♀→♂への異世界転生~年上キラーの勝ち組人生、姉様はみんな僕の虜~

高嶺 蒼

文字の大きさ
338 / 545
第三→四部 旅路、そして新たな生活

間話 『猫の遊び場亭』改め『キャット・テイル』にて③

しおりを挟む
 「ナーザさん、ジャズ! アレは確かにやばい!!」


 宿の最上階。家族と従業員の住居があるフロアで。
 ナーザとジャズの部屋の扉を、ノックの返事も待たずにあけたサギリは叫ぶようにそう言った。
 リビングでくつろいでいたナーザとジャズは、突然の闖入者に驚いた様子も無く彼女を見返し、


 「ん? どうしたんだ、サギリ。やばい奴、とは穏やかじゃないな。ならず者か? ならず者だな! うちの宿が美女揃いだという噂を聞きつけたならず者がとうとうやってきたって事か」


 地道な宣伝がやっと実を結んだなぁ、とティーカップを傾けながらナーザがほくそ笑む。
 ハクレンを追い出してから宿のリニューアルをはかり、臨時従業員のジャズを含め女3人で運営する宿だからと、美女のおもてなしの宿として打ち出したのがつい先日。
 元々赤字経営気味だったため、宣伝費をかけることが出来ず、口コミのみを当てにして頑張っていたのだが、その口コミがようやくならず者の耳にも届くようになったのかと、ナーザは感慨ひとしおだった。

 まあ、ならず者に退去して来られても困るのだが、口コミが全く身を結ばないよりは幾分マシだろう。
 最悪、ならず者は強制排除をすればいいだけのことだしな、と物騒な事を考えつつ、対処の為に立ち上がろうとしたナーザより早く、


 「ならず者? じゃあ私が行くよ?」


 己の愛剣に手を伸ばしながらジャズが返し、即座に立ち上がる。
 そんな愛娘を見上げ、


 「ふぅん。いっちょ前に冒険者らしい顔をするようになってきたじゃないか」


 ちょっとからかうようにそう言って、ナーザはニヤニヤ笑った。
 そんな母親を見返し、ジャズは子供っぽく唇を尖らせる。


 「まだ養成学校へは通ってるけど、冒険者登録もしてるし、ちょっとは冒険だってしてるんだから。まあ、現役時代のお母さん達に比べたらまだまだだけどさ」

 「現役時代の私達と比べたら、Aランクの冒険者だってまだまださ。ま、せいぜい頑張りな、ひよっこ冒険者」


 ナーザはにんまり笑ってソファーに背を預け、再びティーカップを傾ける。
 どうやら、ならず者のお相手は、駆け出し冒険者の娘に任せる方向性のようだ。


 (経験ってのは大事だからな。もし危なくなっても、ここからならすぐ駆けつけられるし。ま、問題ないだろ)


 内心の思いは、十分に過保護なものだったが。
 そんな母親の期待に応えるようにジャズは力強く頷くと、


 「わかった。任せてよ。じゃあ、サギリ、行こうか。ならず者はどこ? 受付のところかな?」


 その顔を、サギリの方へと向けた。
 母娘のやりとりを、ぽかんとした顔で見ていたサギリは、己へ向けられた視線にはっとして、


 「や、あの。ち、違くてですね。やばいって言ってもならず者とかじゃなくてで……」


 彼女達の誤解を解くために声を上げる。


 「ん? ならず者じゃないのか?」

 「え? ならず者じゃないの??」

 「違いますよっ! ……いや、ある意味アレもならず者なのか? 恋のならず者、的な??」

 「恋の……」

 「ならず者??」


 サギリの言葉に、訳が分からないと顔を見合わせるナーザとジャズ。


 「いや、でも、あんなに可愛らしいのにならず者って表現は微妙か。でも、魂を揺さぶるようなトキメキを問答無用でぶっ込んでくるあの感じは、ならず者と言っても過言では……」

 「あんなに、可愛らしい? 可愛らしいならず者なんて存在するのか?? ああいうのは大体においてむさくるしいもんだと相場が決まってるものだろ?」


 要領を得ないサギリの言葉に、ナーザは訳がわからんと首を傾げる。
 だが、その横でジャズがハッとしたように顔を上げた。


 「魂を揺さぶるような、トキメキ……それってもしかして」


 ジャズは目をキラキラさせ、がっとサギリの肩を掴む。


 「シュリのこと!? もしかして、今、下にシュリが来てるの!?」

 「なぬぅ!? シュリが来てるのか!!」


 ジャズの言葉を受けて、ナーザもカッと目を見開いた。
 2人の想像以上に過剰な反応に、サギリはむしろ冷静さを取り戻しつつ、


 「え、あ、はい。今、食堂で待って貰ってて……って、あれ?」


 そう言って彼女が頷いた瞬間、2人は音速を超えた。
 ……というのは言い過ぎだが、サギリの言葉が全て終わる前に、2人の姿は忽然と部屋の中から消えていた。


 「シュリ、今行くからねっ!!」

 「こらっ、ジャズ! 年功序列を守れ! 私が先に行くんだぁぁっ」

 「お母さんってば、大人気ない! 相手がお母さんでも、これだけは譲れないよっ!!」

 「それはこっちのセリフだ。相手が可愛い娘でも、これだけは譲れんっ!!」


 そんな2人の言い合う言葉と共に、だだだだだだだっ、ともの凄い勢いで階段を駆け下りる音が聞こえ、


 「ええっ!? 2人とも、はやっ!!」


 サギリは慌てて2人を追いかける。
 だが、宿の主とその娘のたてた物音に、外出していなかった各階の泊まり客が一体何事かと顔を出し。
 サギリは『大丈夫、何でもないです。ごめんなさい』と頭を下げながら、はた迷惑な母娘を追いかける羽目になったのだった。
しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...