魔力無しの黒色持ちの私だけど、(色んな意味で)きっちりお返しさせていただきます。

みん

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14 黒狐

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「足に打ち身があるだけで、他は大丈夫そうだから、本当に運が良かったとしか言いようがないわ。それでも、後から不調が出て来る事もあるから、1週間は安静に過ごすように」

と、校医とオティリーさんから同じ事を言われた。

フランシーヌとのやり取りの後、私はバランスを崩してそのまま階段から落ちてしまったそうだ。ただ、その階段は段数の少ない階段だったお陰もあり、打ち身はできたけど、大きな怪我はなかった。
あの馬車が倒れた時もそうだったけど、私は運が良い。それはきっと、私の魂の一部が黒狐で……身体に魔力ではなく“妖力”が流れているからだ。

「シロ………」

クロの私は記憶を失っていただけだけど、シロは記憶を持っていない。思い出す事も無い。

シロは、魂を失ってしまったから

シロは、あの時、クロの私を庇って死んでしまった。

クロの私だけが助かった。




『**の願いでもあるから叶えたいが、アレを逃してしまったから、お前は違う場所に送り出すわ。クロ、申し訳無いけど、シロに記憶を残す事はできないわ。シロは時を見て────』




誰だったか思い出せないけど、生き残ったクロの私はアンバーとして異世界へと飛ばされた。だから、私には伯爵に拾われてからの記憶しかなかったのだ。

そしてシロ。シロは真っさらな状態で転生して私とは違う世界で生きていたけど、召喚されて偶然この世界にやって来た─とは考え難い。とすれば───


「アンバー!大丈夫か!?」
「っ!!??グッ……ウェイン様!?」
「グウェイン、少し落ち着いた方が良いよ?」

バンッと、ノックも無く扉を開けて入って来たのはグウェイン様とウィル様とコユキだった。

「心配を掛けてしまってすみません。少し痛い所もあるけど、大丈夫そうです。私、運は良いみたいです」

ー『妖狐だから』とは言えないー

でも、全てを隠しておくのもどうなのか?ウィル様とグウェイン様は、無条件で私を助けてくれた優しい人達だ。コユキには話せないけど、ウィル様とグウェイン様には少しだけ話しておいても良いかもしれない。


「私には、これだけしかできないなら」と言って、コユキは私の打ち身を治癒してから、王城へと帰って行き、私もウィル様とグウェイン様と一緒にスペンサー邸へと帰って来た。



「あの…少し時間はありますか?お話したい事があって…」
「それじゃあ、サロンでお茶でも飲みながら聞こうか。でも、少しでも体調が悪くなったら言うように」
「はい」

サロンにお茶を用意してもらった後、オティリーさんとカリーヌさんにも来てもらって、話をする事にした。真実と嘘を交えて。


私はウェザリア王国の人間ではない事(ただし、どこの国出身かは思い出せない)

家族の事は思い出せないけど、死別して独りになっていた事

私が、狐の獣人だと言う事



「狐の獣人ね…なるほど。それなら少しは納得ね」
「納得?」

うんうん─と頷くのはスペンサー専属医のオティリーさん。

「人間にしては、事故に遭っても大した怪我をする事もないし、ウェントで虐げられていたにしても、体が耐えれていたのが不思議だったのよ。でも、基本の身体能力が高い獣人と言うなら有り得るから」

確かに、それも一理あるけど、一番の理由は黒狐だからだろう。でも、この世界に妖狐─妖は存在しないから、説明をするのは難しい。魔獣や魔物扱いなんてされれば命すら危ない。だから、狐の獣人で良い。

「しかし、ウェントの人間は異常だな。このまま放っておくのも良くないだろうけど……アンバー、いっその事、ウェントから籍を抜くか?」
「籍を抜く?抜けるんですか?」
「抜けると思うよ。ウェントからの虐待を、俺達が確認済みだし、医者であるオティリーの診断書だってあるからね。まだアンバーは成人してないけど、スペンサーが保護者にでも後見人にでもなれるし…」
「スペンサー家が!?ウィル様達に、そこまで迷惑は───」

正直、ウェントの籍から抜けられるのなら抜けたい。記憶を取り戻した今なら、独りでも生きていけると思う。

「迷惑ではないよ。妹ができたら………父も母も飛ぶ勢いで喜ぶしか目に浮かばない。あぁ、何ならリオナも喜ぶか?」
「リオナ?」
「ウィルの婚約者で、猫の獣人だ。ウィルの留学が終わったら、結婚式を挙げる予定なんだ」

それなら逆に、血の繋がらない女が妹になるなんて、婚約者の立場からすれば嫌なんじゃないだろうか?

「ま、今すぐ決めるのは難しいだろうから、ウェントから籍を抜くのは抜くとして、その後どうするかはゆっくり考えると良いよ。取り敢えずは、これ以上ウェントが何もして来ないように……しておくから」
「ありがとう……ございます………」

ニッコリ微笑むウィル様の笑顔は、とても爽やかで………とても圧がすごいものだった。






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