251 / 1,060
Side View Story 06
13 Side 唯 01話
しおりを挟む
っていうかこの人、何日ここに居座るつもりなんだろう……。今日ですでに二日目だ。
「ちょっと、秋斗さん……」
「んー?」
ソファに横になり険呑な返事を寄こす男は俺の上司――俺を捕獲してまんまと会社で働かせている男、藤宮秋斗二十五歳。
えっらい人目を引く容姿にとてつもない頭脳を誇り、この俺を使いたい放題使っては社会ってものに貢献させてしまっている信じられない人。
一緒に歩いていて女に声をかけられなかったためしがない。いや、俺ひとりで歩いていても声はかけられるんだけど……。
その男はさっきから携帯を充電器に繋げたまま何やらモバイル操作を駆使している。
「何、連日居座ってんですか……。暇なら仕事手伝ってください」
俺の仮住まいはウィステリアホテルの一室。三十九階フロアの片隅にある二十畳ほどの部屋があてがわれている。
ここは俺の住居兼職場みたいなもの。
日中、必要なときはホテルのバックヤードにも下りるけど、基本はオーナーの直轄――メインコンピューター近くで仕事をしていることが多い。
住民票上では藤宮警備の社宅に住んでいることになっているけれど、実質俺はそんなところに住んではいないわけで……。
郵便物関連はそっちへ行かず、ウィステリアホテルのフロントに届くと澤村さん経由で俺のもとへ届けられる。
「囲われてる」って意味じゃ数年前とそう変わりはないけれど、この俺がまともに働いているっていうのは雲泥の差だ。
俺の前職はヒモ。そして時々依頼がくるハッカーでありクラッカー。
要はその日暮らしをしていたわけだ。
だのに、藤宮警備にハッキングを仕掛けたらまんまと捕獲された。
ハッキングを仕掛けている際の駆け引きはなかなか楽しかった。
こんなに手ごたえがあったためしなんてなかったし。
けど、どうにも掻い潜れなかったため、逃げようとその場を離れようとしたとき――
間借りしていた女の家のドアを開けたらいたんだ。目の前に。
「君、うちに来ない? 俺のもとで働くのと、今から警察に余罪証拠付きで突き出されるのとどっちがいい?」
イケメンヤローはあり得ないくらい嬉しそうな顔で笑ってた。
信じられなかった。自分と攻防をしながらその住所を割り出して尋ねて来るやつなんて。
そのとき、後ろに控えていたのが蔵元さん。
今なら容易に想像ができる。
俺と攻防している間に所在地を突き止めたのは秋斗さんだろうけれど、その攻防中の人間をそこまで運んできたのは蔵元さんだと……。
だって、そのときこの人台車に乗せられてたし。
俺、一生の不覚――
俺は叩けばホコリだらけの人間で、それでもやっぱり警察なんてとこにはご厄介になりたくなく、仕方がないからおとなしくこの人の下で働くことにした。
……というのが今までの経緯。
今でもそのときの話が話題になる。そのたびにこの人は、
「何言ってるの? 立派なヘッドハンティングだよ」
などと言うのだからどうにかしてほしい。
どこの会社に女の部屋でハッキング仕掛けている人間をヘッドハンティングしにくる人間がいるんだか……(しかも台車に乗って)。
本当、いつも思うけど、絶対に思考回路がおかしいと思う。間違いなく変人。
人生でこんなに働く羽目になるとは思ってもみなかった。
確かにそれなりの報酬はもらっているけれど、それ以上に働かされている気がしなくもない。
でも、現状をさほど嫌とも思っていない自分がいたりして……。
それはひとえにこの男の仕業としか言いようがない。
そんな頭の切れる色男が俺の部屋に連泊とは何事か――
この人は気が向いたときにここへ来るくらいで、たいてはこっちが断われないのを知っていて、電話やメールで容赦ない用件を振ってくるか呼びつけるか、だ。
あんたが呼び出せば女のひとりやふたり、どうとでもなるだろうに。何が楽しくて俺の部屋に居ついてるんだか……。
「ねー……ここにいること蔵元さん知ってるんですか?」
蔵元森、三十一歳独身。藤宮秋斗の第一秘書。
俺の同士というか、一応上司というか、飲み友達っていうか、愚痴たれ仲間っていうか、それ以上に恩義のある人だったりする。
