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第6章 遠のくほどに、愛を知る
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しおりを挟む香油の塗されたクロードの指が、そっとヴィンセントの尻のあわいに触れた。
ひんやりとしたその感触に、ヴィンセントの内腿がぴくりと動く。
「は、あ、あぁ……っ」
濡れた指先で窄まりをつつかれると、自然に吐息混じりの声が漏れた。
そこが期待にヒクつくのが、恥ずかしいくらいに自分でも感じ取れてしまう。
クロードがごくりと唾を飲みこむ音がやけに大きく聞こえた。
直後、後孔のナカにゆっくりとクロードの指が入ってくる。
「っ、あ、んん……」
「……大して慣らさなくても、もう一本くらいなら簡単に入りそうだな……」
感嘆としたクロードの声には、ほんの少し苛立ちが混ざっているようだった。
ナカに入っていた指が後孔の縁を押し広げるように動き、すぐに二本目の指が挿入される。
「っ、う、あっ……!」
「痛いか?」
「…………いえ……」
「だろうな。美味そうに咥え込んでる」
揶揄うというよりは、どこか皮肉っぽい言い方だった。
そうして、クロードの指がナカを探るようにゆっくりと動き出す。二本の指で腹の内側をぐちゅぐちゅと掻き回され、ヴィンセントの足先がきゅっと丸まった。
「っは、ああッ、あっ」
「前より感度が良くなってるな……半年もあいつとヤリまくってただけはある」
ヴィンセントが目を見開くと、クロードはやけに冷めた顔をしてヴィンセントを見下ろしていた。
しかし、まだそんなことを言っているのかと呆れている余裕などヴィンセントにはない。
ナカの指が前立腺を擦りながら抜き差しされるたび、ヴィンセントの唇からはひっきりなしに甘い喘ぎが漏れた。
「ンッ、あ、あっ……!」
「一回ナカでイクか?」
「っ、ひ……ッ────!」
ヴィンセントは歯を食いしばり、軽く体を仰け反らせた。
散々擦られた前立腺を二本の指先で抉るように押し潰された瞬間、ヴィンセントは絶頂していた。射精を伴わない、長く、深い絶頂だった。
「……っ、あッ!」
ヴィンセントが絶頂の余韻で呆けている間に、後孔に入っていたクロードの指がゆっくりと引き抜かれた。
その刺激にまた腰がひくりと震え、空っぽになった後孔の奥が物欲しげにうごめく。
「クロードさま……」
「わかってる。逸るな」
ヴィンセントと同じく欲情した様子のクロードは上着を脱ぎ捨てた。そのまま荒々しい手つきで服を脱ぎ、トラウザーズと下着を一気に下ろす。
現れた怒張に、ヴィンセントはごくりと唾を飲んだ。
はしたないとわかっていても、クロードの物から目が逸らせない。血管を浮き上がらせたその凶悪な見た目に、腹の奥がきゅうっと切なくなる。
クロードは勃起した自身の性器に香油を垂らし、それを塗り広げるよう片手で性急に扱いていく。ぐちゅぐちゅといやらしい水音を響かせながら脈打つ様は、まるで別の生き物のようだった。
はあッ、とクロードの口から熱い吐息がこぼれる。その視線はヴィンセントの肢体に注がれており、青い瞳は飢えた獣のようにギラついていた。
「ヴィンセント……」
「っ……あ、んッ」
持ち上げられた足をベッドに押さえ付けられる。軽く腰が浮いて、さらけだされた後孔がひくひくとした。
ヴィンセントは片手で自身の顔の上半分を覆い隠し、少し掠れた声で懇願する。
「も、もう……挿れてください……」
「欲しいのか?」
「…………欲しいです」
顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
けれど、それ以上に早くクロードの雄を突き入れられたくて堪らないのだから仕方がない。
ヴィンセントをこんな堪え性のない体にしたのはクロードだ。
いつかは誰かの夫になるのだろうと思っていたヴィンセントを妻にして、優しく抱いて、受け入れる側の快感を体と脳に覚えこませた。
いまとなっては、過去どんな風に女を抱いていたのかも思い出せない。
微かにクロードが笑う気配がした。
それからすぐに、ヴィンセントの顔半分を覆っていた手をクロードの手が掴む。
「顔、見せてくれ」
「…………」
「お前の顔を見ながらしたい」
甘えを含んだ、柔らかな声だった。
ヴィンセントは羞恥に耐えながら、のろのろと手を顔から退ける。
弧を描いた青い目が、満足げにヴィンセントの紫の瞳を見つめていた。
視線が交わると、その美しい顔に恍惚とした艶のある笑みが浮かべられる。
程なくして、性器の先端が徐にヴィンセントの後孔にぴたりと押し当てられた。クロードが僅かに腰を揺らすだけで後孔の縁が押し広げられて、簡単にクロードの雄を飲み込んでしまいそうだった。
「っは、ぁあ……焦らさないでください……はやく……」
「そんな風に言うな……酷くしたくなる」
「……いいですから……あなたになら、なにをされても……」
「お前は、本当に……」
「ンッ、あっ……ああっ……!」
苦笑したクロードが、ゆっくりと腰を進めてきた。
狭いナカを押し広げるように侵入してくるその硬い熱の塊に、ヴィンセントの表情が一瞬でとろけていく。
きっとみっともない顔をさらしてしまっている。
しかし、クロードにこうされるのをずっと待ち望んでいたのだから仕方ない。
じんわりと広がっていく快感と多幸感に酔いしれながら、ヴィンセントはうっとりと目を細めた。
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