68 / 176
第8章 リーダーシップが足んない
リーダーシップが足んない 7
しおりを挟む
……またか。
みんな、どうしてそんな暗い過去を抱えてんだよ。
「自殺したって……オメー、ま、まさか幽霊じゃねーよな?」
弱々しく猫助を指さす望海ちゃん。恐怖でまた泡吹くなよ。
「自殺したにゃんが、未遂に終わったにゃん。病院に搬送される途中、救急車の中にいきなり咲柚様が現れて、ニオイ放つあたしをそのまま誘拐したにゃんよ」
誘拐……せめて保護って言ってくれ。
身内としてもうこれ以上、あの人の犯罪歴は聞きたくない。
「未遂でもすげーよ。何したんだよ?」
同じ境遇の望海ちゃんは、それを普通に聞き流して質問する。
「毒飲んだにゃん。でも、あたしにはちっとも効かにゃかったにゃんな」
きっと強靭な胃袋の持ち主なんだろう。拾い食いとか普通にしてるだろうし。
「毒ではないですよ」
「え……?」
僕と望海ちゃんが、そう発言した花子さんに目を向ける。
「花子さん、猫助のこと知ってるんですか?」
「はい。半年ほど前、咲柚様に引き取られた猫助さんといろいろ話をしましたから。……望海さんはその時、熊パンダ状態でしたからあまり覚えてらっしゃらないでしょうが」
ムッとする望海ちゃん、
「まあ、新入りの素性なんて興味ねーしな」
「でも、今は興味ありそうだね?」
「うっせェ!」
望海ちゃん、僕のみぞおちに強烈なエルボー!
あれ、白衛門、何で報復にいかない? 今のけっこう痛かったぞ。
そういや、猫助に噛まれた時だって……もしかして、僕が白衛門のこと恥だって言ったから怒っちゃった? 表情がないからわかりにくい。
「毒にゃんよ!」
一方、猫助は両腕をパタパタさせて花子さんに抗議してる。
手にする懐中電灯の灯りが、洞窟の壁でやかましく揺れて酔いそうになった。
「アレ大量に摂取したら、酩酊通り越して呼吸困にゃんで死んじゃうにゃん!」
「いいえ、猫助さん。マタタビで人は死にません」
………………。
「「マタタビッ? 毒ってマタタビかよ!」」
僕と望海ちゃん、双子みたいに見事なステレオかまし。
愕然とするのは当の猫助。
「はにゃん……マタタビで死にゃにゃいにゃんか?」
「ええ。猫助さんは猫科ではありませんから。人間にはむしろ滋養強壮になります」
「マジにゃんか?」
「そのようです。昔、旅人がその実を食べると、再び旅に出発できたので”マタタビ”と呼ばれた説があるくらいですから」
「はにゃ~あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
猫助の絶叫が洞窟内に反響する。
「道理であの時、元気みなぎってたにゃんな! てっきりあのままハイににゃってポックリ逝くと思ってたにゃんが」
さすがは猫助。
コイツのために一瞬でもブルーになった自分に腹が立つ。
望海ちゃんなんて怒りで壁蹴ってるし。
でも……。
猫助が死のうと思った事実は変わらない。勘違いで死ねなかっただけだ。
「どうして自殺なんてしようとしたんだ?」
「苛めにゃんよ。それも壮絶にゃ。生ゴミとか食べさせられたにゃん」
「……何でまた?」
「多分、この格好で学校に行ってたからにゃんな」
え……。
「そのヒゲも?」
「ヒゲも猫耳カチューシャもにゃん」
「そりゃ苛められるわ!」
だけども、僕と同じで猫助だって誰にも迷惑なんてかけてないんだ。
自分の価値観があって、それはたまたま人と違ってただけで……猫コス好きの動物性愛者ってだけで。
僕達は人間界で爪弾きにされた者同士だ。
平均的な集団の中に染まれないから……それでも生きてかなきゃならないから……ある意味、咲柚さんのおかげだな。
こうして、一つになろうとしてる。
でも、なれるかな?