捕獲された俺の身元引受人を買って出てくれたのが蔵元さんだった。
そう、俺の住所は即ち蔵元さんが暮らす社宅の住所と同じなのだ。
「蔵元ー? 知ってるかもしれないし知らないかもしれない」
「仕事丸投げしてきたんじゃないでしょうね? 次に会ったときに蔵元さんが老けてたら秋斗さんのせいってことで……」
「俺、使えるものは使う主義なんだ」
……しょうがない大人。
「で? 何があったんですか?」
「若槻ー……俺、九歳も下の女の子にことごとく振られたんだけど」
「――マジでっ!?」
「超マジ。っていうかあり得ないでしょ。将来有望の男を振るとか。しかも俺のこと好きなのに」
思い当たるのは、先日一目二目見た程度の女の子。
「御園生翠葉、リメラルド嬢?」
「そう。リメラルド姫は難攻不落の姫君でしてね……。雅に邪魔されたわ」
「あぁ、あの女ね」
それにしても少し意外だ。
「あの子、かわいいですよね。見た目が」
「……手ぇ出すなよ」
じろりとこっちを見た目が本気すぎて怖かった。
あなた知ってるでしょ。俺が年上専門なの。年下なんて真っ平ごめんだ。
「ていうか、見た目どころか中身もいい子だよ」
ふーん……。この人にそんなふうに言わせる子、ねぇ……。
事実、俺はその子が関わるプロジェクトの仕掛けにかかりっきりで、もう一ヶ月近く働きづめだ。
それはこのホテルのオーナー、要は派遣先の上司にこき使われて……といったところ。
俺がここで働かされるようになってから、こんな大掛かりのプロジェクトを任されたことはない。
その規模からしてもかなりのものだ。
……というよりは、パレスガーデンを会長の誕生日に合わせてオープンしようと企んでいるオーナーの目論見が驀進中。
その中に彼女の写真ってカテゴリが増えただけのはずなのに、どうも納得がいかない。
これを機に、彼女を売り出す方向性まで組まれているのだ。
間違いなく、オーナーはあの子を世に担ぎ出す用意を着々と進めている(俺を使って)。
突如携帯が鳴った。
『俺だけど、そこに秋斗様いたりしないか?』
電話の主は蔵元さんだった。
「いますよー。ただいま失恋中にて使い物にはなりそうにありませんが」
横目で見ると、まだ上司殿はソファでだれていた。
『やっぱ唯のところだったか……。今から行く。悪いけど、今日はそこで仕事させて』
即行で通話が切られた。
咄嗟にここへ連絡してくるあたりが蔵元さんだろう。
「蔵元さん、今からここに来るって言ってました」
「鬼」
誰がだ……。
「それまで暇なんでしょ? なら、これ手伝ってください」
嫌そうな顔をしながらも、差し出した資料に目を通し始める。
「……これ、リメラルドの売り込み戦術か何か?」
「そうですよ。あのお姫さんの宣伝ってものも俺の仕事に組み込まれているようなので……。嫌んなるほど仕掛けまくってます」
「ふーん……そういうことなら手伝う。どれ使っていいの?」
秋斗さんは五台並ぶパソコンに目を移す。
「スペックは変わらないんで……そうですね、中身空いてるのは端の一台です」
俺が窓際のパソコンを指すと、だるそうに身体を起こし資料と一緒にパソコンの前へ移動した。
若干だけど、機嫌回復気味だろうか。
パソコンを起動させたあとの仕事はえらい速かった。
途中で確認が入るものの、要所要所の確認に留まる。
そもそも、俺を社会で通用するまでに育ててくれたのがこの人だし、俺にできてこの人にできないものがあるわけがない。
「へぇ……八月からお得意さんにはDMが配信されるんだ。十月には紙面広告が出て十一月からCMね。で、十二月にはプレパーティーか。これじゃ碧さんも零樹さんも家に帰れないわけだ」
「御園生夫婦と面識あるんですか?」
御園生夫妻はその建物の建築やインテリア部門で活躍している。
ふたりとも仕事にかける情熱は計り知れず、すごく容赦のない人たちにも関わらず、周りが一丸となって進んでいるというプロジェクトチーム。裏では特攻Aチームなどと呼ばれている。
「お姫様のご両親ですからね。ま、これはこれで楽しみか……。あ、ってことはこっちにも仕事が振られるのか?」
「今、蔵元さんが交通整理してるのってそのあたりの仕事だと思うのですが……」
「またセキュリティ関連の開発かなぁ……」
