竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー

文字の大きさ
上 下
16 / 18

16

しおりを挟む
 シーディがその場を立ち去ろうとした瞬間、突然背後からユニシスに抱きすくめられた。

「やはり、やはりお前が私のシーディだったのだな。シーディ、愛している。私はお前を迎えに来た……」

 その時突如、ユニシスの胸の辺りが眩い光を放ち始めた。慌ててその光り輝くなにかを取り出すとシーディに差し出した。

「見ろ、運命石がこんなにも光り輝いている」

 あまりの眩しさに目を細めながら、差し出された運命石をシーディはそっと触った。すると、運命石はさらに輝きを増しついに砕け散ってしまった。

 ところがその欠片はそのまま光の粒となり、シーディを包み込むように囲うと、一気にシーディに吸い込まれていく。

 光の粒に囲まれた瞬間、シーディはシャンディとしての記憶をすべて思い出した。




 その昔、運命石を作れる一族は、色々な者たちから命を狙われていた。欲深いものに捕らえられ、無理矢理運命石を作らされ命を落とす者、脅威と見做され殺される者もいた。

 そうして一族の者は根絶やしにされていき、シャンディの両親が最後に残った。

 両親は人里から離れひっそりと暮らしていたが、ある日旅人に見つかりシャンディを逃がすために殺されてしまった。

 そうして追ってくる旅人から山の中を逃げまとっていた時に助けてくれたのがユニシスだった。

 竜族は人と関わらず、人間界に降りてくることはあまりない。だが、ユニシスは人間界に興味を持っているようだった。

 これがきっかけで、ひとりになったシャンディはユニシスと一緒に暮らし始め二人は愛し合うようになっていった。

 ユニシスは人間が好きで、この世界に秩序をもたらしたいと言った。

 シャンディはユニシスのために、自分にできることは唯一運命石を作ることだけだと思った。

 運命石を作ると、その運命石を再度体に取り入れなければそのまま命を落とすが、それでも構わないと思った。

 シャンディはありったけの気持ちを込めて運命石を作り出し、ユニシスに渡すとユニシスは言った。

「必ずや人間界に平和をもたらし、この運命石を持ってお前を迎えに来る。それまで待っていてくれるか?」

「はいわかりました、約束します。私はずっとお待ちしてます」

 二人はそう約束を交わした。

 シャンディはこの約束を違えてはならないと思い、ユニシスが旅立つと最後の力を振り絞り、運命石を持ったユニシスに迎えにきてもらえるまで何度でも生まれ変わる呪術を自身にかけた。

 そして、シャンディはユニシスを待って何度も生まれ変わったが、シャンディが死んだ十六で命を落とした。何度も輪廻転生を繰り返しユニシスを待ち続け、シーディに生まれ変わったのだ。




 気がつけばシーディは涙を流していた。

「ユン様、やっと、やっと私を迎えに来てくれたのですね?」

 ユニシスは頷く。

「そうだ。二千年ものあいだ、お前をひとりにして悪かった」

 シーディは首を振る。

「でも、こうしてちゃんと約束を守ってくれたではありませんか。私はユン様に救われました」

 ユニシスはシーディの顔を両手で優しく包むと、親指で涙をぬぐう。

「いや、救われたのは私の方だ。その優しさを思い出し何度となく救われた。お前を忘れたことはなかった。なのに強くシーディに惹かれて戸惑った。だが、やはりお前は私のシーディだったのだな。愛してる、愛している。ずっとお前ひとりだけだ」

 ユニシスはそう言うと、シーディに口づけた。





 シーディが運命の乙女だったことは世界中に知れ渡ることとなり、当然後宮で暮らすことになった。

 本当は家族も帝都へ連れていきたかったが、両親が村を離れたくないとそれを嫌がった。

「そんな、私、みんなと離れたくない」

 そう言うシーディにユニシスが優しく言った。

「家族にはお前が会いたい時に会い行けばいい」

 それを聞いた両親が頷くのを見て、シーディは素直にユニシスに甘えることにした。

 村人たち全員に温かく見送られ、少し気恥ずかしい思いをしながらコジ村をあとにすると、馬車で後宮へ戻った。

 すると、後宮ではリンとランに出迎えられる。二人の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「シーディ様、もう二度と会えないと思ってました~」

「牡丹様~、お会いしたかったでずぅ~」

 そう言って二人してシーディに抱きついた。シーディも二人を思いきり抱きしめた。

 その後ろで立って見ていたスンは、しばらくそんなシーディたちを見つめていたが、突然こらえきれないように目頭を押さえた。

「すまない、私は今話せそうにない。後でゆっくり話そう」

 そう言い残し、その場を去っていった。

 こうして後宮へ戻ったあと、リンとランが変わらずシーディの世話をすることになったが、部屋は以前使っていた部屋ではなく、今後はユニシスと同じ部屋を使うことになった。

 ユニシスに抱きかかえられながら部屋へ入ると、炬燵があった。

「ここにも炬燵は用意したが、ここは私たちだけの部屋だ。他にリンやランと集まれる部屋を作ってあるから、おやつはそちらで食べてくれ」

 ユニシスにそう言われ、しばらく二人で見つめ合ったあとお互いに声を出して笑った。

 シーディはユニシスと炬燵に入り寄り添うと、疑問を口にした。

「あの日、なぜユン様は私のところへ来られたのですか?」

「お前が後宮を去ったあと、本物のサンタスが戻って来て言ったのだ。『運命の乙女が転生していると言ったのは私です』とな。てっきりあの予言をしたのはクントだと思っていたのだが、クントに入れ替わったのはこの予言をした直後だったらしい」

「そうだったのですね。それで、私がシャンディだと思って迎えにきたのですね」

「そうだ」

「サンタスの予言はどのようなものだったのですか?」

「『運命の乙女が生まれ変わり、その生まれた日に覚醒する』という予言だった」

「だから、私の誕生日に迎えに来たのですね」

 すると、ユニシスは自嘲気味に笑った。

「いや、実は誕生日だとかまったく考えていなかった。なぜならサンタスにそれを聞いた瞬間、私は後宮を飛び出しお前の元へ向かっていたのだから」

 そう答えると、ユニシスは少し考えてから言った。

「そうか、あの日はお前の誕生日だったな。そう考えるとサンタスの予言は完全に当たっていたのだな」

「そうですね、本当は誕生日は覚醒に関係なくユン様が私を迎えに来た日が、たまたま私の誕生日ということだったのですね。でも、迎えにきたあの日『シャンディか』と訊かずに『私のシーディか?』と質問したのはどうしてですか?」

 その質問にユニシスは

「話せば長くなるが」

 と、前置きし話し始めた。

「お前が前にここに居たときの話だ。私は勢力を増し権力を握ろうとする豪族を抑えるのに手こずった。そして、勢力を増したその豪族の娘との婚約話まで出された。まぁ、そんな娘と結婚する気はさらさらなかったのだが」

「そうだったのですか。牡丹はユン様が豪族と婚約するために邪魔になって嫌われたのだと思っていました」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖なる乙女は竜騎士を選んだ

鈴元 香奈
恋愛
ルシアは八歳の時に聖なる力があるとわかり、辺境の村から王都の神殿に聖乙女として連れて来られた。 それから十六年、ひたすらこの国のために祈り続ける日々を送っていたが、ようやく力も衰えてきてお役御免となった。 長年聖乙女として務めたルシアに、多額の金品とともに、結婚相手を褒賞として与えられることになった。 望む相手を問われたルシアは、何ものにも囚われることなく自由に大空を舞う竜騎士を望んだ。 しかし、この国には十二人の竜騎士しかおらず、その中でも独身は史上最年少で竜騎士となった弱冠二十歳のカイオだけだった。 歴代最長の期間聖乙女を務めた二十四歳の女性と、彼女より四歳年下の誇り高い竜騎士の物語。 三島 至様主催の『聖夜の騎士企画』に参加させていただきます。 本編完結済みです。 小説家になろうさんにも投稿しています。

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。 王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。 アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。 薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。 魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。 ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。 婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。

命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<死のループから抜け出す為、今から貴方を攻略させて頂きます。> 全く気乗りがしないのに王子の婚約者候補として城に招かれた私。気づけば鐘の音色と共に、花畑の中で彼の『護衛騎士』に剣で胸を貫かれていた。薄れゆく意識の中・・これが12回目の死であることに気づきながら死んでいく私。けれど次の瞬間何故かベッドの中で目が覚めた。そして時間が戻っている事を知る。そこで今度は殺されない為に、私は彼を『攻略』することを心に決めた―。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

処理中です...