ティッシュが足んない ~などとサキュバスの息子のムスコが意味不明な供述をしており~

よん

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第8章  リーダーシップが足んない

リーダーシップが足んない 7

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……またか。
 みんな、どうしてそんな暗い過去を抱えてんだよ。

「自殺したって……オメー、ま、まさか幽霊じゃねーよな?」

 弱々しく猫助を指さす望海ちゃん。恐怖でまた泡吹くなよ。

「自殺したにゃんが、未遂に終わったにゃん。病院に搬送される途中、救急車の中にいきなり咲柚様が現れて、ニオイ放つあたしをそのまま誘拐したにゃんよ」

 誘拐……せめて保護って言ってくれ。
 身内としてもうこれ以上、あの人の犯罪歴は聞きたくない。

「未遂でもすげーよ。何したんだよ?」

 同じ境遇の望海ちゃんは、それを普通に聞き流して質問する。

「毒飲んだにゃん。でも、あたしにはちっとも効かにゃかったにゃんな」

 きっと強靭な胃袋の持ち主なんだろう。拾い食いとか普通にしてるだろうし。


「毒ではないですよ」


「え……?」

 僕と望海ちゃんが、そう発言した花子さんに目を向ける。

「花子さん、猫助のこと知ってるんですか?」
「はい。半年ほど前、咲柚様に引き取られた猫助さんといろいろ話をしましたから。……望海さんはその時、熊パンダ状態でしたからあまり覚えてらっしゃらないでしょうが」

 ムッとする望海ちゃん、

「まあ、新入りの素性なんて興味ねーしな」
「でも、今は興味ありそうだね?」
「うっせェ!」

 望海ちゃん、僕のみぞおちに強烈なエルボー!

 あれ、白衛門、何で報復にいかない? 今のけっこう痛かったぞ。

 そういや、猫助に噛まれた時だって……もしかして、僕が白衛門のこと恥だって言ったから怒っちゃった? 表情がないからわかりにくい。

「毒にゃんよ!」

 一方、猫助は両腕をパタパタさせて花子さんに抗議してる。
 手にする懐中電灯の灯りが、洞窟の壁でやかましく揺れて酔いそうになった。

「アレ大量に摂取したら、酩酊めいてい通り越して呼吸困にゃんで死んじゃうにゃん!」
「いいえ、猫助さん。で人は死にません」



 ………………。



「「マタタビッ? 毒ってマタタビかよ!」」


 僕と望海ちゃん、双子みたいに見事なステレオかまし。


 愕然とするのは当の猫助。

「はにゃん……マタタビで死にゃにゃいにゃんか?」
「ええ。猫助さんは猫科ではありませんから。人間にはむしろ滋養強壮になります」
「マジにゃんか?」
「そのようです。昔、旅人がその実を食べると、再び旅に出発できたので”マタタビ”と呼ばれた説があるくらいですから」

「はにゃ~あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 猫助の絶叫が洞窟内に反響する。

「道理であの時、元気みなぎってたにゃんな! てっきりあのままハイににゃってポックリ逝くと思ってたにゃんが」

 さすがは猫助。
 コイツのために一瞬でもブルーになった自分に腹が立つ。
 望海ちゃんなんて怒りで壁蹴ってるし。


 でも……。


 猫助が死のうと思った事実は変わらない。勘違いで死ねなかっただけだ。

「どうして自殺なんてしようとしたんだ?」
「苛めにゃんよ。それも壮絶にゃ。生ゴミとか食べさせられたにゃん」
「……何でまた?」
「多分、この格好で学校に行ってたからにゃんな」

 え……。

「そのヒゲも?」
「ヒゲも猫耳カチューシャもにゃん」
「そりゃ苛められるわ!」

 だけども、僕と同じで猫助だって誰にも迷惑なんてかけてないんだ。
 自分の価値観があって、それはたまたま人と違ってただけで……猫コス好きの動物性愛者ってだけで。

 僕達は人間界で爪弾きにされた者同士だ。
 平均的な集団の中に染まれないから……それでも生きてかなきゃならないから……ある意味、咲柚さんのおかげだな。


 こうして、一つになろうとしてる。


 でも、なれるかな?

 本当の一つに……。



「拓海様」

「はい?」

「私の過去も話した方がいいでしょうか?」


 あったまったレトルトカレーを片手鍋から取り出した花子さん、割れたレンズで僕を捉えてそう訊ねた。

 ハタチを過ぎていまだにセーラー服を着てる花子さん。
 この人も、いろんなゆがみがありそうだな。
 尤も、花子さん自身はそれを歪みだと感じてないだろうけどね。


「聞かせてください」

 
 そのカレーのニオイに、毎日給仕してくれた横山さんの顔を思い出しながら、僕は花子さんにそうお願いした。

  
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