ティッシュが足んない ~などとサキュバスの息子のムスコが意味不明な供述をしており~

よん

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第7章  勝算が足んない

勝算が足んない 4

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 統一……まさか、鮒寿司とミルクティーからこんな話の展開になるとはね。

 ……って! 
 
 それをこの僕がやるの? 嘘だろッ?

「驚いたか?」

 咲柚さんの質問に頷くことすらできない。話が壮大すぎて……。
 僕は宇宙服を着たメイドさんを見る。
 当然だけど、その表情は全くわからない。
 でも、その計画を知ってたのかな? それとも僕同様、今初めて聞かされた?

「拓海」
「う、うん……?」
「オマエは人間界を離れ、低級魔界へ行こうとしていた。……そうだな?」
「そうだけど」
「そこで何をしようとしていたのか言ってみろ」

 僕はチラリと花子さんを見た。その宇宙服の中身が花子さんだと仮定して。

「一昨日、花子さんに孤児院の下にあるダンジョンと、そこに隠されてる統治の王冠クラウンというアイテムの存在を教えてもらったんだ」
 
 花子さんの計画のことまでは話せない。
 何しろ、彼女は咲柚さんに黙ってダンジョンへ行こうとしてたんだから。

「……で?」

 左手で頬杖をつきながら続きを促す。

「その統治の王冠クラウンを手に入れて、混乱する低級魔界を鎮めようと思った。リップアーマーの材料が手に入りやすくなるために」
「それは誰の考えだ?」
「僕だよ」
「花子」

 咲柚さんが花子さんの方を向きもせず、名前を呼ぶ。

「……はい」

 心なしか、宇宙服が硬直してるように見える。

「拓海は……?」
 
 ……しまった! 見抜かれてる!

「違います。私が密かに計画していたことを、拓海様が私を庇ってそう仰ってくださったのです」

 白状しちゃった。つーか、僕が悪い!
 花子さんも今となっては正直に打ち明けるしかないだろう。

「密かに?」
「はい。私は我が姫――咲柚様のお手を煩わせたくないと思い、そのような策動並びに拓海様に入れ知恵したのでございます」
「出過ぎた真似……と言いたいところだが、安心しろ」

 うつむき加減だった花子さんの顎が上がる。

「どのみち拓海にそれをさせるつもりでいたから咎めたりはしない。そのために一度、低級魔界に慣れさせるためにも横山……それに結果としてオマエ達にも協力してもらったしな。要は拓海がティッシュマスターになって、スペル魔を召喚させるのを待っていたんだ」

 そのためのさっきゅんか。
 そして、彼女は咲柚さんに殺されてしまった。

「花子や猫助……それに、熊パンダ人間にもそこへ行ってもらおうと思っていた。拓海を補佐するためにな」

 熊パンダ人間。
 咲柚さんはあくまで望海ちゃんの名前を言わない。

「断っておくが、今回、あそこのゴミ共が人間排斥の動きをみせたからこうした行動に出るワケではない。元々、あのアイテムを拓海に手に入れてもらわなければ、私の統一計画は進まないからな。タイミング的にたまたまだったのだ。……時に熊パンダ人間、確認のために訊くが、実際にオマエがあの民芸品の店主を殺したのか?」
「殺してはいません」

 一番、僕に近い宇宙服がそう答えた。
 どんな声か期待してたけど、やっぱり安定のオッサンボイス。
 その装置いる? 僕、女の子の声だけじゃ勃たないぞ! 

 ……いや、きっと勃つけどさ、そこまで警戒しなくてもいいじゃん! どうせティッシュに消えるんだから。
 それに現時点の対象者――花子さん、猫助、熊パンダ人間は人を愛せない処女だ。
 ハーフ・インキュバスである僕が、彼女達で興奮することはまずない。
 
 僕は咲柚さんにそう抗議したかったけれど、彼女はそれどころじゃない。

「あの殺された男は、元々、組織の人間だったのだ。……拓海、花子からその組織の名前は聞いてるよな?」
「レイチェフ暗殺隊」
「その通り。つまり、私はあそこで姫だと呼ばれていながら、多くのゴミどもに命を狙われている。何故か? 理由は大きく二つある。まず一つ。私がリップアーマーを作って人間界を救い、結果的にあの世界を滅ぼそうとしている。私が魔王の娘であることなど連中にしてみれば関係ないのだ。まあ、当然だろうがな」

 難しいよな。
 人間が夢魔を追い払わないと、襲われた人間は魔界に引き込まれてしまう。
 リップアーマーで防御すれば人間は夢魔と接触する心配はなくなるものの、そうなれば半悪魔は誕生しなくなり将来的に低級魔界は滅びてしまう。……彼らは自力で子孫を残せないから。

「二つ目。私はこれまで数十人、ハーフ・インキュバスを殺してきた。ゆえに、ゴミどもにとってこの私は憎悪の対象でしかないのだ」


 咲柚さん……。


 アンタ、ガチで悪魔だな。
 殺しまくりじゃんか。


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