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9. 妹の猛アプローチ

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「どうぞ」

 私が答えると、扉を開けて入ってきたのはライアンだった。


「久しぶりの姉妹の会話を邪魔して悪いね。お茶を入れてもらったから持ってきたよ。ここに置いておいたらいいかな」


 そう言ってライアンはまるで座って話せばいいのにとばかりに、ティーセットをテーブルの上に置いてくれる。


「ありがとう」

「とってもいい香りの紅茶ですね! ライアン様ありがとうございます。私はマリアの妹のデイジーですわ。つい先日18歳になりましたの」


 すると、突如態度も顔つきも変えたデイジーが、まるでライアンを取り込もうとするように可愛らしい雰囲気で近づいていった。


「ありがとう。これは俺の祖母が好きだった紅茶で、公爵家代々の特別なブレンドなんだ。よかったら是非飲んでみてほしい」

「はい、もちろんですぅ~」


 うええ。語尾にハートマークが見える。
 あからさまなデイジーのブリッコを目の前にして、何とも言えない気持ちになる。

 けれど意外とこのデイジーのキャラを見破れる者はいない。

 こんなにあからさまで分かりやすいのにと思ってしまうのは、私がデイジーの本性を知る姉だからなのだろう。

 みんなこのデイジーのキャラに心を奪われていくのだ。うちの両親なんていい例だ。おかげで小さい頃から口ごたえする度にいつも、デイジーはかわいいのにと口癖のように私は言われた。


 結局デイジーの猛アタックのせいで、その後はライアンと3人で過ごした。

 けれどデイジーの目的がライアンなのは一目瞭然だった。

 その後もライアンの隣にぴったりとくっついて、私に話す隙を与えないようにライアンに話し続けていたのだ。甘ったるく可愛らしい目つきでライアンを見上げ、さりげなくライアンの体に触れ、隙あれば腕に手を絡ませる。

 ライアンがデイジーをどう思っているのかはよくわからない。


「そうなんだね。そういえば、マリアは……」

「もう、ライアン様ったら。お姉さまの話は今はいいじゃない」


 時折ライアンは私のことを気にかけて、私に話題を振ってくれることもあるが、結局はデイジーによって阻止されてしまう。

 私は何とも居心地の悪い空間に静かに座っていることしかできなかった。


 それからも何日かおきにデイジーは公爵家を訪れては、ライアンと会話を交わした。

 表向きは私に会いに来ていると言っているが、私となんて目すら合わせてこない。

 きっとデイジーなりに本格的に猛アタックを始めたということだろう。
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