44 / 48
Film 6
3
しおりを挟む
「おやおや?」
楽しそうにいうソラに南沢は嬉しそうに「ほら見て」と、繋いだ手を上げ見せびらかす。
「…南沢さんそれ限界」
するっと手を抜いた雨川に「ありゃー」とソラははしゃいでいる。
「仲直りしたのネ」
「したした~したよソラ~」
「じゃぁアイスあげるね!」
雨川は顔を上げられないままだが、南沢は「ありがとソラ~」と、ふにゃっふにゃしていた。あり得ないこの人と雨川が思っているなか、「はい、ドーゾ」とソラが棒アイスを持って雨川の隣に座った。
ソーダのアイス。
顔を覗き込むソラが「おいしーよ」とにかにか笑っていた。
三人でアイスを食べる。冷たい、人工的な味。無難で不味くもない、そんな。
食べているうちに棒から茶色い字が見えた。
「あっ」
「あたった?マフユちゃん」
「うん、あたった」
「もう一本だよマフユちゃん」
「すげぇ…ホントにあるんだ」
「持ってきてやろうか?」
「いや、いまはいいや。これって確率どれくらいなんですかね」
さぁ…という南沢はそれほど興味もなさそうだったが、そうか、それほどレアでもないのか、そう感じる。
「ごちそうさま」と雨川が包装にその棒を入れると「捨てちゃうの?」とソラは無邪気だ。
「…まぁ、」
「もったいないよ、」
「うーんでも口つけてるし。
じゃぁ、あと一本はソラが覚えておいてよ」
「んー?」
「食べちゃってもいいよ」
「わかった、覚えとくね」
「ははっ、」
楽しくなってくる。
楽しそうだね、という南沢、ホントにそうだねと言うソラ。いま両サイドはこうして、楽しいことがある。
それが広大すぎて、今、以外。どーでもよくなってくる気さえした。
何がどうなってもどうやら自分はいまこれが心地よいらしい。それがひとつわかった。
ソラといつまで一緒かも、南沢とどうするとかも、まだまだわからないし、いずれ解明するのかもすらわからなくても。
「うん、楽しい」
早く気付いてしまえばよかったのかもなぁ、長く時間は掛けてきて、これからも掛かるけど。当たり前にそうして未来を考える現象は、星空を見るそれに感覚が近い。
「なんか、ま、いいか」
その一言に「そうだね」と南沢が、抱き寄せるように頭を抱えてくれる。それは、側で暖かいものらしい。
「今日は疲れたし休もうか。もうソラも寝る時間だしね」
「もちょっと起きてる、アイス食べちゃったから」
「はは、まぁ今日くらいは好きにしていいよ。一日くらいじゃ太らないよ」
「んー…」
そんな教育をしていたのか。
そういえば、そうか。
同じ場所にいて一番近くにあるものをよく知らない。どう認識するか、まだまだ、わかっていないのかもしれなくて。
ならば自分の立ち位置など、端からわかるわけがなかったのかもしれない。
…結構、当たり前で初歩的なことが出来ていなかった。
水槽が目に入る。
その小さな世界は、いつでも溢れそうな飽和状態なのだから。
ソラが「寝るー!」と無邪気にベットヘダイブしたのだけど、「歯を磨きなさい」と言うのも不思議な気がしてしまい、やめておくことにした、今日だけは。
どうしようかという目で南沢は見るが、「まぁ、」と雨川は笑った。
「明日は南沢さんも普通に休みですか」
「うん」
「…手始めに三人でどこか行きましょうか。エビ吊りでも、まぁ、なんでも」
「まぁ良ければ…君の趣味にもたまには」
「結構です。大体は一人で済むものですから」
「そうか…」
少し感慨深い南沢が「…長かったね」と、ポツリと言った。
「きっと」
「…まぁ、南沢さんもそうでしょうから。
おやすみなさい、疲れました」
「そうだね、おやすみ」
素直に南沢はソファへ寝る体制になった。
楽しそうにいうソラに南沢は嬉しそうに「ほら見て」と、繋いだ手を上げ見せびらかす。
「…南沢さんそれ限界」
するっと手を抜いた雨川に「ありゃー」とソラははしゃいでいる。
「仲直りしたのネ」
「したした~したよソラ~」
「じゃぁアイスあげるね!」
雨川は顔を上げられないままだが、南沢は「ありがとソラ~」と、ふにゃっふにゃしていた。あり得ないこの人と雨川が思っているなか、「はい、ドーゾ」とソラが棒アイスを持って雨川の隣に座った。
ソーダのアイス。
顔を覗き込むソラが「おいしーよ」とにかにか笑っていた。
三人でアイスを食べる。冷たい、人工的な味。無難で不味くもない、そんな。
食べているうちに棒から茶色い字が見えた。
「あっ」
「あたった?マフユちゃん」
「うん、あたった」
「もう一本だよマフユちゃん」
「すげぇ…ホントにあるんだ」
「持ってきてやろうか?」
「いや、いまはいいや。これって確率どれくらいなんですかね」
さぁ…という南沢はそれほど興味もなさそうだったが、そうか、それほどレアでもないのか、そう感じる。
「ごちそうさま」と雨川が包装にその棒を入れると「捨てちゃうの?」とソラは無邪気だ。
「…まぁ、」
「もったいないよ、」
「うーんでも口つけてるし。
じゃぁ、あと一本はソラが覚えておいてよ」
「んー?」
「食べちゃってもいいよ」
「わかった、覚えとくね」
「ははっ、」
楽しくなってくる。
楽しそうだね、という南沢、ホントにそうだねと言うソラ。いま両サイドはこうして、楽しいことがある。
それが広大すぎて、今、以外。どーでもよくなってくる気さえした。
何がどうなってもどうやら自分はいまこれが心地よいらしい。それがひとつわかった。
ソラといつまで一緒かも、南沢とどうするとかも、まだまだわからないし、いずれ解明するのかもすらわからなくても。
「うん、楽しい」
早く気付いてしまえばよかったのかもなぁ、長く時間は掛けてきて、これからも掛かるけど。当たり前にそうして未来を考える現象は、星空を見るそれに感覚が近い。
「なんか、ま、いいか」
その一言に「そうだね」と南沢が、抱き寄せるように頭を抱えてくれる。それは、側で暖かいものらしい。
「今日は疲れたし休もうか。もうソラも寝る時間だしね」
「もちょっと起きてる、アイス食べちゃったから」
「はは、まぁ今日くらいは好きにしていいよ。一日くらいじゃ太らないよ」
「んー…」
そんな教育をしていたのか。
そういえば、そうか。
同じ場所にいて一番近くにあるものをよく知らない。どう認識するか、まだまだ、わかっていないのかもしれなくて。
ならば自分の立ち位置など、端からわかるわけがなかったのかもしれない。
…結構、当たり前で初歩的なことが出来ていなかった。
水槽が目に入る。
その小さな世界は、いつでも溢れそうな飽和状態なのだから。
ソラが「寝るー!」と無邪気にベットヘダイブしたのだけど、「歯を磨きなさい」と言うのも不思議な気がしてしまい、やめておくことにした、今日だけは。
どうしようかという目で南沢は見るが、「まぁ、」と雨川は笑った。
「明日は南沢さんも普通に休みですか」
「うん」
「…手始めに三人でどこか行きましょうか。エビ吊りでも、まぁ、なんでも」
「まぁ良ければ…君の趣味にもたまには」
「結構です。大体は一人で済むものですから」
「そうか…」
少し感慨深い南沢が「…長かったね」と、ポツリと言った。
「きっと」
「…まぁ、南沢さんもそうでしょうから。
おやすみなさい、疲れました」
「そうだね、おやすみ」
素直に南沢はソファへ寝る体制になった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる