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第五部 大人の階段
第486話 成長①
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ある晴れた日の昼下がり。
ドリスティアの王都の下町を、1人の青年が歩いていた。
いや、青年と呼ぶにはまだ若い。
年の頃は、多く見積もって13、4歳ほどだろうか。
艶やかな銀色の髪に菫色の瞳。美しく整った甘い顔立ちは匂い立つように麗しく。
地元の人間ではない人々は、誰もがその姿に見惚れ振り返って少年の姿を目で追った。
でも、地元の人の反応は少し違っていて。
「お~、シュリ坊。久しぶりだな! ちょっと寄っていけよ」
「こんにちは~。今日は忙しいからまた今度ね」
「シュリちゃん!! パンが焼きたてだから持っていきな」
「ありがとう! 今度、買い物に寄るからね~」
少年を見知る人々は口々に声をかけ、少年は朗らかに微笑んで返事を返す。
そうして微笑むと、近寄りがたいほどの美貌がとたんに親しみやすくなる。
彼の名前はシュリナスカ・ルバーノ。
地元のみなさんからはシュリという可愛らしい少年として親しまれているが、れっきとした貴族の子息である。
そして、この国のお姫様の、婚約者でもあった。
年は今年で17歳。
ではあるが、正直、どう頑張っても17歳には見えない。
せいぜい、14歳……下手をすると11、2歳くらいにみられてもおかしくなかった。
本人はそれを気にして大人ぶるのだが、それがまた微笑ましく、周囲の人をいつもほっこりさせていた。
そんな子供にしか見えないシュリだが、数年前に王都の王立学院、高等魔術学園、冒険者養成学校を卒業し、その後、ぜひにと請われて商都、帝都、獣王国の高等専門機関に1年ずつ留学する羽目になり。
その後もなにかと忙しく各地を渡り歩いていた為、最近やっと王都の屋敷に落ち着く事が出来るようになった。
そんなわけで、現在はまだ決まった職が無く、絶賛無職中だが、本人は特に気にすることなくつかの間の休息をのんびり過ごしている。
それに、いくつか職は決まっているのだ。
まずは王国騎士団。
貴族としての身分が低い分を職でカバーしようという王様の思惑もあって、ねじ込まれた仕事だ。
最初は小規模な部隊の指揮官からはじめて、いずれは将軍をめざせたらいいなぁ、と王様からは言われている。
ムリしなくてもいいよ、とも言われているが。
次に、国立魔術研究機関。
これは高等魔術学園でお世話になっていた先生からの要請で断りきれなかった。
と言っても、騎士団の仕事もあるため相談役、というような立ち位置ではあるが。
時折顔を出し、独自の目線で意見を貰いたい、ということらしい。
最後に、冒険者組合。
ここは特に就職、という感じでは無いのだが、定期的に冒険者としての活動をし、時々は冒険者養成学校で講師の真似事や、他の有望な冒険者へのアドバイスなどをお願いしたい、との事だった。
報酬は都度支払われるらしい。
冒険者としての活動はするつもりだったし、他の頼まれ仕事も時々ならいいだろうと判断し、快く引き受けた。
そんなわけで、今はのんびり暇人だが、この先はそういう訳にはいかない。
なので当面はこの限りある暇を満喫しよう、と思い、まさにそれを満喫している最中だった。
シュリがフィフィアーナ姫の婚約者となり、二桁に及ぶ恋人が出来てから10年たつわけだが、彼女達との関係性もさほどの変化はない。
10年という月日がシュリとフィフィアーナ姫をラブラブカップルにしてくれた訳でもないし、二桁の恋人をとっかえひっかえ甘くただれた生活をしている訳でもなく。
フィフィアーナとは婚約者として定期的に会ってはいるが、彼女は相変わらずアンジェにぞっこんだし、恋人達とは順番にデートしてキスをする程度の清らかな関係性のままだった。
フィフィアーナに関して言えば、キスなどもっての他である。
とはいえ、シュリも17歳。
最近の愛の奴隷達の1番の懸念事項は、シュリにその時が来たとき、誰が筆おろしの相手になるべきか。
みんな自分がそうなりたい、とは思っているが、あまりガツガツしてシュリに嫌われたくない。
そんな様々な感情をせめぎ合わせつつ、最近の彼女達は終わらぬ話し合いを夜毎に続けていた。
この国では15歳を越えると成年とみなされる。
年齢的にはもうすっかり大人の仲間入りをしたシュリなのだが、体はまだそうとは言えなかった。
それはどういう意味か。
筆おろしをどうするか、という話題が出ている以上、シュリはいまだ童貞のまま。
だが童貞うんぬんの問題以前に、シュリの体はまだその準備が出来ていなかった。
つまり。
シュリはまだ精通を迎えておらず、いまだその気配すら感じられなかった。
そんなわけでシュリは清い体のまま、恋人達とも清い関係のまま、なのである。
シュリとしては、そっちに関してはどうでも良かったのだが、17歳なのに髭の1本すら生えず、全身つるんつるんなのはいかがなものか、と思っていた。
アグネスやバーニィを代表とするあちら側のお姉さま方には非常にうらやましがられるのだが、シュリとしてはしっかり毛が生え揃ってこそ大人の男なんじゃないかと思うのだ。
この10年、筋肉を育てる努力をし続けたが、いまだマッチョにはほど遠く。
ならばせめて毛を、と思うのだ。
シュリは思う。
