56 / 176
第7章 勝算が足んない
勝算が足んない 4
しおりを挟む
統一……まさか、鮒寿司とミルクティーからこんな話の展開になるとはね。
……って!
それをこの僕がやるの? 嘘だろッ?
「驚いたか?」
咲柚さんの質問に頷くことすらできない。話が壮大すぎて……。
僕は宇宙服を着たメイドさんを見る。
当然だけど、その表情は全くわからない。
でも、その計画を知ってたのかな? それとも僕同様、今初めて聞かされた?
「拓海」
「う、うん……?」
「オマエは人間界を離れ、低級魔界へ行こうとしていた。……そうだな?」
「そうだけど」
「そこで何をしようとしていたのか言ってみろ」
僕はチラリと花子さんを見た。その宇宙服の中身が花子さんだと仮定して。
「一昨日、花子さんに孤児院の下にあるダンジョンと、そこに隠されてる統治の王冠というアイテムの存在を教えてもらったんだ」
花子さんの計画のことまでは話せない。
何しろ、彼女は咲柚さんに黙ってダンジョンへ行こうとしてたんだから。
「……で?」
左手で頬杖をつきながら続きを促す。
「その統治の王冠を手に入れて、混乱する低級魔界を鎮めようと思った。リップアーマーの材料が手に入りやすくなるために」
「それは誰の考えだ?」
「僕だよ」
「花子」
咲柚さんが花子さんの方を向きもせず、名前を呼ぶ。
「……はい」
心なしか、宇宙服が硬直してるように見える。
「拓海はそう言っているが……?」
……しまった! 見抜かれてる!
「違います。私が密かに計画していたことを、拓海様が私を庇ってそう仰ってくださったのです」
白状しちゃった。つーか、僕が悪い!
花子さんも今となっては正直に打ち明けるしかないだろう。
「密かに?」
「はい。私は我が姫――咲柚様のお手を煩わせたくないと思い、そのような策動並びに拓海様に入れ知恵したのでございます」
「出過ぎた真似……と言いたいところだが、安心しろ」
俯き加減だった花子さんの顎が上がる。
「どのみち拓海にそれをさせるつもりでいたから咎めたりはしない。そのために一度、低級魔界に慣れさせるためにも横山……それに結果としてオマエ達にも協力してもらったしな。要は拓海がティッシュマスターになって、スペル魔を召喚させるのを待っていたんだ」
そのためのさっきゅんか。
そして、彼女は咲柚さんに殺されてしまった。
「花子や猫助……それに、熊パンダ人間にもそこへ行ってもらおうと思っていた。拓海を補佐するためにな」
熊パンダ人間。
咲柚さんはあくまで望海ちゃんの名前を言わない。
「断っておくが、今回、あそこのゴミ共が人間排斥の動きをみせたからこうした行動に出るワケではない。元々、あのアイテムを拓海に手に入れてもらわなければ、私の統一計画は進まないからな。タイミング的にたまたまだったのだ。……時に熊パンダ人間、確認のために訊くが、実際にオマエがあの民芸品の店主を殺したのか?」
「殺してはいません」
一番、僕に近い宇宙服がそう答えた。
どんな声か期待してたけど、やっぱり安定のオッサンボイス。
その装置いる? 僕、女の子の声だけじゃ勃たないぞ!
……いや、きっと勃つけどさ、そこまで警戒しなくてもいいじゃん! どうせティッシュに消えるんだから。
それに現時点の対象者――花子さん、猫助、熊パンダ人間は人を愛せない処女だ。
ハーフ・インキュバスである僕が、彼女達で興奮することはまずない。
僕は咲柚さんにそう抗議したかったけれど、彼女はそれどころじゃない。
「あの殺された男は、元々、組織の人間だったのだ。……拓海、花子からその組織の名前は聞いてるよな?」
「レイチェフ暗殺隊」
「その通り。つまり、私はあそこで姫だと呼ばれていながら、多くのゴミどもに命を狙われている。何故か? 理由は大きく二つある。まず一つ。私がリップアーマーを作って人間界を救い、結果的にあの世界を滅ぼそうとしている。私が魔王の娘であることなど連中にしてみれば関係ないのだ。まあ、当然だろうがな」
難しいよな。
人間が夢魔を追い払わないと、襲われた人間は魔界に引き込まれてしまう。
リップアーマーで防御すれば人間は夢魔と接触する心配はなくなるものの、そうなれば半悪魔は誕生しなくなり将来的に低級魔界は滅びてしまう。……彼らは自力で子孫を残せないから。
「二つ目。私はこれまで数十人、ハーフ・インキュバスを殺してきた。ゆえに、ゴミどもにとってこの私は憎悪の対象でしかないのだ」
咲柚さん……。
アンタ、ガチで悪魔だな。
殺しまくりじゃんか。
……って!
それをこの僕がやるの? 嘘だろッ?
「驚いたか?」
咲柚さんの質問に頷くことすらできない。話が壮大すぎて……。
僕は宇宙服を着たメイドさんを見る。
当然だけど、その表情は全くわからない。
でも、その計画を知ってたのかな? それとも僕同様、今初めて聞かされた?
「拓海」
「う、うん……?」
「オマエは人間界を離れ、低級魔界へ行こうとしていた。……そうだな?」
「そうだけど」
「そこで何をしようとしていたのか言ってみろ」
僕はチラリと花子さんを見た。その宇宙服の中身が花子さんだと仮定して。
「一昨日、花子さんに孤児院の下にあるダンジョンと、そこに隠されてる統治の王冠というアイテムの存在を教えてもらったんだ」
花子さんの計画のことまでは話せない。
何しろ、彼女は咲柚さんに黙ってダンジョンへ行こうとしてたんだから。
「……で?」
左手で頬杖をつきながら続きを促す。
「その統治の王冠を手に入れて、混乱する低級魔界を鎮めようと思った。リップアーマーの材料が手に入りやすくなるために」
「それは誰の考えだ?」
「僕だよ」
「花子」
咲柚さんが花子さんの方を向きもせず、名前を呼ぶ。
「……はい」
心なしか、宇宙服が硬直してるように見える。
「拓海はそう言っているが……?」
……しまった! 見抜かれてる!
「違います。私が密かに計画していたことを、拓海様が私を庇ってそう仰ってくださったのです」
白状しちゃった。つーか、僕が悪い!
花子さんも今となっては正直に打ち明けるしかないだろう。
「密かに?」
「はい。私は我が姫――咲柚様のお手を煩わせたくないと思い、そのような策動並びに拓海様に入れ知恵したのでございます」
「出過ぎた真似……と言いたいところだが、安心しろ」
俯き加減だった花子さんの顎が上がる。
「どのみち拓海にそれをさせるつもりでいたから咎めたりはしない。そのために一度、低級魔界に慣れさせるためにも横山……それに結果としてオマエ達にも協力してもらったしな。要は拓海がティッシュマスターになって、スペル魔を召喚させるのを待っていたんだ」
そのためのさっきゅんか。
そして、彼女は咲柚さんに殺されてしまった。
「花子や猫助……それに、熊パンダ人間にもそこへ行ってもらおうと思っていた。拓海を補佐するためにな」
熊パンダ人間。
咲柚さんはあくまで望海ちゃんの名前を言わない。
「断っておくが、今回、あそこのゴミ共が人間排斥の動きをみせたからこうした行動に出るワケではない。元々、あのアイテムを拓海に手に入れてもらわなければ、私の統一計画は進まないからな。タイミング的にたまたまだったのだ。……時に熊パンダ人間、確認のために訊くが、実際にオマエがあの民芸品の店主を殺したのか?」
「殺してはいません」
一番、僕に近い宇宙服がそう答えた。
どんな声か期待してたけど、やっぱり安定のオッサンボイス。
その装置いる? 僕、女の子の声だけじゃ勃たないぞ!
……いや、きっと勃つけどさ、そこまで警戒しなくてもいいじゃん! どうせティッシュに消えるんだから。
それに現時点の対象者――花子さん、猫助、熊パンダ人間は人を愛せない処女だ。
ハーフ・インキュバスである僕が、彼女達で興奮することはまずない。
僕は咲柚さんにそう抗議したかったけれど、彼女はそれどころじゃない。
「あの殺された男は、元々、組織の人間だったのだ。……拓海、花子からその組織の名前は聞いてるよな?」
「レイチェフ暗殺隊」
「その通り。つまり、私はあそこで姫だと呼ばれていながら、多くのゴミどもに命を狙われている。何故か? 理由は大きく二つある。まず一つ。私がリップアーマーを作って人間界を救い、結果的にあの世界を滅ぼそうとしている。私が魔王の娘であることなど連中にしてみれば関係ないのだ。まあ、当然だろうがな」
難しいよな。
人間が夢魔を追い払わないと、襲われた人間は魔界に引き込まれてしまう。
リップアーマーで防御すれば人間は夢魔と接触する心配はなくなるものの、そうなれば半悪魔は誕生しなくなり将来的に低級魔界は滅びてしまう。……彼らは自力で子孫を残せないから。
「二つ目。私はこれまで数十人、ハーフ・インキュバスを殺してきた。ゆえに、ゴミどもにとってこの私は憎悪の対象でしかないのだ」
咲柚さん……。
アンタ、ガチで悪魔だな。
殺しまくりじゃんか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる