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第6話 赤い羽根付き帽子の女-1-
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もっか花嫁修業中。
テーブルマナーやダンス、外国語や歴史、音楽、美術など学ぶことが多すぎて、目の回りそうな毎日を送っている。
幼いころより英才教育を受けている令嬢たちの足元にもおよばないが、末席ながら貴族の仲間入りをするので最低限のことは身に着けておきたい。
ハワード家の皆さんはおおらかで、身分など関係ないと仰ってくださるが、もし私がみっともないことをしてしまったら、それはハワード家全体の恥になってしまう。
それは極力避けたいので、時間の許される限りやれることはやっておきたいのだ。
そんな折、将来の義理の兄夫妻から仮面舞踏会に誘われた。
ハワード家三男オスカー様の妻ルーシー様とはダンスレッスンを一緒に受けているが、上達してきたので実戦で試してみてはどうかとのご提案である。
正直、気は進まないが、貴族になればこういった夜会も出席せざるを得ないときもあるのだろう。
いかんせん、私には経験値が絶対的に不足している。
少しずつでも社交に参加して慣れておくことが必要かもしれない。
そして、オスカー様ルーシー様と一緒に、舞踏会の主催者である公爵様のお屋敷へ向かった。
アンバー王国の貴族の中でも家督の高い公爵家とあって、豪華絢爛な吹き抜けの大広間には仮面をつけた紳士淑女が大勢集っていた。
華やかな雰囲気に圧倒されそうになる。
そんな中、会場中の視線が到着したばかりの一組のカップルに集まった。
男性は長身で恰幅のいい40代、連れの女性は赤いドレスを身にまとい、赤いつばの広い羽根付き帽子をかぶっている。
「あちらはどなたですか?」
アイザック様に小声で尋ねる。
「フランキー・テューダー伯爵とキャロライン嬢だ」
テューダー伯爵は遊び人として社交界では有名らしい。
夜会には欠かさず顔をだし、毎回違う情婦をエスコートしてきた。
ただ、最近はキャロライン嬢一筋らしい。
そんな貴族社会のドン・ファンを虜にしている愛人のご尊顔を好奇心から拝見したかったが、仮面をつけているうえ、扇子で口元を隠しているので顔はわからなかった。
それでも未練がましくちらちらと彼女を見ていたら、テューダー伯爵とキャロライン嬢がとケンカを始めた。
遠目でわからないが、伯爵が一方的に怒鳴りつけ、キャロライン嬢はそっぽ向いている。
彼女は赤いスカートを翻すと、黒いパンプスをカツカツといわせながら大広間を出て行ってしまった。
あれ?ついさっき来たばかりなのにもう帰ってしまうのだろうか。
伯爵のほうは一瞥をくれただけで、気にする様子もなく、友人たちと談笑していた。
一方、私は社交界でのふるまいを少しでも学び身に着けるつもりでいたが、2時間もしないうちに、慣れない舞踏会にメンタルがくたびれてしまった。
そんな私を見て、アイザック様が心配そうに声をかけてくれた。
「疲れた顔をしているな。もう帰ろう」
「いいえ!平気ですよ」
「ミア、社交などそんなに頑張ることはない」
私の頬をそっと撫でる。
「家になじもうといろいろ努力してくれるのは嬉しいが、無理はして欲しくないんだ」
仮面越しでも優しいまなざしを向けてくれているのがわかる。
さりげなく見守っていてくれる。こういうところ、本当に好き。
テーブルマナーやダンス、外国語や歴史、音楽、美術など学ぶことが多すぎて、目の回りそうな毎日を送っている。
幼いころより英才教育を受けている令嬢たちの足元にもおよばないが、末席ながら貴族の仲間入りをするので最低限のことは身に着けておきたい。
ハワード家の皆さんはおおらかで、身分など関係ないと仰ってくださるが、もし私がみっともないことをしてしまったら、それはハワード家全体の恥になってしまう。
それは極力避けたいので、時間の許される限りやれることはやっておきたいのだ。
そんな折、将来の義理の兄夫妻から仮面舞踏会に誘われた。
ハワード家三男オスカー様の妻ルーシー様とはダンスレッスンを一緒に受けているが、上達してきたので実戦で試してみてはどうかとのご提案である。
正直、気は進まないが、貴族になればこういった夜会も出席せざるを得ないときもあるのだろう。
いかんせん、私には経験値が絶対的に不足している。
少しずつでも社交に参加して慣れておくことが必要かもしれない。
そして、オスカー様ルーシー様と一緒に、舞踏会の主催者である公爵様のお屋敷へ向かった。
アンバー王国の貴族の中でも家督の高い公爵家とあって、豪華絢爛な吹き抜けの大広間には仮面をつけた紳士淑女が大勢集っていた。
華やかな雰囲気に圧倒されそうになる。
そんな中、会場中の視線が到着したばかりの一組のカップルに集まった。
男性は長身で恰幅のいい40代、連れの女性は赤いドレスを身にまとい、赤いつばの広い羽根付き帽子をかぶっている。
「あちらはどなたですか?」
アイザック様に小声で尋ねる。
「フランキー・テューダー伯爵とキャロライン嬢だ」
テューダー伯爵は遊び人として社交界では有名らしい。
夜会には欠かさず顔をだし、毎回違う情婦をエスコートしてきた。
ただ、最近はキャロライン嬢一筋らしい。
そんな貴族社会のドン・ファンを虜にしている愛人のご尊顔を好奇心から拝見したかったが、仮面をつけているうえ、扇子で口元を隠しているので顔はわからなかった。
それでも未練がましくちらちらと彼女を見ていたら、テューダー伯爵とキャロライン嬢がとケンカを始めた。
遠目でわからないが、伯爵が一方的に怒鳴りつけ、キャロライン嬢はそっぽ向いている。
彼女は赤いスカートを翻すと、黒いパンプスをカツカツといわせながら大広間を出て行ってしまった。
あれ?ついさっき来たばかりなのにもう帰ってしまうのだろうか。
伯爵のほうは一瞥をくれただけで、気にする様子もなく、友人たちと談笑していた。
一方、私は社交界でのふるまいを少しでも学び身に着けるつもりでいたが、2時間もしないうちに、慣れない舞踏会にメンタルがくたびれてしまった。
そんな私を見て、アイザック様が心配そうに声をかけてくれた。
「疲れた顔をしているな。もう帰ろう」
「いいえ!平気ですよ」
「ミア、社交などそんなに頑張ることはない」
私の頬をそっと撫でる。
「家になじもうといろいろ努力してくれるのは嬉しいが、無理はして欲しくないんだ」
仮面越しでも優しいまなざしを向けてくれているのがわかる。
さりげなく見守っていてくれる。こういうところ、本当に好き。
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