アデルの子

新子珠子

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第一章 静かな目覚め

24. 手解き*

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 リノはゆっくりと頭を撫でて、僕の顔を覗き込んだ。

「ティト、怖くはないですか?」
「大丈夫…だと、思う…けど。」
「けど?」

 リノは本当に優しい声で目を細める。彼はいつだって僕を気遣ってくれる。

「リノの顔が見えないと…ちょっと怖い、かも。」
「分かりました。」

 リノは微笑んで身体を起こした。そのまま僕も起き上がると、リノに導かれるままヘッドボードに背を預けた。彼はそっと僕のズボンを脱がして、座った体勢の僕の脚の間に座る。

「この体制は大丈夫そうですか?」

  僕はこくりと頷いた。どぎまぎしている僕を安心させるように、リノは優しく髪を撫でる。

「怖くなったらやめますから言ってください。」
「うん…。」

 僕たちは額をこつんと付き合わせ、そのまま口付けを交わす。何度も口付けを交わしながら、リノはゆっくりと僕の下腹部へ手を滑らせた。僕のペニスの形を確かめるように、すり、すりとなぞる。その緩い快感に、その先を想像してしまい、僕はびくりと身体を震わせた。リノは僕の様子を確かめるように唇を離す。

「大丈夫、その、ちょっと先を想像したら反応しちゃっただけ。」
「可愛い…。」

 リノは愛おしそうに僕の顔中にキスを降らせた。

「…可愛いは…やだ。」
「ふふ、はい。」

 リノは微笑んで僕の下腹部へ顔を寄せた。髪を耳にかけて、下着越しに僕のペニスを唇でなぞる。そしてキスを落とされながら、やわやわと陰嚢を揉まれた。その淡い刺激に思わず吐息が漏れる。



 リノは顔をすり寄せるようにして、上目遣いで僕を見た。

「ティト…少しフェロモンが出てますね…いい匂い…。」
「えっ…僕、出てる?」
「はい、少しですけど匂いがします。」

 リノは竿に唇を這わせ、亀頭をすりすりと撫でながら僕を見た。その瞳はどこかうっとりとしている。

「もう少しで…精通を迎えそうですね。」
「そう、か…。」

 僕はどきどきしながら頷いた。エバがフェロモンを出すように、アデルも精通を迎えるとフェロモンを出すようになる。今までの僕は全くその気配がなかったが、ようやくその兆しが見えて来たようだ。

 リノは僕のものに顔を寄せて何度かすん、と匂いを嗅いだ。彼から甘い吐息が漏れる。

「舐めたい…。」
「うん…。」

 僕が頷くと、リノは僕の下着に手をかけた。窮屈そうにしていた僕のペニスがぶるりと晒される。リノは待ちきれないと言った様子で僕のペニスにちゅ、ちゅとキスを落とした。

 そわそわする僕にリノは艶っぽい笑みを浮かべ、ゆっくりと優しく裏筋を舐めた。舌の柔い感触にぞわぞわと感覚が走る。

「…大丈夫そうですか?」

 僕は早く触れて欲しくて、こくこくと何度も頷く。リノは良かったと、小さく囁いた。そして優しくキスを落としてゆったりと竿を舐めはじめた。


 彼は時間をかけて、僕の裏筋から陰嚢までを優しくじっとりと何度も舐めた。彼の上目遣いの瞳と目が合う。彼は僕のものに舌を這わせながら微笑んだ。その仕草はあまりにも情欲的で、与えられる快感が柔さも相まって、僕は焦れた気持ちになる。早くもっと舐めて欲しくて仕方がない。

