遠のくほどに、愛を知る

リツカ

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第6章 遠のくほどに、愛を知る

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「んっ、……クロードさま……」
「痛むか?」
「……いえ……あッ」

 乳首を弄っていたクロードの手があっさりと離れた。
 かと思うと、今度はヴィンセントの胸元に顔を近づけ、赤くなったヴィンセントの乳首を舌先で舐りはじめる。
 濡れた舌の柔らかな感触に、ヴィンセントの腰から下がひくつくように震えた。
 その反応に気を良くしたのか、ニヤリと笑ったクロードはそのままヴィンセントの乳首を口に含んだ。
 舌で転がした後、ぬかるんだ口内に包まれた乳首を強く吸われ、「ひっ」と短い嬌声がヴィンセントの口から漏れる。

「あっ、ん……だめ、だめです……っ」
 
 ヴィンセントは小さくかぶりを振るが、クロードは止める気などさらさらないようだった。口に含んだ乳首を舌で押し潰したり、付け根の部分に甘噛みをしたりと、熱心に愛撫を施す。

 そうこうしているうちに、段々とヴィンセントの下半身に熱が溜まっていく。それと共に、下腹部のあたりがきゅうっと収縮するような、そんな感覚もあった。

「クロードさま、もう……ッ」
「善いくせに」
「っあ!」

 ヴィンセントの股の間にあったクロードの膝が、ぐりぐりとヴィンセントの隠部へと押し付けられた。
 その直接的な雄の快感に、ヴィンセントの体がびくりと大きく跳ねる。

「硬くなってるな」
「んっ、く、あっ……」

 ヴィンセントは手の甲で口を抑え、快感から逃れようとするように身を捩る。
 その間にも、クロードの舌は楽しそうにヴィンセントの乳首を舐っていた。もう片方の乳首を空いている手で弄りながら、さらに膝でヴィンセントの性器を服越しに刺激する。
 あちらこちらから与えられる途方もない快感に、ヴィンセントは早々に根を上げた。

「っんあ、あッ、ん、うぅッ、……ほ、ほんとに、もう……っ」
「イキたいならイケばいい。見ててやる」

 ヴィンセントは縋るようにクロードの服を掴み、やたらと重く感じる頭を横に緩く振る。

「だめです、服が……」
「気にするな。替えの服くらい、金を渡したら宿が用意してくれる」
「そ、そうじゃ、なくて……っ」

 クロードの服を掴んだ手に力が入った。
 赤らんだ目元で、ヴィンセントはおずおずとクロードを見上げる。

「……あなたが贈ってくれた服を汚してしまうのが嫌なんです……」

 クロードの目が丸く見開かれた。
 それまで執拗に施されていた愛撫もぴたりと止まる。

 長年袖を通さなかったくせに、今更なにをと思われているのかもしれない。
 けれども、これがヴィンセントの本心だ。
 クロードから贈られた服を、自身の精液なんかで汚したくはなかった。

「──っ、ん、ンンッ」

 短い沈黙の後、ヴィンセントは突然クロードに口付けられた。
 同時に、クロードの手がヴィンセントの下着の中に差し込まれ、すでに硬く勃ち上がっていたヴィンセントの性器を扱きはじめる。

「っ、ん、あっ……ん、」

 キスの合間、ヴィンセントは小さく喘いだ。
 クロードの手が上下に動くたび、熱が下腹部へと集まっていく。トラウザーズに抑え込まれた窮屈な下着の中、ヴィンセントの性器が先走りを漏らしながらどくりと脈打つ。

「あっ、あ、あっ……!」
「イけ」
「ッ────!!」

 熱のこもった声が耳元に吹き込まれた瞬間、ヴィンセントは軽く腰を浮かせて達した。その後もビクッと小刻みに腰が跳ね、そのたび精液が噴き出す。

「あ、あ……」
「かわいいやつ」

 そう甘い声で囁いてから、クロードは体を起こした。ヴィンセントの下着の中から精液で汚れた手を取り出し、指に纏わりつく精液を美味そうに舐めとっていく。
 目を細めて笑うクロードの艶を帯びた表情に、息を整えていたヴィンセントの心臓がどきりとした。

「はっ、あ……クロードさま……」
「服ぐらい、またいくらでも買ってやる」

 クロードは下着ごとヴィンセントのトラウザーズを脱がせると、躊躇なく床へと落とした。
 濡れた性器が空気に触れて、ヴィンセントはぶるりと寒気を感じた。

 僅かに視線を浮かせたクロードは手を伸ばし、ベッドの横にある小さな棚からガラスの小瓶を取り出す。
 その小瓶の中には、ほんのりとピンクに色付いたとろりとした液体が入っていた。おそらく、宿に常備されている香油かなにかだろう。

 クロードが小瓶の蓋を開けると、人工的な甘い香りが辺りに広がった。
 あまり好ましい香りでもなかったが、体が燻って仕方ないヴィンセントはそれどころではない。

 とろりとした香油が、クロードの手のひらへと垂らされていく。
 指の隙間から溢れた香油がヴィンセントの腿へと落ちてきて、ヴィンセントの胸が期待に膨らむ。

「足、開けるか?」

 尋ねられ、ヴィンセントは緩慢な動きで素直に足を開いた。
 湯浴みがどうのなんて、もうヴィンセントもどうでもよくなっていた。
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