【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

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第四章

00.エレーナの過去 3 ループ前

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 学園の最終学年が半分終わった頃に国王が逝去し、戴冠式の隅っこに埋もれるような結婚式が終わった。

 惨めだと思う心の余裕も憐憫に浸る時間もない、心を閉ざして仕事人形になるだけの日々。仕事は増える一方だが、学園を無理矢理退学させられたせいで、ほんの少し時間の余裕ができた。

(この時間があれば資料集めの時間が⋯⋯)

(次の予算会議では、陛下が3ヶ月後に行かれる隣国の建⋯⋯)



『仕事をしている間は生かしておいてやる』

 エドワードの言った言葉の意味など理解できない。生きたいと思ったことなどなく、死にたいのかどうかを考える暇がないだけ。

(仕事をしなくては⋯⋯間に合わなくなる。会議がはじまるまでに後10分しかないわ)

 睡眠時間は2時間もあればラッキーな方で、目の下のクマと死人のような顔色を隠すために、会議の前は白粉を厚く塗る。

「今日も派手です事」

「そんな事をすれば美しくなると思ってるのかしら」

 短い期間で入れ替わるエドワードの愛人にかかる費用は増えるばかりで、予算会議ではエレーナが吊し上げを喰らう。

「王妃に少しでも魅力があればねえ」

「アレでは愛人が必要になっても仕方ありませんな」





「我が国の側妃制度を復活させる。準備して議会を納得させておけ」

「畏まりました」

 側妃は国庫から正式に予算が割り当てられると気付いたエドワードの猿知恵だが、愛人にかかっている費用も既に国庫から捻出しているのだから、何も変わらないなど考えもしない。

 かつてこの国にあった側妃制度では、政務には携わらせないと定められていた。

『側妃は後継を産むために存在し、王妃の権限を脅かしてはならない』

(これ以上捻出できるものなどないわ⋯⋯それならば)






「散々愛人のための費用を国庫から捻出させているにも関わらず、側妃制度を復活させる意味は!?」

「これ以上の散財を許すのですか!? なら、王妃は何のためにいるんだ」

「王が側妃を望まれるのは王妃としての資質に問題があるからだ! その責任をどうとってくださるのか、この場でご返答いただきたい!」


「皆様の仰る通り⋯⋯わたくしには王妃としての能力も資質も品格もなく、歴史あるアルムヘイルの王妃として失格です。
アルムヘイル現王妃として提言いたします。陛下のお心を安んじ、後継者を授かる為には側妃制度の復活は急務であり、必要不可欠であると判断いたしました。
側妃にかかる費用の一部は王妃用の予算から捻出し、王妃権限の一部を側妃に譲渡します。議長代理・外交・各大臣や貴族との折衝の全てを一任致します。
王妃用予算の大半がとある案件に流用されています。その流用分を側妃用の予算の一部と致します」

「責任逃れだ!」

「責任とは何をもって言われるのか、発言するならば堂々と立ち上がり、名を名乗りなさい。皆が王妃としてわたくしは不適格であると言い続け、わたくしはそれを認めただけの事。無能な王妃から国王代理・議長代理・大臣職代行の仕事を外し、資質不足の王妃に相応しい立場に戻るのみ。
外交は過去も現在も国王陛下が愛人と呼ばれる女性を同行しておられ、それが側妃に変わるだけで何の支障もありません。各大臣との折衝は国王陛下の政務とアルムヘイル国法に定められています。貴族との折衝は各大臣の職務であることは周知の事実です。
側妃へ一任するのが不適切であるならば、国法に基づきそれぞれの担当部署へ戻すのが良いでしょう。
わたくしは現王妃権限として、側妃制度の復活を認めます。
側妃候補は既に国王陛下が選定済みとのこと。候補者名の開示を国王陛下に願い、次の議会にて決定なされますように」

(初めて意見を口にした気がするけれどこれで良かったのだと思う。エドワード陛下が認めた側妃が王妃の代わりとなる。わたくしは元々不要⋯⋯仕事のできない役立たずと言われながら、仕事だけをさせられてきたけれど、無能に仕事を任せていたから国が混迷するばかりだったのかも。
さて、エドワード陛下はこの後どうされるのかしら。暴言も暴力も慣れているから、怖いものがないみたい)


 その数日後、エドワードは側妃候補の肩を抱いてやって来た。

 何を言っているのか聞こえないが、エレーナをバルコニーから突き落としたのは最近愛人になったばかりのソフィー・グレンジャー。

 元平民で子爵家の庶子と言われているが、本当は子爵の愛人のひとり。側妃候補の筆頭で、既に部屋をもらっている。

 子供が産まれたら鑑定をしなくては、また『托卵』されているかも⋯⋯アルムヘイルは『托卵』されるのが得意技だから、例え子爵の子が産まれても王太子になれるだろう。



 エドワードがバルコニーから下を覗き、落ちていくエレーナを見ながら笑っているのがはっきりと見えた。

(そうか、わたくしはこうなる事を知っていたのかも⋯⋯ようやく終われる。二度とここには戻らないわ)

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