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第三→四部 旅路、そして新たな生活
第285話 王都への旅路はお約束がいっぱい⑧
しおりを挟む「だ、大丈夫?」
はあはあ、と肩で息をするジェスに、シュリは恐る恐る声をかける。
「ら、らいじょうぶら。しょれより、捕らえられたじょしぇい達は?」
若干話しにくそうにそう問いかけ、ジェスはきりりと表情を引き締めた。
「う、うん。こっち」
シュリは、さっきのはなんだったんだろう、と思いつつ、ジェスの前に立って女性達を隠した部屋へ彼女を連れて行く。
シュリが魔法で閉じた土壁の前に立つと、
「ん? 行き止まりのようだぞ?」
そう言ってジェスが首を傾げる。
「大丈夫。彼女達はこの向こうだよ」
シュリは言いながら手の平を土壁にかざした。
すると、シュリの作った土壁は一瞬で崩れ落ち、その向こうに怯えた表情でこちらを見る女性達の姿が見えた。
強ばった表情で互いを抱きしめあう彼女達を安心させるように、シュリが柔らかく微笑む。
するとまるで憑き物が落ちたかのように彼女達の表情が目に見えて柔らかくなり、それを見たジェスは目を見張った。
「シュリ?」
「ん?」
「今、なにかやったのか?」
「なにかって……ただ、笑っただけだよ?」
そう言ってジェスの顔を見上げたシュリはもう一度ニコリと笑い、それからゆっくりした足取りで彼女達の方へと向かう。
そして、
「助けにきたからもう大丈夫だよ。悪いモノはみんな退治したから安心して。これから順番に身体をキレイにして、身体の状態を見ていくね」
そう言うと、シュリは手の平から適温に調整した温水を出し、一人一人丁寧に身体を清めていった。
清め終わった女性は、ジェスと実体化したグランが清潔な布で拭いてやる。
そして一人一人にシャイナに頼んで念の為に用意してきた簡易なワンピースを渡して着替えて貰った。
そうしてやっと、彼女達は人心地付いたような、穏やかな顔になる。
そして、シュリが地面に敷いた柔らかで厚みのある敷物の上にそれぞれ腰を下ろし、遠慮がちながら言葉を交わしはじめた。
そんな彼女達を見ながら、シュリは難しい顔をして腕を組む。
さっき身体を清めながら、[状態診察]のスキルで彼女達の状態を簡易に確認していったのだが、すべての女性が状態異常を発症していた。
一体どんな状態異常か。
それは、[ゴブリンの種(受精)]ないしは[ゴブリンの種(胎児)]というものだった。
女達の腹を見る限り、幸いなことに出産間近まで進行しているモノは無さそうだが、このまま放置すればいずれはそうなる。
ゴブリンに種付けされた場合、母親の種族が何であろうと、生まれてくるのは純粋なゴブリンだ。
そう言う意味では、妊娠したというよりは腹に寄生されたと言う方が正しいかもしれない。
こうして状態異常に分類されているくらいだし。
さて、どうしようか。
シュリは眉間に可愛らしいしわを寄せて考え込む。
そのしわに、ジェスがうっとり見とれていることにも気づかないまま。
ちなみに、グランはもうシュリの中へ戻っている。
実体をとってシュリの側にいるのも幸せだが、シュリの中にいると、全身くまなくシュリに包み込まれている感じがして何とも言えない幸福感なのだそうだ。
精霊達がむやみやたらと実体化せずにシュリの中でのんびり過ごしているのには、そんな理由もあるかららしい。
まあ、頻繁に実体化されるのも大変だから、ちょうど良かったけど。
しかし、今はそんなことより、腹にゴブリンの種を植え付けられてしまった女性達の事である。
どうにかしておかなければ、いずれ彼女達はチビゴブリンを出産せねばならなくなってしまう。
彼女達の精神衛生の為にも、それはどうにかして避けたい事態だった。
(ん~と、ゴブリンに種付けされちゃった女性の治療法ってどんなだったかな。状態異常ってくくりにはいってるから、治療魔法とか浄化の魔法でいけるのかなぁ……?)
これって、[癒しの体液]でどうにかなるたぐいのものなのかな? と首を傾げ、ステータス画面を開いて確認しようとした時、
・スキル[清めの体液]を取得しました!
久しぶりにいつもの奴がやってきた。
(清める系のスキルかぁ。正直ありがたいよ? ありがたいけどさぁ……体液じゃなくてもいいと思うんだよ……)
なんでなんだ、と頭を悩ませつつ、ステータス画面からスキルを確認する。
[清めの体液]文字通り、清めの効果がある体液。状態異常に強い効果を発揮する。聖水なんて目じゃない! 状態異常なら何でもござれ。呪いも悪魔も吸血鬼も一瞬でとろけちゃう。あなたのキスで、魔物もイ・チ・コ・ロ♪
(イチコロって……。いつも思うけど、僕のステータスの説明機能ってどこかおかしいよね……。ま、まあ、重要なのはそこじゃないし、状態異常に効果があるって事さえ分かれば問題ないけどさ。それにしても、僕の体液って……)
シュリはほんのり遠い目をする。
癒し効果のある体液ってだけで十分に変だったのに、そこに更に聖水も裸足で逃げ出す浄化効果まで加わってしまった。
どこかのマッドサイエンティストにバレたら、人体実験をされてしまうレベルではないだろうか。
上手くやったら、新興宗教の教祖様にだってなれるかもしれない。
教祖様の体液を口にしただけであら不思議。身体の不調も呪いもキレイさっぱり消えてなくなります、みたいな。
そんなつもりは欠片もありはしないけれど。
(望まない人体実験を避けるために、出来れば僕の体液の秘密は守っておきたい……でも、それならどうやってみんなに僕の体液を飲ませよう?)
考え事をしながら、とりあえずみんなに水を飲ませてあげようと、水の入った皮袋を取り出し、シュリははっとしたように目を見開いた。
これを聖水って事にして、口移しで飲ませればいいんじゃなかろーか、と。
そうすれば、彼女達一人一人にシュリの体液を自然に摂取させることが出来る。
(よし、そうしよう!)
シュリは気合いを入れるように小さな拳をきゅっと握り、水の入った皮袋を片手に、女性達の方へいそいそと近寄った。
とはいえ、いきなり聖水を口移しで飲めというのも乱暴である。
まずはコミュニケーションから、とシュリは彼女達の前にちょこんと座り込んだ。
そして、
「僕の名前はシュリ。で、あっちのおねーさんはジェス。ここを無事に脱出して近くの村に戻るまで、僕とジェスがおねーさん達を守るから、なにも心配しなくていいからね」
簡単な自己紹介と説明と共に彼女達の顔を見上げ、にこっと笑いかける。
その瞬間、おねーさん達の頬が一人の例外もなく鮮やかな赤に色づいた。
なんだか鼻息も荒くなった気がしたが、それは多分、気のせいだろう。
彼女達は心身共に傷つき疲れ切っており、目の前にどんな魅力的な男(少年)が現れようとも、発情している余裕なんてないはずである。
シュリは己にそう言い聞かせ、潤んだ瞳で見つめてくるおねーさん達から目を逸らさず続けた。
「脱出の前に、おねーさん達の治療をしないといけないんだ。状態異常もあるから、それも治しておかないといけないし。僕が治療をしようと思うんだけど、イヤじゃない、かな?」
小首を傾げて問いかけると、胸を押さえてうずくまるおねーさんが大量に生産された。
困った顔でジェスの方を伺うと、彼女は胸こそ押さえていなかったものの、何故か鼻を抑えてうつむいて震えている。
今の彼女からは有効な助言を得られそうに無かった。
そんなわけで、ジェスの助けを得られなかったシュリは、何故か悶えるおねーさん達に一人で立ち向かう選択肢しかなくて。
(まあ、なるようになるでしょ)
開き直ったシュリは、一番手前にいた一人のおねーさんの手を取り、そっと自分の方へと引き寄せる。
そしてその頬に手を添えてうつむいていた顔を上向かせ、その瞳をまっすぐにのぞき込んだ。
「じゃあ、おねーさんから治療、しようかな」
「は、はひ……」
一応の同意は得られた。
シュリは手に持っていた聖水をあおってから、もう一度おねーさんを見上げ、にこっと笑う。
心配いらないよ、と伝えるように。
そして、ぼふっと顔が真っ赤になったおねーさんの唇に、有無をいわせず己の唇を押し当てた。
驚きすぎていたせいだろうか。
おねーさんの唇はうっすらと開いており、それを好機とみたシュリは舌でそれを更にこじ開けつつ、口の中に溜まっていた液体を流し込む。
聖水という建前を持つ水を。
とはいってもただの水ではない。
それは、お清め&癒し効果抜群のシュリの体液がふんだんに混ざった高性能な水に見事な変貌を遂げていた。
おねーさんはいきなり流し込まれた液体に驚いたようだったが、吐き出すことなく素直に飲み込んでくれた。
それを確認したシュリは、すかさず[状態診察]でおねーさんの状態をチェックする。
すると、おねーさんに付与されていたはずの[状態異常・ゴブリンの種]は見事に消えてなくなっていた。
(良かった。これで安心だ。それにしても、すごいな。僕の体液……)
清めるだけでなく癒し効果も含まれるから、失った体力と全身の小さい傷くらいなら恐らく回復できているはずだ。
改めて己の体液のとんでもなさに若干引きつつも、シュリは今回の状態異常にしっかり己の体液が効果を出せた事にほっと息をついた。
そして、任務終了とばかりに、最初のおねーさんから離れようとした時、そうはさせじとばかりにおねーさんの手が、シュリの後頭部をがっと掴んだ。
そして、シュリが抵抗する間もなく、今度はおねーさんの舌がシュリの中へ侵入してくる。
「んぅ~!?」
手をバタバタさせるシュリを押さえ込んで、彼女の舌は存分にシュリを堪能する。
しばらくそうした後、うっとりした顔で一旦顔を離した彼女は再びシュリの唇を堪能しようと顔を近づけたが、その願いは叶わなかった。
横から伸びてきた手に素早くその身柄を拘束されたシュリは、休む間もなく別のおねーさんに唇を奪われていた。
荒々しくねじ込まれた舌に応えつつ、目だけで周囲の様子を伺う。
そこに飢えた獣達が目を爛々とさせて待ちかまえる様子を見たシュリは、早々に諦めておねーさんとのキスに積極的に応じることにした。
少なくとも、ゴブリンにさらわれていたおねーさん達の人数分、キスをすることはもはや確定事項だろう。
彼女達が、口移しで水を飲ませる程度のキスで満足してくれないことは明らかだった。
ならば、積極的にお応えした方が、時間が短くてすむはずだ。
そう考えたシュリは、己の技巧の限りをつくしておねーさんの舌をからめ取って刺激し、ついでにたっぷりと己の唾液を流し込む。
おねーさんは嬉しそうに喉をならし、その甘露を飲み干すのだった。
その様子を確かめ、順番待ちする野獣の目をした女性達を眺め、打ち捨てられたように地面に落ちている皮袋を見て、シュリは思う。
結局、聖水モドキはあんまり必要なかったなぁ、と心の底からしみじみと。
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