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第五章〜南北大戦争〜
第46話 三国講和会議
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シュヴァルツが降伏してから数日後、ルーバル新総統含む幹部達は、自殺もしくは行方不明の者を除き、全員がセレーネ連邦国の拘置所へ連行された。
新総統が拘置所に連行されたため、一方的な講和会議が行われると思われていたが、光成の推薦によりエーデル級ベリアン艦長アルシャー・ウルフが、シュヴァルツの代表として、講和会議に望むことになった。
今回の講和会議の場所として、普段連邦会議が行われる施設が選ばれ、シュヴァルツ降伏から二ヶ月後、光成、眞、光太郎、デルタの四名の日丸国、ウルフとその部下数名のシュヴァルツ、トムヤードと今回戦場の舞台となった国々の代表達が集まっていた。
「それではこれより、三国講和会議を開始致します…」
今回の講和会議の進行役、トムヤードの秘書カルンス・ミレーナの言葉により、講和会議が始まった。
「これが、セレーネ連邦国の要望だ…」
トムヤードはそう言いながら、日丸国とシュヴァルツの全員にセレーネ連邦国の要望が書かれた書類を渡した。
「なんですと!?セレーネ連邦国は、我々を属国化するおつもりなのですか!?」
書類内容を読んでいたウルフの部下の一人が、声を出しながら驚き、トムヤードを見つめた。
「…我々は敗戦国なのだぞ?」
トムヤードを見つめる部下に、ウルフは落ち着くよう注意し、注意を受けた部下は、大人しく席に座った。
「…」
そんな中トムヤードは、ただ黙ることしか出来なかった。
セレーネ連邦国の講和の要求内容は、事前に行われた連邦会議で決まったことで、トムヤード的には属国なぞにしたくなかったが、複数の特に被害が大きい国々が中心に、シュヴァルツの属国化を強く支持したため、押し切られてしまったのだ。
更にセレーネ連邦国の要求はこれだけではなく、多額の賠償金や、陸海空軍の軍縮、更に一部地域をセレーネ連邦国に差し出すなどがあった。
「…それでは、日丸国の要求を開示します」
セレーネ連邦国の要求がわかった後、日丸国からの要求が開示される。
南北戦争での被害がほとんど無い日丸国の要求は、シュヴァルツの民主化、奴隷身分制度の撤廃、海戦で使用した砲弾などの請求、資源を安価で提供するなど、セレーネ連邦国と比べてマシな内容だった。
全員が日丸国の要求を見たのを確認した後、光成は口を開く。
「我々としては、シュヴァルツの属国化は断固として反対致します…属国化なぞすれば、新たな戦争の火種になりかねません。それに、その手法は貴方が忌み嫌う大帝国と同じだと思いませんか?」
ルーイア国やアルカーヤ公国などの被害国に反論する暇を与えることなく、光成は属国化に反対する理由を述べる。
それを聞いた各国代表は、また自国の戦地にしたくないため、その理由に納得がする。
(これから、私も何かを説得させる時は、理由を続けざまに言うようにするか…)
光成が各国代表に反論させる暇を与えずに、理由を述べて説得させたのを見て、トムヤードはそれを今後使っていこうと、心の内で決めた。
「我々の考えとしては、日丸国、セレーネ連邦国、民主化したシュヴァルツの三国間で、同盟を締結し、互いに協力し合いながら、帝国に対応すべきだと思います。いつまでも睨み合っていれば、そこを帝国に漬け込まれ、可能性は十分あります。独裁者であったエルラが居なくなった今こそ、お互いに手を取り合い、帝国に対抗する必要があるのと思います」
光成は三国の協力が必要だと、セレーネ連邦国とシュヴァルツに力説した。
「被害国の代表の方々…シュヴァルツは属国ではなく、民主主義国家にし、対等な同盟を結ぶ…それでよろしいですな?戦争の火種を防ぐためにも」
光成の考えを聞き、トムヤードはその他の代表国達に属国化を諦め、民主主義にするかどうか聞いた。
代表達は少し考えたが、シュヴァルツの属国化を諦め民主主義移行させることにした。
「続いて、賠償金のことなんですが…この額はあまりにも膨大過ぎる…この額から八割減らし、その代わりとして破壊されたインフラなどの整備を負担する、もしくはかかった工事費を全額負担などどうでしょう?額が多ければ、それもまた戦争のきっかけになります。貴方々も考えてみてください…払っても払っても終わらない返済…その結果、自国がどうなってしまうか」
机に両肘を着きながら光成は、セレーネ連邦国の代表達に賠償金の減額を提案した。
もし自分達に同じような額が来た場合を想像した代表達は、生唾を飲みその末を想像することができた。
「……分かりました。賠償金は八割減額させましょう。その代わり、インフラ修理などに人手と工事費などを其方に負担をさせる…それでいいですね?」
代表達の表情を見て、トムヤードはウルフの方に向き直しながら、
「それで構いません。それで戦争を行った贖罪ができるのであれば…」
ウルフは素直にその要望を呑んだ。
数時間の講和会議末、以下のことが決まった。
社会主義国家シュヴァルツは、アルシャー・ウルフを初代大統領としたシュヴァルツ共和国に改名。それと同時に、日丸国とセレーネ連邦国と三国同盟締結した。
セレーネ連邦国の要求は、年に一度連邦国に賠償金直接納め、戦地となった国々には贖罪として破壊されたインフラの修理並びに、一部土地の割譲という形で通り、日丸国は、奴隷身分の撤廃、戦費の支払い、資源の安価提供など、殆どの要求が通ることになった。
なお、シュヴァルツの軍縮だが、桜花艦隊により強制的に軍縮されていたのと、大帝国に備えるためにも軍の配備は必要と判断され、行わないということになった。
新総統が拘置所に連行されたため、一方的な講和会議が行われると思われていたが、光成の推薦によりエーデル級ベリアン艦長アルシャー・ウルフが、シュヴァルツの代表として、講和会議に望むことになった。
今回の講和会議の場所として、普段連邦会議が行われる施設が選ばれ、シュヴァルツ降伏から二ヶ月後、光成、眞、光太郎、デルタの四名の日丸国、ウルフとその部下数名のシュヴァルツ、トムヤードと今回戦場の舞台となった国々の代表達が集まっていた。
「それではこれより、三国講和会議を開始致します…」
今回の講和会議の進行役、トムヤードの秘書カルンス・ミレーナの言葉により、講和会議が始まった。
「これが、セレーネ連邦国の要望だ…」
トムヤードはそう言いながら、日丸国とシュヴァルツの全員にセレーネ連邦国の要望が書かれた書類を渡した。
「なんですと!?セレーネ連邦国は、我々を属国化するおつもりなのですか!?」
書類内容を読んでいたウルフの部下の一人が、声を出しながら驚き、トムヤードを見つめた。
「…我々は敗戦国なのだぞ?」
トムヤードを見つめる部下に、ウルフは落ち着くよう注意し、注意を受けた部下は、大人しく席に座った。
「…」
そんな中トムヤードは、ただ黙ることしか出来なかった。
セレーネ連邦国の講和の要求内容は、事前に行われた連邦会議で決まったことで、トムヤード的には属国なぞにしたくなかったが、複数の特に被害が大きい国々が中心に、シュヴァルツの属国化を強く支持したため、押し切られてしまったのだ。
更にセレーネ連邦国の要求はこれだけではなく、多額の賠償金や、陸海空軍の軍縮、更に一部地域をセレーネ連邦国に差し出すなどがあった。
「…それでは、日丸国の要求を開示します」
セレーネ連邦国の要求がわかった後、日丸国からの要求が開示される。
南北戦争での被害がほとんど無い日丸国の要求は、シュヴァルツの民主化、奴隷身分制度の撤廃、海戦で使用した砲弾などの請求、資源を安価で提供するなど、セレーネ連邦国と比べてマシな内容だった。
全員が日丸国の要求を見たのを確認した後、光成は口を開く。
「我々としては、シュヴァルツの属国化は断固として反対致します…属国化なぞすれば、新たな戦争の火種になりかねません。それに、その手法は貴方が忌み嫌う大帝国と同じだと思いませんか?」
ルーイア国やアルカーヤ公国などの被害国に反論する暇を与えることなく、光成は属国化に反対する理由を述べる。
それを聞いた各国代表は、また自国の戦地にしたくないため、その理由に納得がする。
(これから、私も何かを説得させる時は、理由を続けざまに言うようにするか…)
光成が各国代表に反論させる暇を与えずに、理由を述べて説得させたのを見て、トムヤードはそれを今後使っていこうと、心の内で決めた。
「我々の考えとしては、日丸国、セレーネ連邦国、民主化したシュヴァルツの三国間で、同盟を締結し、互いに協力し合いながら、帝国に対応すべきだと思います。いつまでも睨み合っていれば、そこを帝国に漬け込まれ、可能性は十分あります。独裁者であったエルラが居なくなった今こそ、お互いに手を取り合い、帝国に対抗する必要があるのと思います」
光成は三国の協力が必要だと、セレーネ連邦国とシュヴァルツに力説した。
「被害国の代表の方々…シュヴァルツは属国ではなく、民主主義国家にし、対等な同盟を結ぶ…それでよろしいですな?戦争の火種を防ぐためにも」
光成の考えを聞き、トムヤードはその他の代表国達に属国化を諦め、民主主義にするかどうか聞いた。
代表達は少し考えたが、シュヴァルツの属国化を諦め民主主義移行させることにした。
「続いて、賠償金のことなんですが…この額はあまりにも膨大過ぎる…この額から八割減らし、その代わりとして破壊されたインフラなどの整備を負担する、もしくはかかった工事費を全額負担などどうでしょう?額が多ければ、それもまた戦争のきっかけになります。貴方々も考えてみてください…払っても払っても終わらない返済…その結果、自国がどうなってしまうか」
机に両肘を着きながら光成は、セレーネ連邦国の代表達に賠償金の減額を提案した。
もし自分達に同じような額が来た場合を想像した代表達は、生唾を飲みその末を想像することができた。
「……分かりました。賠償金は八割減額させましょう。その代わり、インフラ修理などに人手と工事費などを其方に負担をさせる…それでいいですね?」
代表達の表情を見て、トムヤードはウルフの方に向き直しながら、
「それで構いません。それで戦争を行った贖罪ができるのであれば…」
ウルフは素直にその要望を呑んだ。
数時間の講和会議末、以下のことが決まった。
社会主義国家シュヴァルツは、アルシャー・ウルフを初代大統領としたシュヴァルツ共和国に改名。それと同時に、日丸国とセレーネ連邦国と三国同盟締結した。
セレーネ連邦国の要求は、年に一度連邦国に賠償金直接納め、戦地となった国々には贖罪として破壊されたインフラの修理並びに、一部土地の割譲という形で通り、日丸国は、奴隷身分の撤廃、戦費の支払い、資源の安価提供など、殆どの要求が通ることになった。
なお、シュヴァルツの軍縮だが、桜花艦隊により強制的に軍縮されていたのと、大帝国に備えるためにも軍の配備は必要と判断され、行わないということになった。
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