「リノ…っ。」
「はい。」

 焦れた僕の様子を悟ってか、リノは悪戯に笑う。そして唾液を含ませた舌を裏筋に這わせ、そのままじっとりとカリ首に舌をなぞらせた。

「ん…。」

 リノは絶妙な強弱でカリ首や亀頭を舐める。時々撫でるように優しく陰嚢に触れられると、気持ちよさにふるりと身体が震えた。

「っ気持ちいい…。」

 リノはふう、と熱を帯びた息を吐いて一度舌を離した。

「フェロモン…さっきよりも匂いが濃くなりました。」
「そうなの…?」
「はい、すごくいい匂い…。」
「分からない…。」

 僕にはまだ自分のフェロモンが分からなかった。感覚的にも違いは感じない。

「ん…もう少ししたら…分かるようになりますよ…。」

 リノはどこかうっとりとした表現で僕の先端をちろちろと舐めた。
 そして髪を耳にかけてから、ゆっくりと先端を口に含む。

「っ……。」

 たっぷりの唾液でじゅるりと先端を舐めあげ、彼の口がゆっくりと律動し始める。

「は……っ。」

 リノの口の中はとても熱くて、気持ちが良かった。彼は舌と唇を巧みに使い、緩急をつけてピストンをする。じゅる、じゅると厭らしい音が室内に響いた。

「……リノっ、…。」

 僕が少し不安そうに名前を呼ぶと、彼は僕のものを加えたまま、少しだけ首を傾げた。こつんと、リノの左手が僕の指先に触れる。僕は突差に彼の指に自分の指を絡ませた。

 僕の様子を確認したリノは、安心させる様に潤んだ瞳を細める。大丈夫ですよ、と言われている様な気がした。
 彼は僕と手を繋いだまま、右手と口で僕のものをさらに扱き始めた。僕は胸をきゅうっと締め付けられる様な感覚に陥る。

 こんな時まで僕を優しくいたわってくれるリノに、ただ愛しいと言う思いが込み上げる。
 その純粋な想いとは裏腹に、彼の巧みな舌使いによって僕のペニスはぐっと質量を増していた。

「気持ちい…、っ…。」

 ちゅぶ、ちゅぶと音を立てながらピストンを繰り返す。その律動が激しくなり始めると、段々とリノも熱を帯びた表情をし始めた。僕のフェロモンが出ているのか、リノも僕のものを扱きながらゆらゆらと腰を動かす。

「リノ…、リノ……っ。」

 僕はもう必死だった。僕は彼の手を握り、何度も彼の名前を呼んで、その快感を追った。








「怖くはなかったですか。」
「…すごく気持ち良かった。」
「ふふ、良かった。またしましょうね。」
「…うん。」

 リノにフェラをしてもらった後、まだ肌恋しくて僕たちは裸のまま抱き合ってベッドの中にいた。
 僕たちはちゅっと軽く唇を合わせる。

「…僕、どれくらいフェロモン出てた?」
「ん…そうですね…顔を近づけると匂いがするなって感じるくらいですかね。」
「そっか…あとどれくらいで精通するかな…。」
「うーん、どうでしょう…公爵に聞いてみましょうか?」
「いや、いいよ。」

 僕は笑って首を振った。流石に公爵にそんな事を聞くために煩わせるのは申し訳ない。

「でも、最後はもう少し濃い匂いがしました。すごく良い匂い。」

 リノはうっとりとそう言った。僕は手を伸ばして彼の髪を耳にかける。

「リノの匂いもすごく良い匂いだよ。」
「ふふ、嬉しいです。」

 僕はじっとリノを見つめた。何となく緊張してしまってこくりと唾を飲む。

「リノ…僕のフェロモンで反応した?」

 リノは少し驚いたように目を見開いた。

 アデルはエバのフェロモンを浴びると勃起をする。それと同じ様にエバはアデルのフェロモンを浴びると後孔が濡れるらしい。僕はリノがちゃんと反応したのかが心配だった。

 リノは僕の心配を察してか、優しく僕を撫でる。

「ちゃんと反応しましたよ。まだ匂いが濃くないから…少しだけですけど。」
「本当?」
「はい。」

 リノは優しく頷いた。僕はちゃんとリノにフェロモンが効いたことが嬉しくてふにゃりと笑った。



 リノは僕に微笑み返した後、少し悩むような仕草をした。

「ティト…後ろ、少し触って…見ますか?」
「えっ…。」

 僕は目を見張った。リノが言った事を確認するために彼を見ると、困った様に微笑む。

「挿入はだめです、けど。」
「……いいの?」
「2人の様子を聞く限り、レヴィルはやり方を教えてあげれないと思うので…僕が…した方がいいかなと。」

 リノは悩みながらもそう答えた。
 僕は現世では当然童貞だし、前世でも男性同士の経験はない。正直分からない事が多いのは確かだった。

「リノがいいなら…教えてほしい。」
「……はい…でも本当に挿入はだめです。…途中でダメだと思ったら止めてしまうかもしれません。」
「うん、…分かった。」

 僕はもう一度リノにキスをし、ゆっくりと身体を起こした。

「どうしたらいい?」
「ん…そうですね…ちょっと待って。」

 リノは身体を起こしてサイドテーブルの引き出しに手をかけた。そして中の小瓶を取り出す。中身はきっと香油だろう。
 僕たちがそういう関係になってから、サイドテーブルにはそう言った類の品が、丁寧に手入れをされて入れられる様になっていた。