面倒臭そうに話す上司に、
「夜、女でも引っ掛けに行きますか?」
「やめとく」
即答に目を瞠る。
「俺、今のところは彼女一筋だから。彼女以外の女とは一切やるつもりない」
どこか自嘲気味に笑った。
「あなた、藤宮秋斗さんですか? もしくはそっくりさんとか?」
「……そう思われても仕方ないか。俺、あっちの携帯は解約したんだ」
パソコンに向かって高速で打ち込みをしつつ、なんでもないことのように話す。
「それはつまり……本気の相手ができたってことになります?」
「なるねぇ……お嫁さんに欲しいくらい。結婚を真面目に考えるくらいの相手だよ」
なるほどね。その相手に振られたと……。
「でも、さっきの話だとお姫さん、秋斗さんのこと好きなんでしょ? どうして振られるなんてことに?」
「だから、雅に邪魔されたって」
明らかに苛立っていた。
「彼女が傷つくことを並べ立ててどん底に突き落としてくれたんだ。で、彼女は俺の隣に並ぶ資格はないと思ってる。……素直すぎるのもここまでくると重症だ」
「……すっげー新鮮なんですけど」
「……若槻、今からおまえを売り飛ばしてもいいんだけど?」
超絶笑顔。怖えええっ。
「っつか、それだけは勘弁してください」
とりあえずこのまま放置だ、放置っ。蔵元さんが来たらどうにかしてくれるだろう。
昼を回るころには蔵元さんが尋ねてきた。
「秋斗様、お願いですから所在くらいはわかるようにしておいてください」
「でもわかるだろ? 俺の行動範囲なんて高が知れてる」
悪びれもせず答えるから性質が悪い。
「……わかりますが、これ、本日中に片付けていただかないと困るものです」
「今若槻の仕事手伝ってるから無理。蔵元やっておいて」
「できるものならやらせていただきますが、無理ですから。秋斗様がやらないなら唯にやらせますが?」
「あぁ、それでもかまわないよ」
ふざけんなっ!
仕事のウェイトを考えてもの言いやがれ……。
「唯、おまえ真面目に本社に戻らないか?」
すごく切実そうな蔵元さんの言葉。
実は一ヶ月くらい前からずっと打診されている。が、ここにいるのは俺の意思じゃないんだよね――
「ちょっと、秋斗さん……」
「んー?」
ソファに横になり険呑な返事を寄こす男は俺の上司――俺を捕獲してまんまと会社で働かせている男、藤宮秋斗二十五歳。
えっらい人目を引く容姿にとてつもない頭脳を誇り、この俺を使いたい放題使っては社会ってものに貢献させてしまっている信じられない人。
一緒に歩いていて女に声をかけられなかったためしがない。いや、俺ひとりで歩いていても声はかけられるんだけど……。
その男はさっきから携帯を充電器に繋げたまま何やらモバイル操作を駆使している。
「何、連日居座ってんですか……。暇なら仕事手伝ってください」
俺の仮住まいはウィステリアホテルの一室。三十九階フロアの片隅にある二十畳ほどの部屋があてがわれている。
ここは俺の住居兼職場みたいなもの。
日中、必要なときはホテルのバックヤードにも下りるけど、基本はオーナーの直轄――メインコンピューター近くで仕事をしていることが多い。
住民票上では藤宮警備の社宅に住んでいることになっているけれど、実質俺はそんなところに住んではいないわけで……。
郵便物関連はそっちへ行かず、ウィステリアホテルのフロントに届くと澤村さん経由で俺のもとへ届けられる。
「囲われてる」って意味じゃ数年前とそう変わりはないけれど、この俺がまともに働いているっていうのは雲泥の差だ。
俺の前職はヒモ。そして時々依頼がくるハッカーでありクラッカー。
要はその日暮らしをしていたわけだ。
だのに、藤宮警備にハッキングを仕掛けたらまんまと捕獲された。
ハッキングを仕掛けている際の駆け引きはなかなか楽しかった。
こんなに手ごたえがあったためしなんてなかったし。
けど、どうにも掻い潜れなかったため、逃げようとその場を離れようとしたとき――
間借りしていた女の家のドアを開けたらいたんだ。目の前に。
「君、うちに来ない? 俺のもとで働くのと、今から警察に余罪証拠付きで突き出されるのとどっちがいい?」
イケメンヤローはあり得ないくらい嬉しそうな顔で笑ってた。
信じられなかった。自分と攻防をしながらその住所を割り出して尋ねて来るやつなんて。
そのとき、後ろに控えていたのが蔵元さん。
今なら容易に想像ができる。
俺と攻防している間に所在地を突き止めたのは秋斗さんだろうけれど、その攻防中の人間をそこまで運んできたのは蔵元さんだと……。
だって、そのときこの人台車に乗せられてたし。
俺、一生の不覚――
俺は叩けばホコリだらけの人間で、それでもやっぱり警察なんてとこにはご厄介になりたくなく、仕方がないからおとなしくこの人の下で働くことにした。
……というのが今までの経緯。
今でもそのときの話が話題になる。そのたびにこの人は、
「何言ってるの? 立派なヘッドハンティングだよ」
などと言うのだからどうにかしてほしい。
どこの会社に女の部屋でハッキング仕掛けている人間をヘッドハンティングしにくる人間がいるんだか……(しかも台車に乗って)。
本当、いつも思うけど、絶対に思考回路がおかしいと思う。間違いなく変人。
人生でこんなに働く羽目になるとは思ってもみなかった。
確かにそれなりの報酬はもらっているけれど、それ以上に働かされている気がしなくもない。
でも、現状をさほど嫌とも思っていない自分がいたりして……。
それはひとえにこの男の仕業としか言いようがない。
そんな頭の切れる色男が俺の部屋に連泊とは何事か――
この人は気が向いたときにここへ来るくらいで、たいてはこっちが断われないのを知っていて、電話やメールで容赦ない用件を振ってくるか呼びつけるか、だ。
あんたが呼び出せば女のひとりやふたり、どうとでもなるだろうに。何が楽しくて俺の部屋に居ついてるんだか……。
「ねー……ここにいること蔵元さん知ってるんですか?」
蔵元森、三十一歳独身。藤宮秋斗の第一秘書。
俺の同士というか、一応上司というか、飲み友達っていうか、愚痴たれ仲間っていうか、それ以上に恩義のある人だったりする。
捕獲された俺の身元引受人を買って出てくれたのが蔵元さんだった。
そう、俺の住所は即ち蔵元さんが暮らす社宅の住所と同じなのだ。
「蔵元ー? 知ってるかもしれないし知らないかもしれない」
「仕事丸投げしてきたんじゃないでしょうね? 次に会ったときに蔵元さんが老けてたら秋斗さんのせいってことで……」
「俺、使えるものは使う主義なんだ」
……しょうがない大人。
「で? 何があったんですか?」
「若槻ー……俺、九歳も下の女の子にことごとく振られたんだけど」
「――マジでっ!?」
「超マジ。っていうかあり得ないでしょ。将来有望の男を振るとか。しかも俺のこと好きなのに」
思い当たるのは、先日一目二目見た程度の女の子。
「御園生翠葉、リメラルド嬢?」
「そう。リメラルド姫は難攻不落の姫君でしてね……。雅に邪魔されたわ」
「あぁ、あの女ね」
それにしても少し意外だ。
「あの子、かわいいですよね。見た目が」
「……手ぇ出すなよ」
じろりとこっちを見た目が本気すぎて怖かった。
あなた知ってるでしょ。俺が年上専門なの。年下なんて真っ平ごめんだ。
「ていうか、見た目どころか中身もいい子だよ」
ふーん……。この人にそんなふうに言わせる子、ねぇ……。
事実、俺はその子が関わるプロジェクトの仕掛けにかかりっきりで、もう一ヶ月近く働きづめだ。
それはこのホテルのオーナー、要は派遣先の上司にこき使われて……といったところ。
俺がここで働かされるようになってから、こんな大掛かりのプロジェクトを任されたことはない。
その規模からしてもかなりのものだ。
……というよりは、パレスガーデンを会長の誕生日に合わせてオープンしようと企んでいるオーナーの目論見が驀進中。
その中に彼女の写真ってカテゴリが増えただけのはずなのに、どうも納得がいかない。
これを機に、彼女を売り出す方向性まで組まれているのだ。
間違いなく、オーナーはあの子を世に担ぎ出す用意を着々と進めている(俺を使って)。
突如携帯が鳴った。
『俺だけど、そこに秋斗様いたりしないか?』
電話の主は蔵元さんだった。
「いますよー。ただいま失恋中にて使い物にはなりそうにありませんが」
横目で見ると、まだ上司殿はソファでだれていた。
『やっぱ唯のところだったか……。今から行く。悪いけど、今日はそこで仕事させて』
