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海の向こうへ
第五話 山の恵みと武勇伝
しおりを挟むその日は、朝早くから山へ行こうと決めた。ここでは山菜が豊富に育っていると聞いていたし、ちょうどタケノコの季節がやってきたところだ。市場で見かけた山菜やタケノコの値段が高いのを見て、私は思わず「自分たちで摘みに行った方が安上がりだし、何より新鮮だ!」と、意気込んでカリムたちに提案した。
「今日は、山菜摘みに行くぞ!」
私は元気に声を上げ、四人で出発の準備を始めた。レイラも、「楽しみだね!」と目を輝かせており、ザイドも少し考えた後、「山道を歩くのは久しぶりだな」と、少し懐かしげに言った。
私は興奮しながらも、やっぱり一番の目的はタケノコの収穫だ。山の奥に進んでいくと、足元に生えている色とりどりの山菜が目に入る。ここでは、イタドリやタラノメ、コゴミなど、たくさんの種類の山菜が顔を出していた。
「これがタラノメか!」
私はそれを見つけては嬉しそうに指を指し、カリムやレイラに教える。タラノメの若葉は、少し苦味があっても、さっと茹でると、山の恵みを感じる味が広がる。ザイドは、木の間から顔を出しているコゴミを見つけ、「これも美味しいんだよな、昔食べたことがある」と懐かしそうに言った。
山道を進むと、途中でタケノコの匂いが漂ってきた。私は目を輝かせ、「あった!」と叫び、皆に走って知らせる。その辺りの地面を掘ると、見事に太くて新鮮なタケノコが顔を出していた。
「よし、これを掘るぞ!」
私は手に持ったスコップを使って、慎重にタケノコを掘り始めた。カリムが手伝おうとしたが、「大丈夫、私がやるから!」と、嬉しさでいっぱいになった私は、力強くスコップを入れた。数分後、無事にタケノコが掘り出され、その白くて瑞々しい姿が私を待っていた。
「これが、本当にタケノコか!」
レイラが驚きの声を上げると、ザイドも「こんなに立派なものが生えているなんて…」と感心していた。
タケノコを収穫した後、私たちはさらに山菜を摘みながら、少しずつ下山を始めた。帰り道では、竹林の中を通り抜ける時に、タケノコの根元にもう少し新しいものが見つかることもあった。私はそれを見つけるたびに、嬉しそうにそれを摘み取った。
「今日は収穫がいっぱいだ!」
私は元気に言いながら、袋に収めた山菜やタケノコを持って、みんなと一緒に家に帰る。帰る途中、ふと思い出したように、「今夜はタケノコの炊き込みご飯を作ろう!」と提案してみた。みんなも賛成してくれて、「楽しみにしているよ!」と口々に言ってくれる。
夕食の時間が近づくにつれて、私はタケノコの炊き込みご飯の準備を始めた。先に炊き込むお米に、採れたてのタケノコを細かく切って混ぜ込み、出汁をきかせた煮物のようにして炊き上げる。タケノコの香りが広がると同時に、山菜の天ぷらをサイドディッシュにしようと決め、イタドリやコゴミを軽く衣をつけて揚げることにした。
「さあ、みんな!晩ご飯だよ!」
私は出来上がった料理をテーブルに並べ、みんなを呼ぶ。タケノコの香りと山菜の天ぷらの香ばしさが部屋に広がり、みんなが席に着くと、すぐに食べ始めた。
「うわ、タケノコがホクホクで美味しい!」
カリムが感嘆の声を上げると、レイラも「うん!あの山の中で食べたものとは比べものにならないくらい美味しい!」と笑顔を見せた。ザイドも「ああ、これこそ山の恵みだな」と頷きながら、しっかり食べている。
その日は、山菜とタケノコを存分に味わいながら、私たちは久しぶりに自然の恵みを堪能した。あらためて、自分たちの手で収穫した食材が、こんなにも美味しく感じることに、心から幸せを感じた。
そして、私は思う。「これからもどんどん、新しい場所でいろんな食材を見つけて、挑戦していこう!」と。
市場で屋台を開いている私たちは、毎日さまざまな料理を提供しているけれど、今日はちょっと特別だ。隣の屋台から、香ばしい香りが漂ってきて、ついついその方向に目を向けてしまった。
隣の店主が今日売っているのは、鹿やイノシシ肉だ。炭火でじっくり焼かれた肉は、こんがりと香ばしく、煙の中で食欲をそそる。店主は大きな手で串をひっくり返しながら、にっこりと笑っている。背後には、ちょっとした小道具が並び、まるで戦利品を並べているかのようだ。
「おい、あの肉、いい匂いだな」
カリムが鼻をひくひくさせながら言った。レイラも興味津々で、「鹿肉ってこんなに美味しそうに焼けるんだ!」と、目を輝かせている。
私も負けじと、「ちょっと買いに行こうか!」と、みんなを引っ張って隣の屋台に向かった。店主は、こちらに気づくと、にっこりと笑って一言、「今日はいいものがありますよ」と、自信満々に言った。
「お兄さん、鹿肉やイノシシ肉、どれにする?」
店主は大きな包丁を手に取りながら、焼き上がった肉を一本一本串に刺して差し出してくれた。
「うーん、全部美味しそうだな。鹿肉を一つもらおう!」
私は意を決して、鹿肉を選んだ。カリムとレイラもそれぞれイノシシ肉を選び、ザイドも「じゃあ、僕もイノシシにしよう」と言って、それぞれ手に串を持って戻った。
焼けた肉は、じゅわっと肉汁を垂らしながら、炭火の香りと混じって芳醇な味を引き立てていた。一口かじると、鹿肉の淡白でありながらも、うま味がしっかりと詰まっていて、驚くほど柔らかい。
「うわ、これは絶品だ!」
私は思わず声をあげてしまった。カリムも口を開けて、「うん、こりゃいい肉だ」と納得している。レイラは「こんなに美味しいの、初めて食べた!」と感動していた。
そのまましばらく黙々と肉を食べていたが、店主がこちらに声をかけてきた。「よかったら、少し俺の話も聞いてくれませんか?」と、嬉しそうに言う。
「え、話?」
私は思わず目を丸くして、店主を見つめた。
「はい、実はこの肉、ただの鹿やイノシシじゃないんですよ。今日はちょっと特別なものを狩ったものでして、話すと長くなりますが…」
店主は煙の中で一息つきながら、嬉しそうに語り始めた。
「俺、山でこの肉を手に入れるために、昨日一晩中、深い森の中を歩き回ったんです。鹿の群れを見つけて、うまく忍び寄り、逃げられる前に一撃で仕留めたんですよ。いやあ、あの時は緊張しましたが、結果的に素晴らしい肉が手に入って、本当にラッキーでした」
私は食べながら、その話に引き込まれていった。カリムも目を輝かせて聞き入り、レイラも手を止めてじっと耳を傾けている。
「イノシシはまた別の話で、あれは追い詰めるのが本当に大変なんですよ。力強くて、走り回る速さも尋常じゃない。でも、そんな挑戦があるからこそ、獲物を手に入れたときの達成感は格別なんです」
店主は話しながら、また肉をひっくり返した。
「そうやって、山で獲物を手に入れるために、一歩間違えば命を落とすことだってある。それでも、この仕事をしているのは、やっぱり食べる人たちが喜んでくれるからだね」
店主の目は、ただの商売ではなく、情熱を感じさせるものがあった。
「そうか、すごいな。そんなに苦労して手に入れた肉だと、なおさら美味しく感じるね」
私は感心しながら、肉を口に運んだ。
「まぁ、あれほどの道のりを経て、獲物が手に入るからこそ、あの味があるんですよ。でも、こうして食べてくれる人がいると、何だかそれも報われた気がして嬉しいです」
店主はにっこりと笑いながら、串をひとつ差し出してくれた。
その後、私たちは少しだけ店主と話を続け、山での冒険や武勇伝を楽しんだ。そして、改めてこの国の文化に触れながら、「どんなに苦労しても、食べ物を育て、獲り、作る人たちがいるからこそ、私たちもこうして美味しいものを味わえるんだ」と実感することができた。
その日の夜、私は寝床に入ると、山の香りと肉のうま味を思い出しながら、明日もまた、新しい発見があることを楽しみにして眠りについた。
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