脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

文字の大きさ
66 / 209

チョコパーティー

しおりを挟む
森の奥へと進んでいくと、視界が開けた場所に出た。そこには、チョコレートそのものの噴水が堂々とそびえている。濃厚なとろみのあるチョコレートが勢いよく吹き出し、まるで小さな滝のように流れ落ちていた。

「うわあ、見てメリーちゃん!」リディアは目を丸くして、チョコの噴水の前で立ち止まる。甘い香りが辺りに広がり、胃袋に訴えかけてくるようだ。メリーちゃんも「メェ!」と嬉しそうに鳴き、ふわふわの毛を揺らしている。

噴水の周囲には、テーブルと椅子のように切り株が並んでいる。その切り株さえも、チョコレート色をしていて、ひょっとすると本当にチョコでできているかもしれない。リディアはそっと触れてみた。

「これも全部チョコ……? うわあ、座って大丈夫かな。食べちゃったりしないように気をつけなきゃ」

試しに椅子代わりのチョコの切り株に腰をおろしてみると、柔らかな感触がするけれど、しっかりとした安定感もあった。メリーちゃんも小さな切り株にぴょんと飛び乗り、得意げに胸を張る。

「せっかくだから、ここで休憩しよっか!」リディアは言うや否や、メリーちゃんのもこもこ毛に手を入れてゴソゴソと探る。やがてミルクの入った小瓶と、朝にアラニスの店で買った焼き菓子が姿を現した。

「わーい、おやつタイム開催!」リディアはチョコレートの噴水を横目に、ミルクをコップに注ぎ、焼き菓子をちぎってお皿に乗せた。コップに耳を傾けると、ぷくぷくとミルクが泡立つ優しい音がする。噴水から流れ落ちるチョコの音がBGMになる中、穏やかなひとときが始まった。

「いただきまーす!」さっそく焼き菓子にミルクチョコをちょんとつけて食べてみると、リディアの顔がぱぁっと輝く。「すっごい美味しい! ここでチョコをつけて食べるだけで、なんだか贅沢だよね」

メリーちゃんも、リディアがちぎってくれた焼き菓子のかけらを貰っている。くんくん嗅いでから小さく齧り、満足そうに「メェ」と声を漏らした。

噴水の周りを見回すと、他にも何か甘そうなオブジェがいくつか見える。チョコレートの像や、大きな飴細工のような飾りもあるようだ。ひとつひとつを眺めているだけで、お腹も心も満たされる気分になる。

「チョコレートの森、最高すぎる……」ミルクを一口飲んで小さくため息をついたリディアは、スイーツの甘さが全身を包み込む幸せを感じながら、メリーちゃんの背を撫でた。「このまま秘密基地に持ち帰れるものは持ち帰って、アラニスにもっと変わったお菓子を作ってもらおうかな」

メリーちゃんもそれに同意するように耳をぴんと立てている。ふたりはしばらくの間、チョコレートの森の真ん中で、ゆっくりと甘く幸せな時間を過ごした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

処理中です...