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サンディ
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さてホテルに帰ろうとしたパックだったが、いきなり道路の真ん中に現れた蒸気車に行く手をふさがれ、あわててブレーキを踏んだ。
「なっ、なんだ?」
行く手をふさぐのは、軍の蒸気車である。全体にグレーに塗られ、帝国の紋章が車体には描かれていた。
形から見ると装甲車らしい。ごつごつとしたデザインで、いくつか車体から突き出している砲座が剣呑だった。
装甲車の天井の蓋がぱくりと開き、ひとりの士官が姿を現した。
「停まれ!」
「だからもう停まってるって。いったい何の用だい?」
すでに、むかっ腹がたっているパックは、思い切り怒鳴り返した。
士官の顔に「おや?」という表情が浮かぶ。このように反論されるとは思っていなかった様子である。年令は二十代半ばの、若い兵士だ。階級は中尉であった。髭剃りあとがくっきりと残り、やや細面の、両目がひどく狭まっている顔をしている。
中尉はじろりとパックのムカデを睨んだ。
「最近、そのムカデのような乗り物に乗っている子供がいるという噂だったが、お前のことか? 名前は? 年は? そしてどこから来た?」
矢継ぎ早の質問に、パックはますます腹を立てた。
「なんでえ、いきなり。そんな尋ね方じゃ話したくないね!」
「なに……」
中尉の顔が怒りで赤く染まった。
と、隣に座っていたマリアが身動きをした。
いけねえ、とパックは反射的にマリアの腕を押さえた。
「おい、やめろ! いいから、ここはおれに任せろ」
「でも、あの人間はあなたに危害を加えようとしています」
マリアは中尉が腰にぶらさげている拳銃のバックルに手をかけているのを見逃さなかった。
パックは息を吸い込み、中尉に話しかけた。
「いったい、どうしておれにそんなこと聞きたいんだ。中尉さん」
中尉は答えた。
「帝国の首都で、そんな奇妙な乗り物を乗り回しているのだ。われわれが興味を持つのも当たり前のことだろう。いったい、お前の目的はなんだ。答えないと、反逆者として逮捕するぞ」
反逆者! パックは驚いた。
「冗談じゃない。おれはただ、町の人に北の空に飛んで行った白球のことについて何か知らないか、聞いて回っているだけだよ」
「なんのために?」
パックはふたたびロロ村で起きたことを説明するはめになった。
なんども説明しているので、すらすらと述べることが出来る。
説明を聞く中尉の眉間に、見る見る怒りの皺がきざまれた。
「魔法? そして魔王だと? 法螺話もいい加減にしないか。そんな作り話で、われわれをごまかせると思ったら間違いだぞ!」
「本当のことだって! このマリアを見ろ! ロボットだぞ。マリアは、魔法のちからで人間のように考え、動くことが出来るんだ!」
中尉は目を細め、マリアを見た。
「ロボットだと? ふん、おおかたその中に人間が入っているんだろう。われらの目はごまかせんぞ!」
「違う! マリアはニコラ博士の発明なんだ!」
その言葉が終わらないうち、装甲車のなかから声がした。
「ニコラ博士だと?」
そして中尉の後ろから、もうひとりの人間が姿を現した。
その人間を見て、パックは叫んだ。
「ニコラ博士!」
「違う。わたしはニコラ博士の弟、テスラ博士だ!」
ニコラ博士そっくりの老人はこたえた。
「なっ、なんだ?」
行く手をふさぐのは、軍の蒸気車である。全体にグレーに塗られ、帝国の紋章が車体には描かれていた。
形から見ると装甲車らしい。ごつごつとしたデザインで、いくつか車体から突き出している砲座が剣呑だった。
装甲車の天井の蓋がぱくりと開き、ひとりの士官が姿を現した。
「停まれ!」
「だからもう停まってるって。いったい何の用だい?」
すでに、むかっ腹がたっているパックは、思い切り怒鳴り返した。
士官の顔に「おや?」という表情が浮かぶ。このように反論されるとは思っていなかった様子である。年令は二十代半ばの、若い兵士だ。階級は中尉であった。髭剃りあとがくっきりと残り、やや細面の、両目がひどく狭まっている顔をしている。
中尉はじろりとパックのムカデを睨んだ。
「最近、そのムカデのような乗り物に乗っている子供がいるという噂だったが、お前のことか? 名前は? 年は? そしてどこから来た?」
矢継ぎ早の質問に、パックはますます腹を立てた。
「なんでえ、いきなり。そんな尋ね方じゃ話したくないね!」
「なに……」
中尉の顔が怒りで赤く染まった。
と、隣に座っていたマリアが身動きをした。
いけねえ、とパックは反射的にマリアの腕を押さえた。
「おい、やめろ! いいから、ここはおれに任せろ」
「でも、あの人間はあなたに危害を加えようとしています」
マリアは中尉が腰にぶらさげている拳銃のバックルに手をかけているのを見逃さなかった。
パックは息を吸い込み、中尉に話しかけた。
「いったい、どうしておれにそんなこと聞きたいんだ。中尉さん」
中尉は答えた。
「帝国の首都で、そんな奇妙な乗り物を乗り回しているのだ。われわれが興味を持つのも当たり前のことだろう。いったい、お前の目的はなんだ。答えないと、反逆者として逮捕するぞ」
反逆者! パックは驚いた。
「冗談じゃない。おれはただ、町の人に北の空に飛んで行った白球のことについて何か知らないか、聞いて回っているだけだよ」
「なんのために?」
パックはふたたびロロ村で起きたことを説明するはめになった。
なんども説明しているので、すらすらと述べることが出来る。
説明を聞く中尉の眉間に、見る見る怒りの皺がきざまれた。
「魔法? そして魔王だと? 法螺話もいい加減にしないか。そんな作り話で、われわれをごまかせると思ったら間違いだぞ!」
「本当のことだって! このマリアを見ろ! ロボットだぞ。マリアは、魔法のちからで人間のように考え、動くことが出来るんだ!」
中尉は目を細め、マリアを見た。
「ロボットだと? ふん、おおかたその中に人間が入っているんだろう。われらの目はごまかせんぞ!」
「違う! マリアはニコラ博士の発明なんだ!」
その言葉が終わらないうち、装甲車のなかから声がした。
「ニコラ博士だと?」
そして中尉の後ろから、もうひとりの人間が姿を現した。
その人間を見て、パックは叫んだ。
「ニコラ博士!」
「違う。わたしはニコラ博士の弟、テスラ博士だ!」
ニコラ博士そっくりの老人はこたえた。
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