「フェロモンがしっかり出れば、こう言うのもいらなくなるかもしれないんですが…濡れないで触れられるのは痛いので…これを使っていただけますか?」
「うん。」

 僕は小瓶を受け取った。リノはそのまま仰向けでベッドに横たわる。僕はドキドキしながら彼の足元に座った。

「見てもいい…?」

 彼は迷いながらも頷いた。僕は自分の心拍数が上がるのを感じる。彼のしなやかな脚をなぞり、ゆっくりと下着に手をかけた。するりと彼の引き締まった足を下着が滑る。
 僕は彼の太ももにそっと手をかけた。もう一度、了承を取るかの様に彼を見ると、彼は困った様に頷いた。

 彼の脚を割り開き、ぐっと太もも裏筋に手をかけて彼の腰を上げる。彼のアナルが目の前に露わになった。

「ん……。」
「わ…すごい…。」

 リノは滑らかで美しい肌をしているが、そこも綺麗だった。彼のアナルはきゅっと締まっていて狭そうだった。とてもここに自分のものが入るとは思えない。

「ここに…入るの…?」
「慣らさないと…入らないんです。」
「うん…。」

 頷くものの、本当に入るのか不安になってくる。マジマジと秘部を見つめる僕に、リノは恥ずかしそうに口を開いた。

「ティト、この体勢…ずっとしてると腰が痛いので…腰に枕を入れていただけますか。」
「あ、うんっ、ごめん。」

 僕は慌てて手を離した。リノから枕を受け取って彼の腰の下に敷く。確かにずっと腰を上げた状態だと辛そうだ。

「こんな感じでいい?」
「はい…ありがとうございます。」

 僕はリノの了承を得られたことに安心した。彼は優しく微笑むと僕の手を取った。

「ティト、触ってみてもらえますか?まだそこまで濡れてないので…優しく。」
「うん…。」

 僕はリノに導かれてそっと彼の菊座に触れた。

「ちょっと…濡れてる…かも?」
「ふふ、そうですね。ティトのフェロモンが良い匂いだからですよ。」
「そう、か……嬉しい…。」

 なんとも言えない幸せな気持ちがこみ上げる。リノのそこは僕を受け入れるために微かに濡れ始めていた。彼は優しく榛色の瞳を細め、僕の手を撫でた。

「リノ…教えて。」
「はい…。」





 僕はリノに教わり彼の秘部に香油をつけ、アナルの周りに触れていた。ゆっくりとほぐすように触れると、香油がぬちゅと音を立てる。リノははぁ、と甘い息を吐いた。

「ん…上手ですよ…。」
「うん…リノ、すごく良い匂い。」
「ティト、あんまり嗅ぎすぎないで…顔を近づけちゃダメ。」
「うん…。」

 彼の秘部からは僕を誘うように濃いフェロモンが漂っている。僕はそこに無意識に顔を近付けていたが、それを悟った彼に制されてしまった。僕は言いつけを守って身体を起こす。

「…少し…ほぐれてきた気がする…。」
「そうですね…。」
「指、入れてみてもいい?」
「…はい。」

 僕はアナルの縁を何度かなぞり、人差し指をゆっくりと差し入れた。第一関節くらいまで入れて、リノの様子を見る。

「大丈夫…?」
「ん…大丈夫です。入り口を…ほぐすようにしてみて。」
「うん。」

 僕はそっと入口を広げるように指をくにくにと動かし、円を描いた。人差し指を少し入れただけなのに、リノの中はすごく熱かった。中は濡れているが足りないような気がして、香油を手にとり、少し温めてから注ぎ足す。そして熱心に彼の中をほぐした。

「……っはぁ…。」
「…柔らかくなってきた…。」
「…ティトが上手だから、っ…ほぐれてきたんですよ。」
「嬉しい……もう一本指入れていい?」

 彼はこくんと頷いた。僕が指を増やし、ぬちぬちと愛撫を繰り返すと、彼は徐に彼自身のペニスをあやし始めた。

「リノ?そこも触った方がいい…?」
「いや……あっ…、んっそうですね…慣れてない方はここも触ってあげた方が…いいかもしれません。」
「分かった…。」
「でも……、今は…そうじゃなくて、貴方に前立腺の場所を…知ってもらいたいんです。」
 
