77 / 108
珍しい魔法の持ち主なのじゃ
しおりを挟む
「いた!」
ヴォルフは魔獣を発見し、魔獣の周りを回りながら減速していき、真正面に立ち塞がり三人を背中から降ろす。
ライラとにゃんは足をガクガクと震わせて碌に立てるような状況ではなかった。
「ぼるふ、お前は少し加減して走る事は出来んのか?」
「……ちょっと遅く走ったんだけど」
「……?ぼるふ、ヒトの姿になるのじゃ」
ふくはヴォルフを獣人の姿にさせる。
何故そのようにしたのかわからず、首輪や傾げていると、ふくはヴォルフを抱きしめ、マズルを胸の中に埋める。
「よくやったのじゃ。お前はよく頑張っておるのはわしがよく知っておる。そんなに拗ねるでない」
優しく頭を撫で、手櫛で髪の毛を解いていく。
元々体毛であった為、髪の毛は非常に硬く太い毛であり、魔力を込めると鋼のように硬くなる特性はあるようだった。
そして、撫でられていくうちにヴォルフは尻尾を左右にぶんぶん振って嬉しさをアピールする。
「さて、にゃんの戦闘を見てみるとしよう。ライラも魔獣と少人数で戦うのは初めてじゃろう?二人で協力して倒してみるのじゃ」
「えっ!ウチも!?で、できるかな……?」
「ら、ライラさん!よろしくお願いしますっ!」
魔獣は四人が目の前に現れても逃げもせず、枯れた木の枝をバリバリと食べ進んでいた。
植物の少ない世界でこの巨体になるまで成長できるこの魔獣の生態にふくは不思議に思う。
にゃんは納めていた爪を出して毛を逆立てる。
そして、膨大な魔力を解放させ、王族変異の状態になる。
「フーッ!フーッ!」
「にゃん!少し落ち着いて!そんなに魔力出したら気絶しちゃうよ!」
ライラの一言でにゃんは魔力を抑え、呼吸を整える。
にゃんの魔力量はライラを遥かに超えており、王族変異する体質に驚きつつ魔法についてを話すことにした。
「魔法はおでこのあたりに生まれつき一つの魔法があるの。それを魔力で呼び起こしてあげると、『言葉』が返ってくるよ!」
「や、やってみる……!」
ライラの言う通り、魔力をおでこに集中させるように意識をすると頭の中でザワザワと音がし始める。
突如、頭を両手で抑え蹲る。
「だ、大丈夫!?あ、逃げてしまう……!どうしよう……!」
にゃんの心配をするか魔獣を倒すか迷っていると、閃光の如く魔獣の横腹に飛び蹴りがさく裂し、ゴロゴロと転がっていく。
「『木の檻』」
短く詠唱したふくは魔獣の体を拘束し、締め上げていく。
そして、にゃんの頭に手を当てた瞬間、ふくの頭の中にもザワザワとした音が響く。
「……こやつ、二つの魔法を持っておるのじゃ……!一つはアツリョク?と言うものを変える力。もう一つは……なんじゃ……?」
――バチッ!
にゃんの頭に触れていたふくの手が何かに弾き飛ばされた。
痺れるような衝撃を受け、掌を見る。
特別外傷は無かったのだが、拒絶されたような痛みであり手をぎゅっと握る。
「どうしたの?」
「む……にゃんの魔法を調べようとしたら弾かれたのじゃ。あの魔法……わしの書庫でも調べられぬかもしれんの……」
「そんな変わった魔法の持ち主か……。王族変異が起きるのも納得かもな」
「……少し書庫に行ってくるのじゃ」
「いってらっしゃい」
ふくは瞳を閉じて書庫に向かうのであった。
§
書庫に辿り着くと本が一冊落ちる。
拾い上げ、表紙を見るとやはり【魔法大全】の本であった。
開くことができるページを開くと【変圧】と書かれてあった。
「ふむ……物や大気のアツリョクを変えることができる魔法。圧力を増やしたり減らしたりすることで物の性質を変えることができるが、戦闘向きの魔法ではない……か」
本を閉じ、棚に収めようとした瞬間、書庫に向かって訊く。
「のう……わしの魔法よ。わしの知らぬ魔法は分かるのかの?」
書庫から返事が返ってくる事はなく、本はすんなりと収められた。
さすがにどんな魔法か知らなければ調べることができないらしい。
ふくは諦めて目を閉じ、書庫を後にした。
§
目を開けるとにゃんは頭を押さえており、それを心配するライラ、そしてふくを支えていたヴォルフと拘束された魔獣がいた。
やはり書庫の時間はこちらの世界と大きく違うようで、殆ど時間が経っていなかったようだ。
「ふく、おかえり。早かったね」
「お前はわしが書庫におる間とそうでない時間が分かるのかの?」
「うん。帰ってきたのは分かるよ?」
「そうか。にゃんの魔法は【変圧】と何かのようじゃ。」
「【変圧】か。戦いには向かない魔法だな。なら、武器を持ってやるしかないが、今は持っていないからライラがやってみるか?」
「えっ!?ちょっと……自信……無いかな」
ライラは自信のなさそうな表情を浮かべつつ魔力を昂らせていく。
「『火の力よ……彼の者を燃やす火球を放て!』」
頭上に向けて手を翳すと大きな火球が生成され、その大きさはライラの身長の二倍の大きさであった。
ヴォルフはそれでは魔獣を仕留めることが出来ないと考えていると、にゃんがライラの魔法に向けて手を向ける。
「私の魔法……戦闘には向かないかもしれませんが、手助けにはなるかもしれません……!『圧力よ、火球を槍のように形を変え、後部より圧力を抜き、閃光の如く速度を手に入れよ』」
「お?長い詠唱」
ヴォルフがワクワクした表情で作り上げられていく火の槍を見つめていた。
ヴォルフは魔獣を発見し、魔獣の周りを回りながら減速していき、真正面に立ち塞がり三人を背中から降ろす。
ライラとにゃんは足をガクガクと震わせて碌に立てるような状況ではなかった。
「ぼるふ、お前は少し加減して走る事は出来んのか?」
「……ちょっと遅く走ったんだけど」
「……?ぼるふ、ヒトの姿になるのじゃ」
ふくはヴォルフを獣人の姿にさせる。
何故そのようにしたのかわからず、首輪や傾げていると、ふくはヴォルフを抱きしめ、マズルを胸の中に埋める。
「よくやったのじゃ。お前はよく頑張っておるのはわしがよく知っておる。そんなに拗ねるでない」
優しく頭を撫で、手櫛で髪の毛を解いていく。
元々体毛であった為、髪の毛は非常に硬く太い毛であり、魔力を込めると鋼のように硬くなる特性はあるようだった。
そして、撫でられていくうちにヴォルフは尻尾を左右にぶんぶん振って嬉しさをアピールする。
「さて、にゃんの戦闘を見てみるとしよう。ライラも魔獣と少人数で戦うのは初めてじゃろう?二人で協力して倒してみるのじゃ」
「えっ!ウチも!?で、できるかな……?」
「ら、ライラさん!よろしくお願いしますっ!」
魔獣は四人が目の前に現れても逃げもせず、枯れた木の枝をバリバリと食べ進んでいた。
植物の少ない世界でこの巨体になるまで成長できるこの魔獣の生態にふくは不思議に思う。
にゃんは納めていた爪を出して毛を逆立てる。
そして、膨大な魔力を解放させ、王族変異の状態になる。
「フーッ!フーッ!」
「にゃん!少し落ち着いて!そんなに魔力出したら気絶しちゃうよ!」
ライラの一言でにゃんは魔力を抑え、呼吸を整える。
にゃんの魔力量はライラを遥かに超えており、王族変異する体質に驚きつつ魔法についてを話すことにした。
「魔法はおでこのあたりに生まれつき一つの魔法があるの。それを魔力で呼び起こしてあげると、『言葉』が返ってくるよ!」
「や、やってみる……!」
ライラの言う通り、魔力をおでこに集中させるように意識をすると頭の中でザワザワと音がし始める。
突如、頭を両手で抑え蹲る。
「だ、大丈夫!?あ、逃げてしまう……!どうしよう……!」
にゃんの心配をするか魔獣を倒すか迷っていると、閃光の如く魔獣の横腹に飛び蹴りがさく裂し、ゴロゴロと転がっていく。
「『木の檻』」
短く詠唱したふくは魔獣の体を拘束し、締め上げていく。
そして、にゃんの頭に手を当てた瞬間、ふくの頭の中にもザワザワとした音が響く。
「……こやつ、二つの魔法を持っておるのじゃ……!一つはアツリョク?と言うものを変える力。もう一つは……なんじゃ……?」
――バチッ!
にゃんの頭に触れていたふくの手が何かに弾き飛ばされた。
痺れるような衝撃を受け、掌を見る。
特別外傷は無かったのだが、拒絶されたような痛みであり手をぎゅっと握る。
「どうしたの?」
「む……にゃんの魔法を調べようとしたら弾かれたのじゃ。あの魔法……わしの書庫でも調べられぬかもしれんの……」
「そんな変わった魔法の持ち主か……。王族変異が起きるのも納得かもな」
「……少し書庫に行ってくるのじゃ」
「いってらっしゃい」
ふくは瞳を閉じて書庫に向かうのであった。
§
書庫に辿り着くと本が一冊落ちる。
拾い上げ、表紙を見るとやはり【魔法大全】の本であった。
開くことができるページを開くと【変圧】と書かれてあった。
「ふむ……物や大気のアツリョクを変えることができる魔法。圧力を増やしたり減らしたりすることで物の性質を変えることができるが、戦闘向きの魔法ではない……か」
本を閉じ、棚に収めようとした瞬間、書庫に向かって訊く。
「のう……わしの魔法よ。わしの知らぬ魔法は分かるのかの?」
書庫から返事が返ってくる事はなく、本はすんなりと収められた。
さすがにどんな魔法か知らなければ調べることができないらしい。
ふくは諦めて目を閉じ、書庫を後にした。
§
目を開けるとにゃんは頭を押さえており、それを心配するライラ、そしてふくを支えていたヴォルフと拘束された魔獣がいた。
やはり書庫の時間はこちらの世界と大きく違うようで、殆ど時間が経っていなかったようだ。
「ふく、おかえり。早かったね」
「お前はわしが書庫におる間とそうでない時間が分かるのかの?」
「うん。帰ってきたのは分かるよ?」
「そうか。にゃんの魔法は【変圧】と何かのようじゃ。」
「【変圧】か。戦いには向かない魔法だな。なら、武器を持ってやるしかないが、今は持っていないからライラがやってみるか?」
「えっ!?ちょっと……自信……無いかな」
ライラは自信のなさそうな表情を浮かべつつ魔力を昂らせていく。
「『火の力よ……彼の者を燃やす火球を放て!』」
頭上に向けて手を翳すと大きな火球が生成され、その大きさはライラの身長の二倍の大きさであった。
ヴォルフはそれでは魔獣を仕留めることが出来ないと考えていると、にゃんがライラの魔法に向けて手を向ける。
「私の魔法……戦闘には向かないかもしれませんが、手助けにはなるかもしれません……!『圧力よ、火球を槍のように形を変え、後部より圧力を抜き、閃光の如く速度を手に入れよ』」
「お?長い詠唱」
ヴォルフがワクワクした表情で作り上げられていく火の槍を見つめていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる