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魔界編
第7話 すれ違い
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※ルシスの母親視点になります。
契の間の扉を開くと顔を真っ青にしたルシスが崩れるように床へ倒れ込む。私は直ぐにルシスを背に担いで部屋のベットまで運んだ。
「お姉ちゃん大丈夫なの。倒れてから全然目を覚まさないよ。お母さま、契りの間で何があったの」
「心配しなくても大丈夫よ。ルシスは悪魔との契約に疲れて眠っているだけよ。カァラァとリプロも悪魔様と契約して疲れているのだから、お部屋に戻ってゆっくりと休みなさい」
「はい、お母様。でもお姉ちゃんが目を覚ましたら絶対に教えてね」
2人は私の言葉を信じて自分の部屋に戻って行った。
「これは大変なことになったわね。2人にはルシスは疲れて眠っていると説明したけれど実際は違うわ」
ルシスの体からは全く魔力を感じ取ることができなかった。魔族にとって魔力とは肉体を動かすエネルギー源ともいえる。魔力がないということは死んでいることに等しい。魔力がない原因を探るには魔石の状態を確認するのが常套手段である。私はライオンの頭と5本のヤギの足を体の周りに持つブエルという悪魔と契約をしている。ブエルの能力は治癒力だ。私はブエルの能力を使いこなすために、人体の構造を調べつくしたので、誰よりも詳しいと自負している。
魔石の色は種族によって異なる色をしている。魔族の魔石は紫色であり、上位魔族に至っては黒色だ。魔石の色と濃度によって魔力量が異なっている。もちろん魔王の子供である3人は濃度の濃い黒色だ。しかし、ルシスは黒の中でも最高位を示すベンタブラックである。ペンタブラックの魔石は、光りさえも闇に包んでしまう伝説の魔石である。伝説の魔石を有するルシスだからこそ、歴代最高最強の魔王になると信じて疑わなかった。それなのに、私がブエルの能力を使ってルシスの魔石を確認すると魔石は白くなっていた。白の魔石を有するのは魔力を持たない人間の男性もしくは魔石が死んだことを意味している。しかしルシスは息をしているので死んではいないのである。いったい契りの間で何が起こったのであろうか?ルシスが目を覚ました時に契の間で何が起きたのか確認しなければいけないが、ルシスが目覚めるのを待っている時間はない。魔石の色は見た目ではわからないが、ルシスの角は白くなっている。なぜ角までが白くなったのか原因はわからないが、この事実を他の魔族には絶対に知られてはいけない。
「このまま死んでくれたら1番良かったのかも……」
ぽろっと私は心にもないことを呟いてしまった。周りには誰もいない。いるのは眠り姫のように目覚めないルシスだけだ。ルシスが死んでいたほうが魔界のためにもなるのかもしれない。いやダメだ。いくら魔力を失ったからと言って、死んでいたほうが良いと考えるのは母親失格だ。恐らくカァラァとリプロもルシスが魔力を失っていることには気づいたはずだ。
それでも、ルシスのことが大好きなのは変わりないみたいだ。おそらく2人はルシスがすぐに魔力を取り戻すと思っているのかもしれない。しかし、魔王補佐官の私は、そんな甘い妄想を抱くわけにはいかない。3人が15歳になると魔界大総会が開かれて魔王が決定する。
魔界大総会が開かれるには、まだ10年の歳月があるとも言えるが、それまで私が魔王補佐官としてこの魔界の秩序を守っていかなければならない。私は小さな希望にすがるよりも確実に力があるカァラァとリプロをしっかりと育て上げなければいけない。ルシスには申し訳ないけれども魔力を失ったルシスを中心に動くわけにはいかないのだ。私は母親である前に、魔王不在の15年間の魔界の平和と秩序を守る魔王補佐官なのだ。
私はルシスを魔王城の地下にある魔王書庫へ幽閉することにした。公にはルシスは難病が発症して、治療の為に地下施設で療養することになったと発表するつもりだ。魔石が白くなって魔力を失ったルシスは、魔族とは呼べない存在だ。この事実が公になれば、ルシスは処刑される可能性さえあるのだ。魔力が無くても、魔石の色が何色でも、ルシスは私の大事な子供である。ルシスは3歳の頃から本が大好きで、いつも魔王書庫にこもって本を読んでいた。せめてあの子の大好きな本に囲まれた場所で過ごさせてあげようと思った。