髭が生えたら、伸ばしてダンディに整えるんだ、と。そんな(毛の)死亡フラグを立てつつ、いつか諸々の毛が生え揃う日を、シュリは心待ちにしていた。
ドリスティアの王都の下町を、1人の青年が歩いていた。
いや、青年と呼ぶにはまだ若い。
年の頃は、多く見積もって13、4歳ほどだろうか。
艶やかな銀色の髪に菫色の瞳。美しく整った甘い顔立ちは匂い立つように麗しく。
地元の人間ではない人々は、誰もがその姿に見惚れ振り返って少年の姿を目で追った。
でも、地元の人の反応は少し違っていて。
「お~、シュリ坊。久しぶりだな! ちょっと寄っていけよ」
「こんにちは~。今日は忙しいからまた今度ね」
「シュリちゃん!! パンが焼きたてだから持っていきな」
「ありがとう! 今度、買い物に寄るからね~」
少年を見知る人々は口々に声をかけ、少年は朗らかに微笑んで返事を返す。
そうして微笑むと、近寄りがたいほどの美貌がとたんに親しみやすくなる。
彼の名前はシュリナスカ・ルバーノ。
地元のみなさんからはシュリという可愛らしい少年として親しまれているが、れっきとした貴族の子息である。
そして、この国のお姫様の、婚約者でもあった。
年は今年で17歳。
ではあるが、正直、どう頑張っても17歳には見えない。
せいぜい、14歳……下手をすると11、2歳くらいにみられてもおかしくなかった。
本人はそれを気にして大人ぶるのだが、それがまた微笑ましく、周囲の人をいつもほっこりさせていた。
そんな子供にしか見えないシュリだが、数年前に王都の王立学院、高等魔術学園、冒険者養成学校を卒業し、その後、ぜひにと請われて商都、帝都、獣王国の高等専門機関に1年ずつ留学する羽目になり。
その後もなにかと忙しく各地を渡り歩いていた為、最近やっと王都の屋敷に落ち着く事が出来るようになった。
そんなわけで、現在はまだ決まった職が無く、絶賛無職中だが、本人は特に気にすることなくつかの間の休息をのんびり過ごしている。
それに、いくつか職は決まっているのだ。
まずは王国騎士団。
貴族としての身分が低い分を職でカバーしようという王様の思惑もあって、ねじ込まれた仕事だ。
最初は小規模な部隊の指揮官からはじめて、いずれは将軍をめざせたらいいなぁ、と王様からは言われている。
ムリしなくてもいいよ、とも言われているが。
次に、国立魔術研究機関。
これは高等魔術学園でお世話になっていた先生からの要請で断りきれなかった。
と言っても、騎士団の仕事もあるため相談役、というような立ち位置ではあるが。
時折顔を出し、独自の目線で意見を貰いたい、ということらしい。
最後に、冒険者組合。
ここは特に就職、という感じでは無いのだが、定期的に冒険者としての活動をし、時々は冒険者養成学校で講師の真似事や、他の有望な冒険者へのアドバイスなどをお願いしたい、との事だった。
報酬は都度支払われるらしい。
冒険者としての活動はするつもりだったし、他の頼まれ仕事も時々ならいいだろうと判断し、快く引き受けた。
そんなわけで、今はのんびり暇人だが、この先はそういう訳にはいかない。
なので当面はこの限りある暇を満喫しよう、と思い、まさにそれを満喫している最中だった。
シュリがフィフィアーナ姫の婚約者となり、二桁に及ぶ恋人が出来てから10年たつわけだが、彼女達との関係性もさほどの変化はない。
10年という月日がシュリとフィフィアーナ姫をラブラブカップルにしてくれた訳でもないし、二桁の恋人をとっかえひっかえ甘くただれた生活をしている訳でもなく。
フィフィアーナとは婚約者として定期的に会ってはいるが、彼女は相変わらずアンジェにぞっこんだし、恋人達とは順番にデートしてキスをする程度の清らかな関係性のままだった。
フィフィアーナに関して言えば、キスなどもっての他である。
とはいえ、シュリも17歳。
最近の愛の奴隷達の1番の懸念事項は、シュリにその時が来たとき、誰が筆おろしの相手になるべきか。
みんな自分がそうなりたい、とは思っているが、あまりガツガツしてシュリに嫌われたくない。
そんな様々な感情をせめぎ合わせつつ、最近の彼女達は終わらぬ話し合いを夜毎に続けていた。
この国では15歳を越えると成年とみなされる。
年齢的にはもうすっかり大人の仲間入りをしたシュリなのだが、体はまだそうとは言えなかった。
それはどういう意味か。
筆おろしをどうするか、という話題が出ている以上、シュリはいまだ童貞のまま。
だが童貞うんぬんの問題以前に、シュリの体はまだその準備が出来ていなかった。
つまり。
シュリはまだ精通を迎えておらず、いまだその気配すら感じられなかった。
そんなわけでシュリは清い体のまま、恋人達とも清い関係のまま、なのである。
シュリとしては、そっちに関してはどうでも良かったのだが、17歳なのに髭の1本すら生えず、全身つるんつるんなのはいかがなものか、と思っていた。
アグネスやバーニィを代表とするあちら側のお姉さま方には非常にうらやましがられるのだが、シュリとしてはしっかり毛が生え揃ってこそ大人の男なんじゃないかと思うのだ。
この10年、筋肉を育てる努力をし続けたが、いまだマッチョにはほど遠く。
ならばせめて毛を、と思うのだ。
シュリは思う。
髭が生えたら、伸ばしてダンディに整えるんだ、と。そんな(毛の)死亡フラグを立てつつ、いつか諸々の毛が生え揃う日を、シュリは心待ちにしていた。
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