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4章 花ひらく
50話 スイートルーム
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次の日、起きるといつもとは違う天井に晴柊は寝起きから思考を巡らせた。肌触りの良いバスローブを着せられ、晴柊はいつもの寝室とは違うベッドにいることに気付いた。少しずつ記憶をすり合わせていく。晴柊は酔っぱらっても記憶を忘れないタチだったらしく、全てを鮮明に思い出した。まるで自分とは思いたくない言動や行動を連発していたことに、すぐに耐えられなくなると、勢いよく起き上がった。
僅かな身体のダルさに声を上げそうになったが、隣では琳太郎が眠っている。時計を確認すると、時刻はまだ朝の6時であった。昨日は何時まで致していたかは覚えていないが、晴柊も琳太郎もいつもと違うお互いの姿に大分盛り上がりを見せていた。
愛園の手配したホテルでセキュリティが確保されていると言えど外であることには違いなく、きっと外に誰か見張りを付けているはずだと、晴柊はゆっくりとベッドから降りると、そのままそっとドアの方に向かった。改めて部屋をゆっくりと見ると、何もかもがゴージャスな造りで晴柊は落ち着かなかった。
ドアスコープから外を覗く。すると、明るい短めの金色の髪が見えた。
「天童さん…」
ドアを軽くノックしてからゆっくりと開けた。そこには天童が立っていた。
「おっ。起きたのか。組長は?」
「まだ寝てる。」
「ほら、これ着替え。昨日は美味しいもん食べられたか?そういえば、晴柊、約束破って酒飲んだんだって?シノと琉生はそれで随分しけたツラしてたな。組長の約束破るなんて、さすがだなぁ。」
天童が揶揄うように晴柊に服が入っているであろう袋を渡しながら笑った。まるで凄い凄いと褒めるように頭をわしゃわしゃと撫でられる。天童の大きな手は思いのほか強い力で晴柊の髪を乱すので、晴柊はわ、と声を漏らしながらそれを受け止めた。
「お、お酒なんてわからなかったんだもん…」
「はは、まぁ楽しんだもんがちよ。二日酔いも無さそうだしな。まだゆっくりしてていいぞ。」
天童は晴柊の体調も心配していたが、二日酔いは無さそうな様子に安堵するとせっかくのスイートルームを堪能させようと部屋へと戻した。天童は根っからの兄気質で、晴柊のことは弟の様に可愛がっていた。
琳太郎の今日のスケジュールはわからないが、天童がまだゆっくりしてていいと言うことは余裕があるのだろう。晴柊はスイートルームの広い部屋を探検し始めた。お風呂場は扉もガラスで中からも外からも丸見えである。琳太郎の家より大きなバスタブが目に付く。そしてシャワーの形が晴柊には見たことがない形をしていた。散乱しているバスタオルを見るに、きっと昨日一度入っているのだろう。記憶を飛ばしていないとは言っても、酒による記憶は全てあるだけであって、事後に意識を飛ばしたのであろうと晴柊は合点が行った。
琳太郎は絶倫なので琳太郎が満足するより晴柊の体力に限界がくる。晴柊が意識を保ったまま事後を終えたことの方が少ないのではないか?と思わせるほどである。せっかくだから晴柊もピロートークやシャワーを一緒に楽しみたいという思いはあるので、今度から少し加減してもらうよう頼もうと思うのだった。
ベロア生地のソファに腰掛けると、昨日のことを思い出していた。昨日は確かに楽しかった。遊馬や篠ケ谷には悪いことをしたが、ウィリアムと知り合えたことは晴柊にとって何よりも嬉しいことだった。こうなる以前からも、友達という友達を作れたことはなかった晴柊にとって、ウィリアムは初めて対等に気兼ねなく喋ってくれた相手だった。また会いたいなぁ、と天井からぶら下がる豪華なシャンデリアを見ながら思っていると、寝室から琳太郎が出てきた。
「おはよう~。」
「勝手に傍からいなくなるな。」
琳太郎はソファに座る晴柊を抱き上げると、自分が先に座りその上に晴柊を乗せた。晴柊は琳太郎の膝に座り向かい合うような形になる。昨日この体勢でセックスしていたことを思い出し、晴柊は少し恥ずかしくなった。
「その様子だと、記憶は飛んでないみたいだな。」
「ご、ご迷惑をお掛けしました…」
「別に?言いつけ破ったのは問題だが、まぁプラマイゼロだな。昨日のお前はいつも以上にやらしかった。またしよう。」
晴柊はかぁっと顔を赤くさせると、勘弁して、というように琳太郎の首元に顔を隠すようにうずめた。
「…楽しかったか?」
「あ、う、うん……ご馳走だったし、ウィルと話せた…」
「そうか。」
琳太郎はそれだけ言うと、晴柊の顔を離させて少し自分より高い位置にある晴柊の額にキスを落とした。監禁生活は終わったとは言っても、実質続行中と言われても文句は言えないほど晴柊を不自由にさせていることにどうにかしてやりたいと思っていた琳太郎は、晴柊が気分転換できでいたようで安心していた。ヤクザの傍にいるという不自由な環境を受け入れてくれた晴柊に、少しでも楽しませてあげられたらという思いが琳太郎にはあった。
しかし、同時に他者からの視線を浴びる晴柊を見て、やはり人の目の触れないところにしまっておきたいという気持ちもあることを再確認したのだった。
