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第一章 お花畑の作り方
10.紳士淑女の言葉には2種類の意味がある
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バシンと何かを叩く音が聞こえ、入り口から堂々と入ってきたのは⋯⋯エロイーズ王妃殿下。
全員が静観する中でマーチャント伯爵夫妻が歩み出た。
「エロイーズ王妃殿下におかれてはご機嫌麗しく。ご覧の通り⋯⋯本日はごく内輪のささやかな集まりでございます。突然のお越し、いかがなさいましたか?」
仲のいい奴だけで集まってるんだけど? 呼んでないし⋯⋯を貴族らしく伝えると、こうなると言う見本のような挨拶。
「伯爵家じゃあ目を引くようなイベントなんてできないでしょう? だからわたくしが華を添えて差し上げようと思いついたの。想像してた通りだけど、面白みもないパーティーに似合いのつまらない招待客ばかりだわ。皆も感謝なさい」
相変わらずの非常識で高飛車な態度に紳士達は眉を顰め、広げた扇子で口元を隠し不快だと示した夫人達は、セレナの前に立って壁を作った。
「お気遣いには感謝致しますが、そろそろお開きの予定でございます。ご尊顔を拝し恐悦至極ではございますが、次は王宮でお会いできる事を楽しみにしております」
長年外務大臣を努めている手腕か、マーチャント伯爵は怒りも見せず『呼んでない、さっさと帰れ。二度と来んじゃねえ』という言葉を遠回しに伝え、本人でさえ気付かない内に、出口へと向かわされたエロイーズが慌てはじめた。
「ま、待ちなさい! わたくしは今来たばかりなのよ!」
マーチャント伯爵のエスコートを振り払ったエロイーズは、広間に向けて大声を張り上げた。
「ビルワーツが来ているのでしょう!? わたくしに挨拶する勇気が出なくて王都でコソコソしているなんて可哀想だから、こちらから来てあげたのよ? ビルワーツ夫人はどこかしら、顔を見せなさい」
エロイーズの暴挙を目にした礼儀正しい招待客達は、無言で目を見合わせた。『やっぱり狙いはビルワーツ侯爵夫人か』と言う心の声が聞こえてくる。
「エロイーズ王妃殿下、物珍しい淑女のパフォーマンスに驚き過ぎて、うっかりご挨拶が遅れてしまいました。レイモンド・ビルワーツでございます。
最後にお会いしたのは15年以上前の謁見の間だったと記憶しておりますが、お変わりもなく⋯⋯覚えておいででしょうか?
このような時間にサプライズで登場されるなど⋯⋯この国では見たことも聞いたこともありませんが、これも帝国流のひとつですかな?
しかも少し酒が過ぎておられるご様子。今宵は良い風が吹いております故、酔い覚ましにはちょうど良さそうです」
堂々とエロイーズの前に立ち、嫌味混じりの挨拶もどきで『すっげえ年取ったじゃん、礼儀知らずはさっさと帰れ、酒臭い』と伝えたビルワーツ侯爵の方が、余程王族の威厳を身に纏っている。
「レイモンドの言う通りですわ。宜しければお帰りになられる前に、果実水は如何ですかしら?」
クリス夫人も『さっさと帰って、ほんっと酒臭い』と言う意味の声をかけ、にっこりと微笑んだ。
「煩いわね! マーチャントもビルワーツも少し黙ってて。わたくしはビルワーツ夫人に会いに来てあげたと、言ったでしょう!?」
エロイーズは後ろから問いかけたクリス夫人を睨みつけてから、レイモンドに向かって話しはじめたエロイーズは、キョロキョロと広間を見渡してセレナを探している。
「わたくしが招待してあげた時は無視しているくせに、こんな貧相な夜会には出席するなんて⋯⋯本当に礼儀知らずな田舎者だこと。
でもまあ良いわ、今回は許してあげましょう。夫人を連れてきてると聞いたからわざわざ会いに来てあげたの、さっさと連れてらっしゃい。王都でのしきたりを教えてあげるわ」
(やはり、それが狙いだよな⋯⋯だが、狙い通りに踊ってくれるのは楽でいい。愚か者は実に分かりやすくて笑える)
盾になってくれていた紳士淑女に礼をして、エロイーズの前に進み出たビルワーツ侯爵夫人を見たエロイーズの目が、胸元を飾るネックレスに釘付けになった。
(なんて綺麗なの! わたくしでさえあんな大きなエメラルドは持ってないのに⋯⋯ビルワーツ如きが、許せないわ!
いえ、わたくしに見せるためにつけているのかも! わたくしに注目して欲しいのね。ええ、いいわよ。ちゃんともらってあげるから)
ネックレスの翠色を際立たせる鮮やかなブルーのドレスは、身体のラインに沿ったエンパイアスタイル。大きく開いた肩は抜けるような白さで、仄かな大人の色気を漂わせている。
(でも、今日は我慢よ! この女を安心させて、わたくしの配下にするのが目的だもの⋯⋯でも⋯⋯あんなエメラルド、見せつけるだけだったら、わたくしに対する侮辱になるって分かってるの!?)
「王妃殿下にご挨拶申し上げます。セレナ・ビルワーツでございます」
侯爵夫人は深く腰を落としカーテシーをしエロイーズの言葉を待ったが、いつまで待っても声がかからない。
(なに、この女⋯⋯田舎者のくせに、ドレスとアクセサリーもわたくしの物より高級品の上にカーテシーも綺麗だなんて⋯⋯許せない⋯⋯わたくしより目立とうとするなんて)
エロイーズはセレナの事を田舎者だと蔑んでいるが、建国以来続いている由緒ある侯爵家の夫人で、生家も由緒ある侯爵家。当然なから、カーテシーは5歳の時から練習をはじめ、淑女のマナーは王族と並んでも遜色ない。
「チッ!」
静まりかえった広間に、エロイーズの舌打ちの音が響き渡った。はしたない王妃の行動に目を見開いた夫人達が、慌てて扇子で顔を隠し、呆れたように首を横に振った紳士が肩をすくめた。
今日の招待客は所謂『反王妃派』の者ばかりで、エロイーズの常識はずれな縁談秘話から、今までの言動に不満を抱いている。
(本当に情け無いわ。これが我が国の王妃だなんて)
(王妃教育の予算を遊興費にした毒女)
(帝国に返品できれば全員がwin-winになるのに)
「顔を上げなさい。今日はエリカ夫人に会いに来てあげたの。少しばかりわたくしの時間を分けて差し上げるから、お話ししましょう」
「お気遣いいただきありがとうございます。今は⋯⋯ネルズ公爵閣下からカンタータの歴史を教えていただいておりました。とても興味深く、クラシックだけでな「そんなつまらない話なんてどうでも良いじゃない! それよりも、向こうでもっと楽しい話をしましょう」」
強引に話を遮ったエロイーズがセレナの腕を掴んで、部屋の隅に置いてあるソファに向けて歩き出した。
「さあここに座りましょう。えーっと⋯⋯チラッ⋯⋯今日はわたくしの隣を許してあげるわね。お友達になった記念だから、遠慮なんてしなくていいわ⋯⋯チラッ⋯⋯」
「過分のお心遣い、恐れ入ります」
策を張り巡らせるのはエロイーズの最も苦手とするもので、全てを薙ぎ払い強引に事を進めるのを得意としている。人も物も光り物が大好物で、子供と年寄りが苦手。刺繍は刺すより刺させるもので、演奏するより聴くのが好き。
刺繍とピアノ演奏が得意のセレナ・ビルワーツは、領地では荷馬車の御者台に乗り自分で馬を操る。血と泥に塗れながら怪我人の治療を行い、年寄りだけで住んでいる家の掃除を手伝う。イレギュラーな出来事が苦手で、行動する前に入念な準備をするタイプ。
正反対の二人の戦いが今はじまった。⋯⋯レディ~ファイ!
無理矢理並んで座らされた、セレナとエロイーズの前に運ばれてきたのは、果実水の入ったグラスとカナッペの並んだ小皿が二つずつ。
「王宮に来るのは勇気がいるでしょうけど、これからは遠慮なくわたくしに会いに来て構わないわ⋯⋯チラッ⋯⋯わたくしたちはお友達になったんだもの」
グラスに口をつけてから果実水だと気付いたエロイーズが、顔を顰めてグラスを置き、カナッペを口に放り込んだ。
「でね⋯⋯モグモグ、ゴクン⋯⋯メルカをわたくしの専属侍女にしてあげようと思ってるの⋯⋯チラッ⋯⋯そうすればいつも一緒にいられるし、もっと仲良くなれるもの。いいお話でしょう?」
(仲良くしてあげるから、ちゃんとそのネックレスを献上なさいよ)
上から目線の話の途中でもネックレスの事が気になるようで、チラチラと目をやるエロイーズだが、目的を達成しようと頑張ってもいる。
(そうよ、今じゃなくても、侍女にしてから献上させればいいものね⋯⋯今日は侍女の話を優先しなくちゃ。でもでも、近くで見たら光が反射してもっと綺麗だわ)
「王宮で王妃殿下専属の侍女でございますか?」
「そう。だってほら田舎ばかりでは退屈でしょう? わたくしの侍女になれば、王家主催のパーティーとかお茶会にも参加できるし⋯⋯チラッ⋯⋯」
「わたくしなどには、もったいないお話ですございますわ」
「大丈夫、わたくしがちゃんと躾けてあげるから。それに、離宮に連れて行ってあげるわ。わたくしが全ての指示をして設計させたから、わたくしの趣味で完璧に仕上げてあるの」
(でも、それでは次のパーティーに間に合わないし。このエメラルドならあの若草色のドレスに似合いそうだし⋯⋯チラッ⋯⋯今日はエメラルドを手に入れて、王宮に呼び出してから侍女に任命すれば良いかも。それが一番ね。
やっぱり、わたくしは冴えてるわ。次のパーティーに似合うネックレスを手に入れられるなんて、ここに来て大正解!)
「離宮の噂は聞き及んでおります。なんでもロココ様式を取り入れられているとか」
「そうなの? ロココ様式ってなんだかかっこいい響きだわ。それよりも、久しぶりに顔を出したはずなのに、ずいぶん素敵なネックレスをつけているのね」
ほらきた~⋯⋯全員の目がキラリンと光った。
全員が静観する中でマーチャント伯爵夫妻が歩み出た。
「エロイーズ王妃殿下におかれてはご機嫌麗しく。ご覧の通り⋯⋯本日はごく内輪のささやかな集まりでございます。突然のお越し、いかがなさいましたか?」
仲のいい奴だけで集まってるんだけど? 呼んでないし⋯⋯を貴族らしく伝えると、こうなると言う見本のような挨拶。
「伯爵家じゃあ目を引くようなイベントなんてできないでしょう? だからわたくしが華を添えて差し上げようと思いついたの。想像してた通りだけど、面白みもないパーティーに似合いのつまらない招待客ばかりだわ。皆も感謝なさい」
相変わらずの非常識で高飛車な態度に紳士達は眉を顰め、広げた扇子で口元を隠し不快だと示した夫人達は、セレナの前に立って壁を作った。
「お気遣いには感謝致しますが、そろそろお開きの予定でございます。ご尊顔を拝し恐悦至極ではございますが、次は王宮でお会いできる事を楽しみにしております」
長年外務大臣を努めている手腕か、マーチャント伯爵は怒りも見せず『呼んでない、さっさと帰れ。二度と来んじゃねえ』という言葉を遠回しに伝え、本人でさえ気付かない内に、出口へと向かわされたエロイーズが慌てはじめた。
「ま、待ちなさい! わたくしは今来たばかりなのよ!」
マーチャント伯爵のエスコートを振り払ったエロイーズは、広間に向けて大声を張り上げた。
「ビルワーツが来ているのでしょう!? わたくしに挨拶する勇気が出なくて王都でコソコソしているなんて可哀想だから、こちらから来てあげたのよ? ビルワーツ夫人はどこかしら、顔を見せなさい」
エロイーズの暴挙を目にした礼儀正しい招待客達は、無言で目を見合わせた。『やっぱり狙いはビルワーツ侯爵夫人か』と言う心の声が聞こえてくる。
「エロイーズ王妃殿下、物珍しい淑女のパフォーマンスに驚き過ぎて、うっかりご挨拶が遅れてしまいました。レイモンド・ビルワーツでございます。
最後にお会いしたのは15年以上前の謁見の間だったと記憶しておりますが、お変わりもなく⋯⋯覚えておいででしょうか?