即行で通話が切られた。
咄嗟にここへ連絡してくるあたりが蔵元さんだろう。
「蔵元さん、今からここに来るって言ってました」
「鬼」
誰がだ……。
「それまで暇なんでしょ? なら、これ手伝ってください」
嫌そうな顔をしながらも、差し出した資料に目を通し始める。
「……これ、リメラルドの売り込み戦術か何か?」
「そうですよ。あのお姫さんの宣伝ってものも俺の仕事に組み込まれているようなので……。嫌んなるほど仕掛けまくってます」
「ふーん……そういうことなら手伝う。どれ使っていいの?」
秋斗さんは五台並ぶパソコンに目を移す。
「スペックは変わらないんで……そうですね、中身空いてるのは端の一台です」
俺が窓際のパソコンを指すと、だるそうに身体を起こし資料と一緒にパソコンの前へ移動した。
若干だけど、機嫌回復気味だろうか。
パソコンを起動させたあとの仕事はえらい速かった。
途中で確認が入るものの、要所要所の確認に留まる。
そもそも、俺を社会で通用するまでに育ててくれたのがこの人だし、俺にできてこの人にできないものがあるわけがない。
「へぇ……八月からお得意さんにはDMが配信されるんだ。十月には紙面広告が出て十一月からCMね。で、十二月にはプレパーティーか。これじゃ碧さんも零樹さんも家に帰れないわけだ」
「御園生夫婦と面識あるんですか?」
御園生夫妻はその建物の建築やインテリア部門で活躍している。
ふたりとも仕事にかける情熱は計り知れず、すごく容赦のない人たちにも関わらず、周りが一丸となって進んでいるというプロジェクトチーム。裏では特攻Aチームなどと呼ばれている。
「お姫様のご両親ですからね。ま、これはこれで楽しみか……。あ、ってことはこっちにも仕事が振られるのか?」
「今、蔵元さんが交通整理してるのってそのあたりの仕事だと思うのですが……」
「またセキュリティ関連の開発かなぁ……」
面倒臭そうに話す上司に、
「夜、女でも引っ掛けに行きますか?」
「やめとく」
即答に目を瞠る。
「俺、今のところは彼女一筋だから。彼女以外の女とは一切やるつもりない」
どこか自嘲気味に笑った。
「あなた、藤宮秋斗さんですか? もしくはそっくりさんとか?」
「……そう思われても仕方ないか。俺、あっちの携帯は解約したんだ」
パソコンに向かって高速で打ち込みをしつつ、なんでもないことのように話す。
「それはつまり……本気の相手ができたってことになります?」
「なるねぇ……お嫁さんに欲しいくらい。結婚を真面目に考えるくらいの相手だよ」
なるほどね。その相手に振られたと……。
「でも、さっきの話だとお姫さん、秋斗さんのこと好きなんでしょ? どうして振られるなんてことに?」
「だから、雅に邪魔されたって」
明らかに苛立っていた。
「彼女が傷つくことを並べ立ててどん底に突き落としてくれたんだ。で、彼女は俺の隣に並ぶ資格はないと思ってる。……素直すぎるのもここまでくると重症だ」
「……すっげー新鮮なんですけど」
「……若槻、今からおまえを売り飛ばしてもいいんだけど?」
超絶笑顔。怖えええっ。
「っつか、それだけは勘弁してください」
とりあえずこのまま放置だ、放置っ。蔵元さんが来たらどうにかしてくれるだろう。
昼を回るころには蔵元さんが尋ねてきた。
「秋斗様、お願いですから所在くらいはわかるようにしておいてください」
「でもわかるだろ? 俺の行動範囲なんて高が知れてる」
悪びれもせず答えるから性質が悪い。
「……わかりますが、これ、本日中に片付けていただかないと困るものです」
「今若槻の仕事手伝ってるから無理。蔵元やっておいて」
「できるものならやらせていただきますが、無理ですから。秋斗様がやらないなら唯にやらせますが?」
「あぁ、それでもかまわないよ」
ふざけんなっ!
仕事のウェイトを考えてもの言いやがれ……。
「唯、おまえ真面目に本社に戻らないか?」
すごく切実そうな蔵元さんの言葉。
実は一ヶ月くらい前からずっと打診されている。が、ここにいるのは俺の意思じゃないんだよね――
5
あなたにおすすめの小説
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる