫌われているのですか?わたしとポチおは事情を知らないのですが、ふくさんの行動を見て嫌われる要素が少ないと思うのですが……」
「……わしはまだ尻尾が二本だった頃、夫がおったのじゃ。そやつは【命令】の魔法でわしを含め野狐族を操って、好き勝手しておったのじゃ。その事は皆知っておるのじゃが、操られとったとはいえ、わしの責任でもある。せいら……鳥の女子じゃ、あの者に頼んでわしを含め野狐族を悪い種族として扱うように噂を流すようにしたのじゃ」
「……ですが、ヒトは生きている限りやり直せます。信用も少しずつ……長いと思いますが回復できると思うのですが……?」
「これ以上はヒミツなのじゃ。別の目的がある事ぐらいは言っておこうかの。わしら王族は皆知っておるが、民はそれを知らぬ。じゃが、これからの為を思うとそれが良いのじゃ」
「そう……なのですね。ふくさんが、そのように決めたのなら、これ以上は聞きません」
「そうしてくれると助かるの」
二人は再び楽しそうに穴掘りをするヴォルフをみる。
掘った時は汚れているのだが、どう言った理屈なのか掘った端から彼の毛についた砂埃などの汚れはみるみる落ちていく。
少し休憩すると、元の綺麗な毛並みに戻る。
「羨ましいの」
「……気づいた時からコレだったから、あんまり気にした事なかったよ。あ、水アリガト」
魔法で水の玉を作り、それを直接ヴォルフの口の中に放り込んで飲ませる。
食べるように飲み込み、ペロペロと口の周りの毛を整えていく。
既に穴掘りは終わっており、肉球のスタンプで地面を転圧していた。
それを見たライラも地面の転圧に参加する。
ダンッダンッと勢いのあるスタンピングで押し固めていく。
ふくは楽しそうに転圧をしている姿を見て微笑むと、岩山に目を向ける。
一本の指で、空中に直線を引くように腕を振るうと、風の刃が飛んでいき、岩山を切り崩す。
程よい大きさにカットしていき、ヴォルフはそれを並べていく。
お風呂は千年前の犬族の集落で見た為、ヴォルフでも作り方は分かる。
ふくは服の袖にある袋状の所から石を取り出す。
キラキラと輝き、ふくが手に持つとじんわりとした優しい光になる。
「綺麗ですね……!」
「これはの。昔ここの地域に住んでおったネズミ族の優秀な子での、魔物に集落を破壊され、ネズミ族を全滅させられたのじゃ。そのネズミの身体がこのような石に変わったのじゃ。あげぬぞ?」
綺麗な石に魔力を込めていき、それに気づいたヴォルフとライラは穴から離れる。
「『星の圧力よ、地を固く均せ』」
穴の範囲で重力波が地面を押し固めていく。
均等に押し固められていき路盤のようになっていった。
すると、ふくのお腹からグゥと音が鳴る、
「たくさん話をして腹が減ったのじゃ。にゃんの戦闘の練習を兼ねて魔獣でも狩りに行こうかの。ライラも付いてくるのじゃ。もし、魔物が現れたらお主しか対処できぬからの」
「うん!任せて!にゃんも頑張ろうねっ!」
「は、はい……!頑張ります!」
簡単に支度をするとヴォルフの背中に乗って魔獣のいる荒野へと駆け出していく。
ふくは多少慣れたものの、その速度に一同は翻弄されるのであった。
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