このような時間にサプライズで登場されるなど⋯⋯この国では見たことも聞いたこともありませんが、これも帝国流のひとつですかな?
しかも少し酒が過ぎておられるご様子。今宵は良い風が吹いております故、酔い覚ましにはちょうど良さそうです」
堂々とエロイーズの前に立ち、嫌味混じりの挨拶もどきで『すっげえ年取ったじゃん、礼儀知らずはさっさと帰れ、酒臭い』と伝えたビルワーツ侯爵の方が、余程王族の威厳を身に纏っている。
「レイモンドの言う通りですわ。宜しければお帰りになられる前に、果実水は如何ですかしら?」
クリス夫人も『さっさと帰って、ほんっと酒臭い』と言う意味の声をかけ、にっこりと微笑んだ。
「煩いわね! マーチャントもビルワーツも少し黙ってて。わたくしはビルワーツ夫人に会いに来てあげたと、言ったでしょう!?」
エロイーズは後ろから問いかけたクリス夫人を睨みつけてから、レイモンドに向かって話しはじめたエロイーズは、キョロキョロと広間を見渡してセレナを探している。
「わたくしが招待してあげた時は無視しているくせに、こんな貧相な夜会には出席するなんて⋯⋯本当に礼儀知らずな田舎者だこと。
でもまあ良いわ、今回は許してあげましょう。夫人を連れてきてると聞いたからわざわざ会いに来てあげたの、さっさと連れてらっしゃい。王都でのしきたりを教えてあげるわ」
(やはり、それが狙いだよな⋯⋯だが、狙い通りに踊ってくれるのは楽でいい。愚か者は実に分かりやすくて笑える)
盾になってくれていた紳士淑女に礼をして、エロイーズの前に進み出たビルワーツ侯爵夫人を見たエロイーズの目が、胸元を飾るネックレスに釘付けになった。
(なんて綺麗なの! わたくしでさえあんな大きなエメラルドは持ってないのに⋯⋯ビルワーツ如きが、許せないわ!
いえ、わたくしに見せるためにつけているのかも! わたくしに注目して欲しいのね。ええ、いいわよ。ちゃんともらってあげるから)
ネックレスの翠色を際立たせる鮮やかなブルーのドレスは、身体のラインに沿ったエンパイアスタイル。大きく開いた肩は抜けるような白さで、仄かな大人の色気を漂わせている。
(でも、今日は我慢よ! この女を安心させて、わたくしの配下にするのが目的だもの⋯⋯でも⋯⋯あんなエメラルド、見せつけるだけだったら、わたくしに対する侮辱になるって分かってるの!?)
「王妃殿下にご挨拶申し上げます。セレナ・ビルワーツでございます」
侯爵夫人は深く腰を落としカーテシーをしエロイーズの言葉を待ったが、いつまで待っても声がかからない。
(なに、この女⋯⋯田舎者のくせに、ドレスとアクセサリーもわたくしの物より高級品の上にカーテシーも綺麗だなんて⋯⋯許せない⋯⋯わたくしより目立とうとするなんて)
エロイーズはセレナの事を田舎者だと蔑んでいるが、建国以来続いている由緒ある侯爵家の夫人で、生家も由緒ある侯爵家。当然なから、カーテシーは5歳の時から練習をはじめ、淑女のマナーは王族と並んでも遜色ない。
「チッ!」
静まりかえった広間に、エロイーズの舌打ちの音が響き渡った。はしたない王妃の行動に目を見開いた夫人達が、慌てて扇子で顔を隠し、呆れたように首を横に振った紳士が肩をすくめた。
今日の招待客は所謂『反王妃派』の者ばかりで、エロイーズの常識はずれな縁談秘話から、今までの言動に不満を抱いている。
(本当に情け無いわ。これが我が国の王妃だなんて)
(王妃教育の予算を遊興費にした毒女)
(帝国に返品できれば全員がwin-winになるのに)
「顔を上げなさい。今日はエリカ夫人に会いに来てあげたの。少しばかりわたくしの時間を分けて差し上げるから、お話ししましょう」
「お気遣いいただきありがとうございます。今は⋯⋯ネルズ公爵閣下からカンタータの歴史を教えていただいておりました。とても興味深く、クラシックだけでな「そんなつまらない話なんてどうでも良いじゃない! それよりも、向こうでもっと楽しい話をしましょう」」
強引に話を遮ったエロイーズがセレナの腕を掴んで、部屋の隅に置いてあるソファに向けて歩き出した。
「さあここに座りましょう。えーっと⋯⋯チラッ⋯⋯今日はわたくしの隣を許してあげるわね。お友達になった記念だから、遠慮なんてしなくていいわ⋯⋯チラッ⋯⋯」
「過分のお心遣い、恐れ入ります」
策を張り巡らせるのはエロイーズの最も苦手とするもので、全てを薙ぎ払い強引に事を進めるのを得意としている。人も物も光り物が大好物で、子供と年寄りが苦手。刺繍は刺すより刺させるもので、演奏するより聴くのが好き。
刺繍とピアノ演奏が得意のセレナ・ビルワーツは、領地では荷馬車の御者台に乗り自分で馬を操る。血と泥に塗れながら怪我人の治療を行い、年寄りだけで住んでいる家の掃除を手伝う。イレギュラーな出来事が苦手で、行動する前に入念な準備をするタイプ。
正反対の二人の戦いが今はじまった。⋯⋯レディ~ファイ!
無理矢理並んで座らされた、セレナとエロイーズの前に運ばれてきたのは、果実水の入ったグラスとカナッペの並んだ小皿が二つずつ。
「王宮に来るのは勇気がいるでしょうけど、これからは遠慮なくわたくしに会いに来て構わないわ⋯⋯チラッ⋯⋯わたくしたちはお友達になったんだもの」
グラスに口をつけてから果実水だと気付いたエロイーズが、顔を顰めてグラスを置き、カナッペを口に放り込んだ。
「でね⋯⋯モグモグ、ゴクン⋯⋯メルカをわたくしの専属侍女にしてあげようと思ってるの⋯⋯チラッ⋯⋯そうすればいつも一緒にいられるし、もっと仲良くなれるもの。いいお話でしょう?」
(仲良くしてあげるから、ちゃんとそのネックレスを献上なさいよ)
上から目線の話の途中でもネックレスの事が気になるようで、チラチラと目をやるエロイーズだが、目的を達成しようと頑張ってもいる。
(そうよ、今じゃなくても、侍女にしてから献上させればいいものね⋯⋯今日は侍女の話を優先しなくちゃ。でもでも、近くで見たら光が反射してもっと綺麗だわ)
「王宮で王妃殿下専属の侍女でございますか?」
「そう。だってほら田舎ばかりでは退屈でしょう? わたくしの侍女になれば、王家主催のパーティーとかお茶会にも参加できるし⋯⋯チラッ⋯⋯」
「わたくしなどには、もったいないお話ですございますわ」
「大丈夫、わたくしがちゃんと躾けてあげるから。それに、離宮に連れて行ってあげるわ。わたくしが全ての指示をして設計させたから、わたくしの趣味で完璧に仕上げてあるの」
(でも、それでは次のパーティーに間に合わないし。このエメラルドならあの若草色のドレスに似合いそうだし⋯⋯チラッ⋯⋯今日はエメラルドを手に入れて、王宮に呼び出してから侍女に任命すれば良いかも。それが一番ね。
やっぱり、わたくしは冴えてるわ。次のパーティーに似合うネックレスを手に入れられるなんて、ここに来て大正解!)
「離宮の噂は聞き及んでおります。なんでもロココ様式を取り入れられているとか」
「そうなの? ロココ様式ってなんだかかっこいい響きだわ。それよりも、久しぶりに顔を出したはずなのに、ずいぶん素敵なネックレスをつけているのね」
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