本当の一つに……。
「拓海様」
「はい?」
「私の過去も話した方がいいでしょうか?」
あったまったレトルトカレーを片手鍋から取り出した花子さん、割れたレンズで僕を捉えてそう訊ねた。
ハタチを過ぎていまだにセーラー服を着てる花子さん。
この人も、いろんな歪みがありそうだな。
尤も、花子さん自身はそれを歪みだと感じてないだろうけどね。
「聞かせてください」
そのカレーのニオイに、毎日給仕してくれた横山さんの顔を思い出しながら、僕は花子さんにそうお願いした。
みんな、どうしてそんな暗い過去を抱えてんだよ。
「自殺したって……オメー、ま、まさか幽霊じゃねーよな?」
弱々しく猫助を指さす望海ちゃん。恐怖でまた泡吹くなよ。
「自殺したにゃんが、未遂に終わったにゃん。病院に搬送される途中、救急車の中にいきなり咲柚様が現れて、ニオイ放つあたしをそのまま誘拐したにゃんよ」
誘拐……せめて保護って言ってくれ。
身内としてもうこれ以上、あの人の犯罪歴は聞きたくない。
「未遂でもすげーよ。何したんだよ?」
同じ境遇の望海ちゃんは、それを普通に聞き流して質問する。
「毒飲んだにゃん。でも、あたしにはちっとも効かにゃかったにゃんな」
きっと強靭な胃袋の持ち主なんだろう。拾い食いとか普通にしてるだろうし。
「毒ではないですよ」
「え……?」
僕と望海ちゃんが、そう発言した花子さんに目を向ける。
「花子さん、猫助のこと知ってるんですか?」
「はい。半年ほど前、咲柚様に引き取られた猫助さんといろいろ話をしましたから。……望海さんはその時、熊パンダ状態でしたからあまり覚えてらっしゃらないでしょうが」
ムッとする望海ちゃん、
「まあ、新入りの素性なんて興味ねーしな」
「でも、今は興味ありそうだね?」
「うっせェ!」
望海ちゃん、僕のみぞおちに強烈なエルボー!
あれ、白衛門、何で報復にいかない? 今のけっこう痛かったぞ。
そういや、猫助に噛まれた時だって……もしかして、僕が白衛門のこと恥だって言ったから怒っちゃった? 表情がないからわかりにくい。
「毒にゃんよ!」
一方、猫助は両腕をパタパタさせて花子さんに抗議してる。
手にする懐中電灯の灯りが、洞窟の壁でやかましく揺れて酔いそうになった。
「アレ大量に摂取したら、酩酊通り越して呼吸困にゃんで死んじゃうにゃん!」
「いいえ、猫助さん。マタタビで人は死にません」
………………。
「「マタタビッ? 毒ってマタタビかよ!」」
僕と望海ちゃん、双子みたいに見事なステレオかまし。
愕然とするのは当の猫助。
「はにゃん……マタタビで死にゃにゃいにゃんか?」
「ええ。猫助さんは猫科ではありませんから。人間にはむしろ滋養強壮になります」
「マジにゃんか?」
「そのようです。昔、旅人がその実を食べると、再び旅に出発できたので”マタタビ”と呼ばれた説があるくらいですから」
「はにゃ~あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
猫助の絶叫が洞窟内に反響する。
「道理であの時、元気みなぎってたにゃんな! てっきりあのままハイににゃってポックリ逝くと思ってたにゃんが」
さすがは猫助。
コイツのために一瞬でもブルーになった自分に腹が立つ。
望海ちゃんなんて怒りで壁蹴ってるし。
でも……。
猫助が死のうと思った事実は変わらない。勘違いで死ねなかっただけだ。
「どうして自殺なんてしようとしたんだ?」
「苛めにゃんよ。それも壮絶にゃ。生ゴミとか食べさせられたにゃん」
「……何でまた?」
「多分、この格好で学校に行ってたからにゃんな」
え……。
「そのヒゲも?」
「ヒゲも猫耳カチューシャもにゃん」
「そりゃ苛められるわ!」
だけども、僕と同じで猫助だって誰にも迷惑なんてかけてないんだ。
自分の価値観があって、それはたまたま人と違ってただけで……猫コス好きの動物性愛者ってだけで。
僕達は人間界で爪弾きにされた者同士だ。
平均的な集団の中に染まれないから……それでも生きてかなきゃならないから……ある意味、咲柚さんのおかげだな。
こうして、一つになろうとしてる。
でも、なれるかな?
本当の一つに……。
「拓海様」
「はい?」
「私の過去も話した方がいいでしょうか?」
あったまったレトルトカレーを片手鍋から取り出した花子さん、割れたレンズで僕を捉えてそう訊ねた。
ハタチを過ぎていまだにセーラー服を着てる花子さん。
この人も、いろんな歪みがありそうだな。
尤も、花子さん自身はそれを歪みだと感じてないだろうけどね。
「聞かせてください」
そのカレーのニオイに、毎日給仕してくれた横山さんの顔を思い出しながら、僕は花子さんにそうお願いした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる