悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

みゅー

文字の大きさ
36 / 190

第三十六話 共用ドローイング・ルーム

しおりを挟む
 すると視界にペルシックが入る。そちらをみると、ペルシックはドアに視線をちらりとやり、軽く頷く。スパルタカスかリアムが来たのだろう。それに答えアルメリアも頷くと、ドアから入ってきたのはリアムだった。

「こんにちはアルメリア。今日もお茶の時間をご一緒させてもらえますか?」

 部屋に入りルーファスに気づくと軽く会釈し、アルメリアを見つめた。

「リアム、こんにちは。今日はルフスと共用のドローイング・ルームへ行く予定なんですの。それでもよろしいかしら?」

「もちろんです。でもなぜ共用のドローイング・ルームに行かれるのですか? もしかして私室に不備でも? でしたら私が対処いたしますから、おっしゃって下さい」

 アルメリアは慌てて首を振り、それを否定する。

「違うんですの、共用のドローイング・ルームで少しは他の方とも交流できたらと考えていましたの」

 それを聞いて、リアムは一瞬驚いた顔をしたが気を取り直したように微笑む。

「アルメリア、私はその必要はないと思います。なにもしなくとも、君のことは周囲の者も噂で聞いて興味津々で見ていますからね。今はスパルタカスや私やアドニスが近くにいるので遠巻きに見ているだけですが、少しでも油断をすればすぐに群がって来るでしょう」

「油断、ですの? 油断もなにもわたくし周囲を警戒したことがありませんわ。でも誰もこの部屋を訪ねてこないのですから、他の方たちが わたくしを気にしているとは思えませんわ」

「いいえ、そういうことではないのです」

 リアムの背後に立っているリカオンが、笑いをこらえている。アルメリアはそれも気になったが、放置してリアムとの会話に集中した。

「わかりましたわ。でも今日は他の方と交流できなくても良いので、行ってみたいですわ」

「もちろんです。私は君がやりたいことに対して、反対するつもりは毛頭ありません。むしろその逆です。できれば君にはいつでも思うように行動して欲しいと思っています。ただ、必ず私たちが側にいるときだけにして欲しいだけなのです」

 やはりどんなに色々なことを成し遂げても、外見は少女である。みんな年下の少女を心配する兄のような気持ちなのだろう。アルメリアはそう思い、それに対して感謝しなければならないと思った。

「わかりました、気を付けますわ。心配してくださって、ありがとうこざいます」

「いいえ、敬愛してやまない女性に対してとる当然の行動ですから、お気になさらず。では、行きましょう」

 リアムは右手を自身の胸にあて、左手を差し出し微笑んだ。

「そう言っていただけるなんて、光栄ですわ」

 にっこりと微笑むと、アルメリアは差し出された手に恭しく自身の指先を添えた。リアムはぎゅっとその指をつかむと、熱のこもった瞳で見つめた。アルメリアは、驚いてリアムの瞳を見つめ返した。

「お嬢様、ドローイング・ルームに行かれるんでしょう? 急ぎましょう」

 突然背後からリカオンに声をかけられ、アルメリアは慌ててリカオンを見た。

「そうですわね、早く行きましょう」

 そう言って、ルーファスの方を見て微笑んだ。

「ルフスも、行きましょう」

 そう言って一行は歩き始めた。アルメリアは先ほどのリアムは一体どうしたのだろう? なにか彼の気に障ることを言ってしまっただろうかと考え、じっとリアムを見つめた。リアムはそんなアルメリアに気づくとこちらを軽く振り返り微笑んだ。その様子ははいつも通りに見えた。気のせいだったのだろうと、気を取り直しドローイング・ルームへ向かう。

 ドローイング・ルームにつくとすでに何人か集まっており、お茶を片手にリラックスして会話を楽しんでいる貴族たちの姿が見えた。
 アルメリアたちがドローイング・ルームに入ると、それに気づいた貴族たちが突然静かになった。

「アルメリア、あの一角が空いているようです。行きましょう」

 そう言ってリアムは空いている窓際のテーブル席にアルメリアをエスコートした。全員が席に着くと共用ドローイング・ルーム専属のメイドがすぐにやってきた。

「そのままお座りになってお待ちください。ただいまお茶の準備をしております」

 しばらく待たされたあとお茶が供された。

「本日はパイロープ産のダージリンをご用意いたしました。ファーストフラッシュですので、そのままなにもいれず茶葉本来の香りと、爽やかで若々しい風味とほどよい渋みをお楽しみください」

 そのメイドが下がると、今度は他のメイドがトレイに数種類のひとくちサイズの焼き菓子を乗せて持ってきた。

「お好きな物をお選び下さい」

 その中から各々がお菓子を数個づつ選ぶと、それを配り一礼して下がっていった。
 アルメリアはまずティーカップを取り、お茶の香りを楽しむ。

「希少な茶葉ですわね。ここで楽しめるなんて思ってもみませんでしたわ」

 ふと隣に座っているルーファスを見ると、昼食を取ったときのように、またも緊張した様子を見せていた。

「ルフスもせっかくなので楽しみましょう」

「はい、お気遣いありがとうこざいます」

 そう言って微笑んだ。

「そういえば、今日はスパルタカスはお茶に来ませんでしたわね。司教たちの話し合いの警護についているのかしら?」

 ルーファスは少し考えてから答える。

「いいえ、教会の行事で騎士団が警護に付くことはありません。今日も警護はありませんでした」

「そうなんですの」

 アルメリアはやけに静かになった反対側を向くと、リアムはなにか考えている様子だった。

「どうされましたの?」

「いえ、私も何度かこちらを利用したことがあるのですが、こんなに希少なお茶をこちらでいただいたことがありませんでしたから、驚いていただけです。アルメリア、私を心配してくれたのですか? だとしたら、嬉しいです」

 アルメリアは微笑み返す。

「もちろんですわ。リアムもいつもわたくしを気にかけてくださるでしょう? それと同じですわ」

「本当に私とアルメリアが同じ気持ちなら、そんなに嬉しいことはないのですが」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...