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10.待ち望んだ断罪の時
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「まず始めにこの結婚の成り立ちから反論させていただきます。
キャンベル伯爵様はウォーカー商会の利権を狙い、亡くなった父を追い詰め脅迫し、オスカー様と私を結婚させました。そして、12年の間ウォーカー商会の利益の50%を搾取し続け、この離婚によってウォーカー商会そのものを手に入れるのです。
そのような不利益極まりない契約を、結婚当時に結ばされました」
「嘘だ! 証拠があるのか」
「証人として、当時伯爵様に拉致監禁された当商会員の家族を連れてきております」
法廷横のドアから三人の女性が入ってきた。皆緊張した面持ちで法廷内を見廻し、キャンベル伯爵を見て顔を引き攣らせた。
「えーっと、あなた方を拉致監禁したのは、あそこに座っているキャンベル伯爵で間違いありませんな?」
「はい、当時はまだお髪もふさふさで、お腹ももっとスッキリしておられましたが、間違いありません」
キャンベル伯爵が立ち上がり机をバーンと叩いた。
「平民の言う事など誰が信じるか! 判事殿、このような下賤な輩の戯言を聞いている暇などない。私は伯爵だぞ。さっさと判決を出して貰おうか!」
「私はもう少し詳しく聞きたいと思っておりますが?」
「平民が貴族を断罪するなどあり得ん! シエナ、ただで済むと思うなよ」
傍聴席から女性の声が響いてきた。
「ただで済まなければ、どうなさると仰るのかしら?」
傍聴席の後ろの席から、三人の紳士淑女が立ち上がった。
「こっこれは、アーリントン公爵夫人、ストレンジ公爵とダートマス侯爵。このような場所にどうして⋯⋯」
「我々三人はシエナ・ウォーカー殿の後見人をしております」
「貴殿がシエナの父親を追い詰める為に利用した、銀行の元頭取の供述書は私が持参しておる」
キャンベル伯爵は真っ青になって椅子に倒れ込み、頭を抱えてしまった。
最初からずっと座ったまま傍観していたオスカーは、何が起きているのか分からず、間抜け面を晒したまま。
「父上、俺の取り分は? 商会は貰えるんだよね」
シエナはイザベラ達に頭を下げた後⋯⋯。
「判事殿、最後に一言だけ⋯⋯キャンベル伯爵に申し上げたいことがございますが宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「キャンベル伯爵様、刺繍デザイナーをお探しとお聞きしました。刺繍のデザインは全て、私がしておりましたの。これで弁償金のお話も片がつきましたかしら?
判事殿、判決をお願いできますでしょうか?」
判事はシエナにむけて大きく頷いた。
「オスカー・キャンベル殿にお聞きしたい。シエナ・ウォーカーとの結婚が白い結婚だったと認めますか?」
「えーっと、父上これって認めても良いやつ? ヤバいやつ?」
「認めるな、馬鹿者! 判事殿この二人は12年もの長い間結婚生活を送っておりました。今更白い結婚などと、馬鹿げた話を聞く必要などありませんぞ」
傍聴席のクロエが突然立ち上がって、オスカーに向けて両手を振った。
「オスカー様ぁ、ほんとのシエナはこっちですぅ。間違わないでぇ」
オスカーは法廷のシエナと傍聴席のクロエを見比べて首を傾げた。
「えっ? 父上、どっちが本物のシエナなの?」
「⋯⋯どうやら白い結婚は間違いありませんな。自分の妻の顔も分からんとは。
判決を申し渡します。オスカー・キャンベルとシエナ・ウォーカーの婚姻は無効。従って、12年間ウォーカー商会から搾取した収益はシエナ・ウォーカーへ返還し、ウォーカー商会はシエナ・ウォーカーのものとする。
ジョージ・キャンベル伯爵並びにオスカー・キャンベルが返済の義務を怠った場合、身分剥奪の上犯罪奴隷として鉱山送りとする」
クロエが判事に親指を立ててサムズアップすると、判事がニヤッと笑い小さくサムズアップしていた。
キャンベル伯爵様はウォーカー商会の利権を狙い、亡くなった父を追い詰め脅迫し、オスカー様と私を結婚させました。そして、12年の間ウォーカー商会の利益の50%を搾取し続け、この離婚によってウォーカー商会そのものを手に入れるのです。
そのような不利益極まりない契約を、結婚当時に結ばされました」
「嘘だ! 証拠があるのか」
「証人として、当時伯爵様に拉致監禁された当商会員の家族を連れてきております」
法廷横のドアから三人の女性が入ってきた。皆緊張した面持ちで法廷内を見廻し、キャンベル伯爵を見て顔を引き攣らせた。
「えーっと、あなた方を拉致監禁したのは、あそこに座っているキャンベル伯爵で間違いありませんな?」
「はい、当時はまだお髪もふさふさで、お腹ももっとスッキリしておられましたが、間違いありません」
キャンベル伯爵が立ち上がり机をバーンと叩いた。
「平民の言う事など誰が信じるか! 判事殿、このような下賤な輩の戯言を聞いている暇などない。私は伯爵だぞ。さっさと判決を出して貰おうか!」
「私はもう少し詳しく聞きたいと思っておりますが?」
「平民が貴族を断罪するなどあり得ん! シエナ、ただで済むと思うなよ」
傍聴席から女性の声が響いてきた。
「ただで済まなければ、どうなさると仰るのかしら?」
傍聴席の後ろの席から、三人の紳士淑女が立ち上がった。
「こっこれは、アーリントン公爵夫人、ストレンジ公爵とダートマス侯爵。このような場所にどうして⋯⋯」
「我々三人はシエナ・ウォーカー殿の後見人をしております」
「貴殿がシエナの父親を追い詰める為に利用した、銀行の元頭取の供述書は私が持参しておる」
キャンベル伯爵は真っ青になって椅子に倒れ込み、頭を抱えてしまった。
最初からずっと座ったまま傍観していたオスカーは、何が起きているのか分からず、間抜け面を晒したまま。
「父上、俺の取り分は? 商会は貰えるんだよね」
シエナはイザベラ達に頭を下げた後⋯⋯。
「判事殿、最後に一言だけ⋯⋯キャンベル伯爵に申し上げたいことがございますが宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「キャンベル伯爵様、刺繍デザイナーをお探しとお聞きしました。刺繍のデザインは全て、私がしておりましたの。これで弁償金のお話も片がつきましたかしら?
判事殿、判決をお願いできますでしょうか?」
判事はシエナにむけて大きく頷いた。
「オスカー・キャンベル殿にお聞きしたい。シエナ・ウォーカーとの結婚が白い結婚だったと認めますか?」
「えーっと、父上これって認めても良いやつ? ヤバいやつ?」
「認めるな、馬鹿者! 判事殿この二人は12年もの長い間結婚生活を送っておりました。今更白い結婚などと、馬鹿げた話を聞く必要などありませんぞ」
傍聴席のクロエが突然立ち上がって、オスカーに向けて両手を振った。
「オスカー様ぁ、ほんとのシエナはこっちですぅ。間違わないでぇ」
オスカーは法廷のシエナと傍聴席のクロエを見比べて首を傾げた。
「えっ? 父上、どっちが本物のシエナなの?」
「⋯⋯どうやら白い結婚は間違いありませんな。自分の妻の顔も分からんとは。
判決を申し渡します。オスカー・キャンベルとシエナ・ウォーカーの婚姻は無効。従って、12年間ウォーカー商会から搾取した収益はシエナ・ウォーカーへ返還し、ウォーカー商会はシエナ・ウォーカーのものとする。
ジョージ・キャンベル伯爵並びにオスカー・キャンベルが返済の義務を怠った場合、身分剥奪の上犯罪奴隷として鉱山送りとする」
クロエが判事に親指を立ててサムズアップすると、判事がニヤッと笑い小さくサムズアップしていた。
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