私はこぼれ落ちそうな涙を堪えて、ルシスを魔王書庫へ幽閉する決断をした。
※ルシス視点に戻ります。
私の体は自分の体ではなくなったかのように全く動かすことができない。瞼でさえ開くことができないので何も見えない。しかし、お母様と弟達が話している声を聞くことはできた。これが7大天使と契約した代償なのであろう。私はこのまま植物人間のような生活を3年も続けないといけないのだろうか。これがミカエルのいう「頑張れ」という意味なのだろうか?少し酷くない?涙も声も出せない私はじっと悲しみに打ち震えていた。
「これは一時的なものですよ」
頭の中へ優しい女性の声が響く。私は声を出すことができないので心の中で囁く。
「その声はガブリエル様でしょうか」
「そうですよ。すこし心配になったので、天界からテレパシーを届けています。あまり長く話すことができないので手短に伝えますね。7人もの天使、しかも大天使と契約をしてしまったので、相当体に負担がかかっているようです。でも安心してくださいね。明日になれば最低限の生活を送れるようにはなるはずよ」
そう告げるとガブリエルの声は届かなくなった。私はガブリエルの説明を聞いて少し安心した。明日になれば最低限の生活ができるようになる。そうすれば、お母様に事情を説明して、理解してもらおうと決意した。その時、お母様の声が聞こえた。
「このまま死んでくれたら1番良かったのかも……」
そんな……。お母様がそんなふうに思うなんて私は涙が止まらない。実際には涙も出すことはできない。お母様にとって魔力を失った私は必要のない存在だった。たしかに私は膨大な魔力を授かって、3歳の頃から魔王となる為に英才教育を受けていた。でも、お母様からはそれ以上に愛情を持って育て上げてくれていたと感じていた。私は魔王の子供に転生しても、なんの不安も感じることなく、魔族として生きていけたのは、お母様の愛情のおかげでもあった。私は悲しくて考えることも嫌になりそのまま意識を失ってしまった。
とてもショックだったのです。
契の間の扉を開くと顔を真っ青にしたルシスが崩れるように床へ倒れ込む。私は直ぐにルシスを背に担いで部屋のベットまで運んだ。
「お姉ちゃん大丈夫なの。倒れてから全然目を覚まさないよ。お母さま、契りの間で何があったの」
「心配しなくても大丈夫よ。ルシスは悪魔との契約に疲れて眠っているだけよ。カァラァとリプロも悪魔様と契約して疲れているのだから、お部屋に戻ってゆっくりと休みなさい」
「はい、お母様。でもお姉ちゃんが目を覚ましたら絶対に教えてね」
2人は私の言葉を信じて自分の部屋に戻って行った。
「これは大変なことになったわね。2人にはルシスは疲れて眠っていると説明したけれど実際は違うわ」
ルシスの体からは全く魔力を感じ取ることができなかった。魔族にとって魔力とは肉体を動かすエネルギー源ともいえる。魔力がないということは死んでいることに等しい。魔力がない原因を探るには魔石の状態を確認するのが常套手段である。私はライオンの頭と5本のヤギの足を体の周りに持つブエルという悪魔と契約をしている。ブエルの能力は治癒力だ。私はブエルの能力を使いこなすために、人体の構造を調べつくしたので、誰よりも詳しいと自負している。
魔石の色は種族によって異なる色をしている。魔族の魔石は紫色であり、上位魔族に至っては黒色だ。魔石の色と濃度によって魔力量が異なっている。もちろん魔王の子供である3人は濃度の濃い黒色だ。しかし、ルシスは黒の中でも最高位を示すベンタブラックである。ペンタブラックの魔石は、光りさえも闇に包んでしまう伝説の魔石である。伝説の魔石を有するルシスだからこそ、歴代最高最強の魔王になると信じて疑わなかった。それなのに、私がブエルの能力を使ってルシスの魔石を確認すると魔石は白くなっていた。白の魔石を有するのは魔力を持たない人間の男性もしくは魔石が死んだことを意味している。しかしルシスは息をしているので死んではいないのである。いったい契りの間で何が起こったのであろうか?ルシスが目を覚ました時に契の間で何が起きたのか確認しなければいけないが、ルシスが目覚めるのを待っている時間はない。魔石の色は見た目ではわからないが、ルシスの角は白くなっている。なぜ角までが白くなったのか原因はわからないが、この事実を他の魔族には絶対に知られてはいけない。
「このまま死んでくれたら1番良かったのかも……」
ぽろっと私は心にもないことを呟いてしまった。周りには誰もいない。いるのは眠り姫のように目覚めないルシスだけだ。ルシスが死んでいたほうが魔界のためにもなるのかもしれない。いやダメだ。いくら魔力を失ったからと言って、死んでいたほうが良いと考えるのは母親失格だ。恐らくカァラァとリプロもルシスが魔力を失っていることには気づいたはずだ。
それでも、ルシスのことが大好きなのは変わりないみたいだ。おそらく2人はルシスがすぐに魔力を取り戻すと思っているのかもしれない。しかし、魔王補佐官の私は、そんな甘い妄想を抱くわけにはいかない。3人が15歳になると魔界大総会が開かれて魔王が決定する。
魔界大総会が開かれるには、まだ10年の歳月があるとも言えるが、それまで私が魔王補佐官としてこの魔界の秩序を守っていかなければならない。私は小さな希望にすがるよりも確実に力があるカァラァとリプロをしっかりと育て上げなければいけない。ルシスには申し訳ないけれども魔力を失ったルシスを中心に動くわけにはいかないのだ。私は母親である前に、魔王不在の15年間の魔界の平和と秩序を守る魔王補佐官なのだ。
私はルシスを魔王城の地下にある魔王書庫へ幽閉することにした。公にはルシスは難病が発症して、治療の為に地下施設で療養することになったと発表するつもりだ。魔石が白くなって魔力を失ったルシスは、魔族とは呼べない存在だ。この事実が公になれば、ルシスは処刑される可能性さえあるのだ。魔力が無くても、魔石の色が何色でも、ルシスは私の大事な子供である。ルシスは3歳の頃から本が大好きで、いつも魔王書庫にこもって本を読んでいた。せめてあの子の大好きな本に囲まれた場所で過ごさせてあげようと思った。
私はこぼれ落ちそうな涙を堪えて、ルシスを魔王書庫へ幽閉する決断をした。
※ルシス視点に戻ります。
私の体は自分の体ではなくなったかのように全く動かすことができない。瞼でさえ開くことができないので何も見えない。しかし、お母様と弟達が話している声を聞くことはできた。これが7大天使と契約した代償なのであろう。私はこのまま植物人間のような生活を3年も続けないといけないのだろうか。これがミカエルのいう「頑張れ」という意味なのだろうか?少し酷くない?涙も声も出せない私はじっと悲しみに打ち震えていた。
「これは一時的なものですよ」
頭の中へ優しい女性の声が響く。私は声を出すことができないので心の中で囁く。
「その声はガブリエル様でしょうか」
「そうですよ。すこし心配になったので、天界からテレパシーを届けています。あまり長く話すことができないので手短に伝えますね。7人もの天使、しかも大天使と契約をしてしまったので、相当体に負担がかかっているようです。でも安心してくださいね。明日になれば最低限の生活を送れるようにはなるはずよ」
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「このまま死んでくれたら1番良かったのかも……」
そんな……。お母様がそんなふうに思うなんて私は涙が止まらない。実際には涙も出すことはできない。お母様にとって魔力を失った私は必要のない存在だった。たしかに私は膨大な魔力を授かって、3歳の頃から魔王となる為に英才教育を受けていた。でも、お母様からはそれ以上に愛情を持って育て上げてくれていたと感じていた。私は魔王の子供に転生しても、なんの不安も感じることなく、魔族として生きていけたのは、お母様の愛情のおかげでもあった。私は悲しくて考えることも嫌になりそのまま意識を失ってしまった。
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