「せっかくだし、ルームサービスでも頼むか。好きなだけ頼め。」
「え、いいの?やったぁ~!」
晴柊に琳太郎がメニュー表を渡した。おしゃれな字体と無駄のないデザイン、そして見慣れない料理名の羅列に晴柊は首を傾げ凝視していた。その様子を、琳太郎は愛おしそうに見つめるのだった。
僅かな身体のダルさに声を上げそうになったが、隣では琳太郎が眠っている。時計を確認すると、時刻はまだ朝の6時であった。昨日は何時まで致していたかは覚えていないが、晴柊も琳太郎もいつもと違うお互いの姿に大分盛り上がりを見せていた。
愛園の手配したホテルでセキュリティが確保されていると言えど外であることには違いなく、きっと外に誰か見張りを付けているはずだと、晴柊はゆっくりとベッドから降りると、そのままそっとドアの方に向かった。改めて部屋をゆっくりと見ると、何もかもがゴージャスな造りで晴柊は落ち着かなかった。
ドアスコープから外を覗く。すると、明るい短めの金色の髪が見えた。
「天童さん…」
ドアを軽くノックしてからゆっくりと開けた。そこには天童が立っていた。
「おっ。起きたのか。組長は?」
「まだ寝てる。」
「ほら、これ着替え。昨日は美味しいもん食べられたか?そういえば、晴柊、約束破って酒飲んだんだって?シノと琉生はそれで随分しけたツラしてたな。組長の約束破るなんて、さすがだなぁ。」
天童が揶揄うように晴柊に服が入っているであろう袋を渡しながら笑った。まるで凄い凄いと褒めるように頭をわしゃわしゃと撫でられる。天童の大きな手は思いのほか強い力で晴柊の髪を乱すので、晴柊はわ、と声を漏らしながらそれを受け止めた。
「お、お酒なんてわからなかったんだもん…」
「はは、まぁ楽しんだもんがちよ。二日酔いも無さそうだしな。まだゆっくりしてていいぞ。」
天童は晴柊の体調も心配していたが、二日酔いは無さそうな様子に安堵するとせっかくのスイートルームを堪能させようと部屋へと戻した。天童は根っからの兄気質で、晴柊のことは弟の様に可愛がっていた。
琳太郎の今日のスケジュールはわからないが、天童がまだゆっくりしてていいと言うことは余裕があるのだろう。晴柊はスイートルームの広い部屋を探検し始めた。お風呂場は扉もガラスで中からも外からも丸見えである。琳太郎の家より大きなバスタブが目に付く。そしてシャワーの形が晴柊には見たことがない形をしていた。散乱しているバスタオルを見るに、きっと昨日一度入っているのだろう。記憶を飛ばしていないとは言っても、酒による記憶は全てあるだけであって、事後に意識を飛ばしたのであろうと晴柊は合点が行った。
琳太郎は絶倫なので琳太郎が満足するより晴柊の体力に限界がくる。晴柊が意識を保ったまま事後を終えたことの方が少ないのではないか?と思わせるほどである。せっかくだから晴柊もピロートークやシャワーを一緒に楽しみたいという思いはあるので、今度から少し加減してもらうよう頼もうと思うのだった。
ベロア生地のソファに腰掛けると、昨日のことを思い出していた。昨日は確かに楽しかった。遊馬や篠ケ谷には悪いことをしたが、ウィリアムと知り合えたことは晴柊にとって何よりも嬉しいことだった。こうなる以前からも、友達という友達を作れたことはなかった晴柊にとって、ウィリアムは初めて対等に気兼ねなく喋ってくれた相手だった。また会いたいなぁ、と天井からぶら下がる豪華なシャンデリアを見ながら思っていると、寝室から琳太郎が出てきた。
「おはよう~。」
「勝手に傍からいなくなるな。」
琳太郎はソファに座る晴柊を抱き上げると、自分が先に座りその上に晴柊を乗せた。晴柊は琳太郎の膝に座り向かい合うような形になる。昨日この体勢でセックスしていたことを思い出し、晴柊は少し恥ずかしくなった。
「その様子だと、記憶は飛んでないみたいだな。」
「ご、ご迷惑をお掛けしました…」
「別に?言いつけ破ったのは問題だが、まぁプラマイゼロだな。昨日のお前はいつも以上にやらしかった。またしよう。」
晴柊はかぁっと顔を赤くさせると、勘弁して、というように琳太郎の首元に顔を隠すようにうずめた。
「…楽しかったか?」
「あ、う、うん……ご馳走だったし、ウィルと話せた…」
「そうか。」
琳太郎はそれだけ言うと、晴柊の顔を離させて少し自分より高い位置にある晴柊の額にキスを落とした。監禁生活は終わったとは言っても、実質続行中と言われても文句は言えないほど晴柊を不自由にさせていることにどうにかしてやりたいと思っていた琳太郎は、晴柊が気分転換できでいたようで安心していた。ヤクザの傍にいるという不自由な環境を受け入れてくれた晴柊に、少しでも楽しませてあげられたらという思いが琳太郎にはあった。
しかし、同時に他者からの視線を浴びる晴柊を見て、やはり人の目の触れないところにしまっておきたいという気持ちもあることを再確認したのだった。
「せっかくだし、ルームサービスでも頼むか。好きなだけ頼め。」
「え、いいの?やったぁ~!」
晴柊に琳太郎がメニュー表を渡した。おしゃれな字体と無駄のないデザイン、そして見慣れない料理名の羅列に晴柊は首を傾げ凝視していた。その様子を、琳太郎は愛おしそうに見つめるのだった。
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