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3.Ω嫌いのαと、Ωになることを受け入れたβ編
3-5:Ω嫌いのαと、Ωになることを受け入れたβ編5
しおりを挟む夜通しすると宣言した通り、俺たちは朝になるまで何度も交わっていた。
全身に鬱血痕とフェロモンを纏わされ、けれど肉体的な負荷は前より軽い。
(本当に俺、Ωになったんだな。でも、もう怖くない)
俺は抱きしめられたまま、安らかに夢の世界を漂う籠理さんの顔を眺めている。
目の下に薄い隈があるから、俺がいない間は眠れていなかったのかもしれない。
……だからこのまま寝かしてあげたかったけど、今日の俺たちには用事があった。
「籠理さん、起きてよ。β会に謝りに行くんでしょ、一緒に」
俺は籠理さんを軽く揺さぶり、優しく声をかけて覚醒を促す。
すると彼は瞼を開き、ぼんやりとした表情で俺を見つめ返してきた。
「ふふ、狭間くんがいる。もう起きるの、怖くありませんね」
そういうと籠理さんは体を起こし、寝癖がついた髪で嬉しそうに微笑んだ。
確かに二人で寝てたのに、目覚めたら一人なのは想像より寂しいのかもしれない。
「それは、ごめん。怒ってるわけじゃないんだろうけどさ」
「えぇ、幸せを噛み締めているだけです」
無遠慮だった過去の負い目から、俺は少し視線を逸らして謝罪する。
けれど籠理さんは断罪などせず、ただ身を寄せてくるだけだった。
「私を選んでくれたこと、絶対後悔させませんから」
左手の薬指に口づけられて、俺の耳がじわじわと熱くなるのを感じる。
籠理さんはその反応に満足したのか、上機嫌で身支度を整えに行った。
大学の講義が終わる頃に、俺たちは迷惑を掛けたβ会の面々に謝罪してまわった。
みんな快く許したり、冷やかしたりしてきたが、遊ぶ頻度は少なくなるだろう。
(発情期がある以上、β会に行くのはマナー違反だ。例え受け入れられたとしても)
あそこは同一体質による気楽さが売りだから、それを絶対に壊したくなかった。
けれど全ての友情が切れるわけではなく、仲良くしてくれる人も存在する。
「β会には来られなくても、友達だからね。俺達」
「ありがとう鈴木。それにあの時、籠理さんを呼んでくれたのも」
一番巻き込んでしまった鈴木は、大学に入った時にできた最初の友達だった。
だから俺に甘い反面、籠理さんには未だ複雑な感情を抱いている。
「この人、俺に頭下げてたからね。なにかあったら連絡してくれって」
「籠理さん、そんなことしてたんだ。知らなかった」
俺が見ていない間に、籠理さんはβ会の面々に頭を下げてまわっていたらしい。
肝心の彼は暴露されると思わなかったらしく、気まずそうに視線を逸らしていた。
「狭間っちのこと、本当に大事にしたかったんだと思う。βの時から」
(案外、外から見てる人の方が分かるのかな。こういう関係値って)
俺たちの関係性は話していたが、彼こそ籠理さんの情を疑っていなかったらしい。
だから手放しで信頼はできなくても、様子を見守るだけに留めていたようだ。
そして籠理さんは話題を変えたいのか、珍しく自分から鈴木に話しかけていく。
「そ、そうだ! これから食事に行くんですが、貴方も一緒にいかがですか?」
これは既に二人で決めていたことだが、鈴木は突然の誘いに目を瞬かせている。
けれど俺と籠理さんは借りがあったから、以前からそれを返したいと思ってた。
「え、なんで俺」
「相談所のお礼です。三人で、スイーツ食べに行きましょうよ!」
あそこで鈴木が連絡していなければ、俺はバッドエンドまっしぐらだった。
だからこれは感謝の印でもあり、籠理さんからの歩み寄りでもある。
「これSNSに上がってた奴じゃん! でもいいの? 俺が混じっても」
「俺も誘おうと思ってたしね、みんなで行こうよ」
スマホに表示されたカラフルな画像に目を輝かせた友人を、俺も後押しする。
すると遠慮は消え失せたようで、満面の笑みで部屋に引っ込んでいった。
「じゃあ行く行く! 着替えてくるから、ちょっと待ってて!」
「急がなくていいよ、俺達待ってるから」
扉が閉まって友人が引っ込むと、屋外とはいえ籠理さんと二人きりになる。
だから俺は話題を半回転させ、さっきの話を掘り返した。
「でも意外だったな、籠理さんから他の人を誘おうって言い出すなんて」
「貴方の恋人になったんですから、私も人嫌いを治そうと思いまして」
今日の籠理さんは格好いい服ではなく、柔らかなセーターで身を包んでいた。
番になってから精神が安定したらしく、牽制するような雰囲気も存在しない。
……けれど俺は、その変化をあまり歓迎できていなかった。
「ふぅん、そう。いいんじゃない」
「あれ、お気に召しませんでした!?」
俺が素っ気なく返事をすると、籠理さんはショックを受けた顔で慌てている。
でも別に不機嫌なわけじゃなく、ただ何となく面白くないだけだ。
「俺の為に変わろうとしてくれるのは嬉しい。けど人前には出て欲しくない」
「え、え、なんでですか!? 私と恋人だって、知られたくない!?」
前向きじゃない俺の言葉を、籠理さんはかなり重大に捉えてしまっている。
しかし俺のせいで振りまわされる彼が可愛くて、思わず笑みが零れてしまった。
「逆だよ、みんなが籠理さんの魅力に気づくじゃん。取られたくない」
「……もしかして、嫉妬してくれてます? 狭間くん」
籠理さんは俺の顔を覗き込むように、少し屈んだ姿勢で問いかけてくる。
俺はその質問には答えず、近づいてきた唇に触れるだけのキスをした。
「満面の笑みじゃん。でも仕方ないでしょ、今まで俺だけのだったんだから」
「後にも先にも、貴方だけですよ。私が好きな人は」
友人が出てくるまでの短い間だけど、身を寄せ合って言葉を交わし合う。
それどころか背後で手を絡められ、恋人繋ぎにされてしまった。
「私だけのΩ。βの頃から、ずっとお慕いしていました」
END.
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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また別作品に完結済BL作品もあるので、よろしければそちらもどうぞ!
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