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第五章
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桃華が宇宙人リームのマスクを顔から外すと、頭に巻いたタオルからポアーっと微かに蒸気が立ち昇った。顔中はいうまでもなく汗びっしょりで、上気した顔はゆで上がったように真っ赤だった。
「桃華ちゃん、お疲れっ!」
桃華たちマイクロバスに戻った「ガンガガン」の出演者たちは、ほっと一息ついたところだった。
休憩している松野桃華に、司会を務めた大倉美祢子は上機嫌で声をかけた。
「凄いね桃華ちゃん。やっぱり格闘技を学んでいる人は動きが違うわ!」
「有難うございます」
桃華は美祢子に丁寧に礼を言った。
スーツアクターの劇団に入団して半年、桃華は人気アニメ「銀河番長ガンガガン」ステージショーの出演者の一人として欠かせないメンバーとなっていた。
入団してしばらく桃華は地方自治体の「ゆるキャラ」の着ぐるみを担当していた。たいてい「ゆるキャラ」のデザインは頭でっかちで、小柄な桃華が身に着けると手足の長さがぴったりだった。
ところが「ガンガガン」のシリーズに新たなキャラとして宇宙人少女リームが登場すると、桃華はリームのスーツを専門に身に着けるようになった。
テレビ番組等で人間の少女が登場することはご法度だったが、リームは宇宙人という設定だったので堂々と映すことができた。
リームの人気が上昇すると同時に桃華の出演機会も増え、桃華はステージショーを務めるため全国を飛び回った。
美祢子は桃華に向き直ると、声を潜めて話し掛けた。
「ねえ、桃華ちゃん。ちょっと情報があるんだけど、聞いてくれない?」
「なんですか?」
司会の美祢子は、桃華が所属する劇団のマネージャー兼社長を務めている。仕事の話だろうと桃華は思った。
「まだ噂なんだけど、リームが人気で、他にも宇宙人という設定で少女のキャラを考えているアニメ番組があるんだって。ほら、人間の少女はテレビに映せないけど、リームがOKなら、色々バリエーションが増やせるでしょ」
「そうなんですか?」
桃華は疑いの声を出した。
ちょっとそれは楽観的すぎるのではないか?
美祢子は桃華の疑問の声に構わず先を続けた。
「桃華ちゃん、崎本美登里ってマンガ家の名前知っているかしら?」
「ああ」と桃華は頷いた。
崎本美登里という名前は知っている。
去年まで美登里は少年マンガ誌で連載をしていたし、原作のアニメは人気だったが今は目につかなかった。美登里のマンガの特徴は、主人公が美少女ということで、今はマンガの新刊も書店に並ばず、ある意味忘れ去られたマンガ家となっていた。
「崎本美登里は今は国内のマンガ誌に連載していないけど、海外向けに描いているんだって。海外なら日本のような規制はないから、大人気らしいよ」
「へえ!」と桃華は顎を引いた。
そんな話は初耳だった。
が、先の話とどう繋がるのだろう?
「崎本美登里の再評価が高まっているのよ。彼女の原作で、新しい連載が国内で始めようという話が持ち上がっているの。リアルな美少女だと無理だけど、キャラクターがロボットや、宇宙人という設定なら規制も潜れると出版社が動きだしているらしいよ。だから桃華ちゃんも崎本美登里の原作で仕事が増えるかも」
「それアニメだけですか?」
桃華は勢い込んで尋ねた。
美祢子は虚を突かれたように「え?」と口を開いた。桃華は先を続けた。
「美登里さんの原作で、特撮番組とか企画されないかなあ、と思って」
「あー、特撮ねえ!」
美祢子は納得したように頷いた。
「その話は聞いていないわ……でも、有り得るかも! あたし放送局のプロデューサーと知り合いがあるから、今の桃華ちゃんのアイディア、話してみる」
「是非お願いします。もし実現するなら、スーツアクターにあたしを!」
美祢子は胸を叩いた。
「任せといて! 桃華ちゃんがもし特撮番組に出演することになれば、うちの劇団も名前が上がるしね」
「桃華ちゃん、お疲れっ!」
桃華たちマイクロバスに戻った「ガンガガン」の出演者たちは、ほっと一息ついたところだった。
休憩している松野桃華に、司会を務めた大倉美祢子は上機嫌で声をかけた。
「凄いね桃華ちゃん。やっぱり格闘技を学んでいる人は動きが違うわ!」
「有難うございます」
桃華は美祢子に丁寧に礼を言った。
スーツアクターの劇団に入団して半年、桃華は人気アニメ「銀河番長ガンガガン」ステージショーの出演者の一人として欠かせないメンバーとなっていた。
入団してしばらく桃華は地方自治体の「ゆるキャラ」の着ぐるみを担当していた。たいてい「ゆるキャラ」のデザインは頭でっかちで、小柄な桃華が身に着けると手足の長さがぴったりだった。
ところが「ガンガガン」のシリーズに新たなキャラとして宇宙人少女リームが登場すると、桃華はリームのスーツを専門に身に着けるようになった。
テレビ番組等で人間の少女が登場することはご法度だったが、リームは宇宙人という設定だったので堂々と映すことができた。
リームの人気が上昇すると同時に桃華の出演機会も増え、桃華はステージショーを務めるため全国を飛び回った。
美祢子は桃華に向き直ると、声を潜めて話し掛けた。
「ねえ、桃華ちゃん。ちょっと情報があるんだけど、聞いてくれない?」
「なんですか?」
司会の美祢子は、桃華が所属する劇団のマネージャー兼社長を務めている。仕事の話だろうと桃華は思った。
「まだ噂なんだけど、リームが人気で、他にも宇宙人という設定で少女のキャラを考えているアニメ番組があるんだって。ほら、人間の少女はテレビに映せないけど、リームがOKなら、色々バリエーションが増やせるでしょ」
「そうなんですか?」
桃華は疑いの声を出した。
ちょっとそれは楽観的すぎるのではないか?
美祢子は桃華の疑問の声に構わず先を続けた。
「桃華ちゃん、崎本美登里ってマンガ家の名前知っているかしら?」
「ああ」と桃華は頷いた。
崎本美登里という名前は知っている。
去年まで美登里は少年マンガ誌で連載をしていたし、原作のアニメは人気だったが今は目につかなかった。美登里のマンガの特徴は、主人公が美少女ということで、今はマンガの新刊も書店に並ばず、ある意味忘れ去られたマンガ家となっていた。
「崎本美登里は今は国内のマンガ誌に連載していないけど、海外向けに描いているんだって。海外なら日本のような規制はないから、大人気らしいよ」
「へえ!」と桃華は顎を引いた。
そんな話は初耳だった。
が、先の話とどう繋がるのだろう?
「崎本美登里の再評価が高まっているのよ。彼女の原作で、新しい連載が国内で始めようという話が持ち上がっているの。リアルな美少女だと無理だけど、キャラクターがロボットや、宇宙人という設定なら規制も潜れると出版社が動きだしているらしいよ。だから桃華ちゃんも崎本美登里の原作で仕事が増えるかも」
「それアニメだけですか?」
桃華は勢い込んで尋ねた。
美祢子は虚を突かれたように「え?」と口を開いた。桃華は先を続けた。
「美登里さんの原作で、特撮番組とか企画されないかなあ、と思って」
「あー、特撮ねえ!」
美祢子は納得したように頷いた。
「その話は聞いていないわ……でも、有り得るかも! あたし放送局のプロデューサーと知り合いがあるから、今の桃華ちゃんのアイディア、話してみる」
「是非お願いします。もし実現するなら、スーツアクターにあたしを!」
美祢子は胸を叩いた。
「任せといて! 桃華ちゃんがもし特撮番組に出演することになれば、うちの劇団も名前が上がるしね」
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