 僕はリノが自分であやそうとしている手を止め、代わりに彼のペニスを扱いた。反対の手では彼の中をほぐす手も止めない。

「あっ……は、…っ…。」
「前立腺…。」
「は、っぁ……触れると気持ちいい場所があって…勃起した方が…分かりやすいんです…。」

 リノは、感じながらも僕に教えてくれる。その健気でいやらしい姿に僕自身も興奮しているのを感じた。

「ん…っ…ぅ…、ティトもう、大丈夫。」
「…うん。」
「は、…っ…第二関節くらいの所に、少し硬い場所があるから…探して…。」

 僕は彼に言われる通りに指を差し入れ、くにくにと動かしながら固い場所を探す。

「ん…ぁっ……お腹…の方…。」

 僕は指をぐるりと回した。すると指先がこりっと弾力のある場所に触れる。

「あっ!……ん…っ、っ…。」

 リノの身体がびくりと跳ねた。僕はびっくりして探る手を止める。

「リノ…?」
「はぁ……ぁ…、そこが…前立腺です。」
「うん…。」
「すごく…っ、気持ちいい…所だから…優しく触って…。」
「分かった。」

 僕はもう一度そっとそこに触れた。撫でるようにそこを揉み込む。

「あっ…ぁ……っ、…ぅ…はぁ……っ。」

 明らかに先程までとは違い、リノは感じ入るように身体をビクンと震わせながら喘ぎ声を上げる。僕はひたすらにそこを愛撫した。リノの乱れた姿に自分のペニスがむくりと、勃ち上がってくるのが分かる。

「あっ…ふっ…きもち…っ…あっ。」

 リノは僕の指で乱れて、善がった。僕は自分のペニスを今すぐにそこに捻じ込みたい衝動に駆られる。

「どうすればいい…?」

 リノは僕の方を向いた。その顔は上気し、とろんと蕩けている。

「んっ……ぅ…あ…ティトっ……キスしてっ…。」

 強請るような彼の姿に、僕は堪らず覆い被さる様にして口付けをした。僕たちは舌を絡め合い、じゅる、じゅると音をさせながら深く求め合う。

 僕はキスをしながらも前立腺を刺激する手は止めずに、彼を追い立てた。彼の身体はその度にびくりと震える。

「ティト…っ…ティト…っ。」
「気持ちいい?」
「きもちっ……い……っいく……っ。」
「…うん、いいよ。」

 僕は彼を導くように刺激を与える。

「はぁ……ん……っ…あっあぁ!っっ!!」

 リノの身体が強張り、びくっびくっと痙攣した。彼の中に入れた指がきゅうっと締めつけられる。
 彼は口を開けたまま、声も出せずに震えていた。彼のペニスからは何も出ておらず、ドライでイッたようだった。

 きゅうきゅうと吸い付くように締め付けられる指に、それがペニスだったらどんなに気持ちが良いのかを想像してしまい、目の前がチカチカとした。どうしようもなく入れたくて仕方がない。僕のペニスは痛いほどに勃起していた。

 しばらくリノは焦点が合わずにとろんとした瞳で呆然としていた。僕がゆっくりと指を引き抜くと、ぬちゅ、といやらしい音が立った。

「あぁ……ん……っ。」

 リノから嬌声が上がる。彼はまだ快感の波から抜けていないようだ。指を抜いたリノのアナルは香油だけではない分泌液と混ざり合ってずっぷりと濡れていた。これなら充分僕のものを受け入れる事が出来そうだった。

「リノ…大丈夫…?」
「ティト……。」

 僕が声をかけると、ようやくリノの焦点があった。

「すみません…僕だけイッちゃっいました…。」
「ううん、気持ちよくなってくれて嬉しいよ。」

 僕はそっと彼を撫でた。それだけで彼から気持ち良さそうな声が漏れる。

「っでも、ごめん…勃起しすぎて……痛い、かも。」
「ふふ、…そうですよね。すみません。」

 リノは上気した色っぽい表情で微笑み、僕のペニスに触れ、ゆっくりと扱いた。

「手でしてもいいですか。」
「うん。」
「ティト、すごく上手でした…。今日みたいにして…しっかりとほぐせば入るようになりますから。さっきの前立腺の場所を突くようにすると、すごく気持ちがいいです。」
「っ…うん、分かった…。」

 リノはどこか切なそうな表情で優しく微笑んだ。

「…ティト、愛してます。大好き…。」
「ありがとう…僕も大好きだよ…。」
「…はい。」

 僕たちはお互いの気持ちを確かめるように、ゆっくりと唇を重ねた。






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