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7 聖女
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「それと、これはまだ公表されてない極秘事項なんだけど、実は、俺とウェント嬢以外にも、後2人の黒色持ちが入学するそうだよ」
「え!?他にも2人!?」
私と同じ年で黒色持ちが居るなんて、今迄聞いた事がない。でも、留学生は2人だけで、黒色持ちはそのうちの1人─スペンサー様だけだった筈。
「“召喚された聖女様”と言えば分かるかな?」
“聖女様”
その名が初めて記されたのは、この国の王族の始祖となる騎士が黒色の魔女を倒した後、荒れた土地を浄化し、穢れを負い眠りに就いていたアンブロンズ神を、浄化治癒して目覚めさせたのが、後に“聖女”と呼ばれるようになった“異世界人”の事だった。
この世界は、神々が創った世界の一つで、こことは違う世界が存在すると言われている。その異世界から召喚してやって来るのが“聖女”。その聖女のみ持つ事ができると言われているのが、“光”の魔力。理由は定かではないけど、異世界人が召喚されて世界を跨ぐ時に、神々の許しと共に与えられる加護の一つとされている。
そして、その聖女は、残されている文献によれば200年から300年に一度召喚されている。その理由は、そのサイクルでこの国の土地の穢れが酷くなったり、国全体に張っている結界の力が弱くなり、魔物が溢れ出す可能性が高くなるから。
「“聖女”とは…お伽噺ではなかったんですね」
「そう思っても仕方無い。何せ、今回の召喚は200年ぶりだそうだから……」
200年ぶり──
聖女については、たまたま伯爵の書斎の掃除をしていた時に目にしてこっそり読んだもので、あの時に読んでいなければ、聖女が召喚された異世界人だなんて知る事はなかっただろう。
「その聖女と、黒色持ちとの関係は?」
「その召喚された聖女達が黒色持ちで、学校に入学する事になったらしい」
「え!?」
「それで、ここぞとばかりに俺の留学もアッサリと決まったんだ。で、ついでにと言ってはなんだけど、同じ黒色持ちのウェント嬢が俺だけじゃなく、俺達のサポートをしてくれるのを、国王陛下も望んでいる感じではあったかな?」
「え……」
そう言われてしまえば、断る事は難しい。
私が、ちゃんと教育を受けている伯爵令嬢だから任せられる─とでも思っているのだろう。
「私が役に立てるかどうかは分かりませんけど、精一杯、頑張らせてもらいたいと思います……」
「ありがとう!受けてもらえて良かっ──」
「ただ、迷惑ついでに、一つだけお願いしても良いですか?」
「お願い?できる範囲でなら……」
「それでは………」
*ウィル=スペンサー視点*
『入学迄の3ヶ月、私に貴族のルールを教えてくれる人を付けてもらえませんか?』
「ウェント嬢は真面目だよね」
「ウィルが強引にいくからだろう。あそこで国王を出せば、誰だって断る事なんてできないからな」
「仕方無いよね?あそこで国王を出してでも頷いてもらわないと、ウェント嬢を守れないからね」
本当に、ウェント嬢を見て驚いた。黒色持ちと言うだけで、あんなにも酷い仕打ちができるのかと。勿論、相手は女性だから、直接俺の目で確認した訳じゃないけど、オティリーの報告書によれば、他人の目に入らない背中やお腹には、無数の傷痕や打ち身の痕があるそうだ。痩せ過ぎと言う事はないが、栄養失調の手前迄来ていて、このままではいつ寝たきり状態になってもおかしくない状態だったそうだ。
『そんな体で、よくここまで動けてたのかが不思議なくらいよ』
叔父上も、ウェント嬢を抱き上げた時『軽過ぎて心配になる』と言っていた。調べればすぐに分かる筈の事が、国から派遣された調査員が把握し切れていなかったのだから、国王が俺達に頼って来たのも仕方無い。
「国の調査員達も、暫くの間泳がせるらしいよ」
この国の黒色持ちは、ウェント嬢だけではなく、他にも数名居るそうだけど、調査員がマトモに機能していないのなら、他の黒色持ちも虐待をされていたり、不当に補助金を受け取っている場合もある可能性があると言う事で、今回、ウェント嬢の事ですぐには動かず、調査員や保護者を泳がせて監視して調べる事にしたそうだ。
「兎に角、ウェント嬢が引き受けてくれて良かった。後は、ここでの生活では彼女が平穏に過ごせるようにしないとね」
何事も諦めたような目をしたウェント嬢。その目に少しでも、光が灯るように───
*??????*
『ようやく痕跡を見付けたところで……』
『アレも焦っているんだろう…』
『でも……二度も同じ事は繰り返さないわ。今度こそ、彼女の願いを叶えて、アレにはお礼をしっかりさせてもらうわ』
酷く冷たい黒色の瞳で、黒色の長い髪の女性が呟けば、黒色の瞳と髪の男性は愉快そうに笑った後、片手を翳して魔法を展開させた。
「え!?他にも2人!?」
私と同じ年で黒色持ちが居るなんて、今迄聞いた事がない。でも、留学生は2人だけで、黒色持ちはそのうちの1人─スペンサー様だけだった筈。
「“召喚された聖女様”と言えば分かるかな?」
“聖女様”
その名が初めて記されたのは、この国の王族の始祖となる騎士が黒色の魔女を倒した後、荒れた土地を浄化し、穢れを負い眠りに就いていたアンブロンズ神を、浄化治癒して目覚めさせたのが、後に“聖女”と呼ばれるようになった“異世界人”の事だった。
この世界は、神々が創った世界の一つで、こことは違う世界が存在すると言われている。その異世界から召喚してやって来るのが“聖女”。その聖女のみ持つ事ができると言われているのが、“光”の魔力。理由は定かではないけど、異世界人が召喚されて世界を跨ぐ時に、神々の許しと共に与えられる加護の一つとされている。
そして、その聖女は、残されている文献によれば200年から300年に一度召喚されている。その理由は、そのサイクルでこの国の土地の穢れが酷くなったり、国全体に張っている結界の力が弱くなり、魔物が溢れ出す可能性が高くなるから。
「“聖女”とは…お伽噺ではなかったんですね」
「そう思っても仕方無い。何せ、今回の召喚は200年ぶりだそうだから……」
200年ぶり──
聖女については、たまたま伯爵の書斎の掃除をしていた時に目にしてこっそり読んだもので、あの時に読んでいなければ、聖女が召喚された異世界人だなんて知る事はなかっただろう。
「その聖女と、黒色持ちとの関係は?」
「その召喚された聖女達が黒色持ちで、学校に入学する事になったらしい」
「え!?」
「それで、ここぞとばかりに俺の留学もアッサリと決まったんだ。で、ついでにと言ってはなんだけど、同じ黒色持ちのウェント嬢が俺だけじゃなく、俺達のサポートをしてくれるのを、国王陛下も望んでいる感じではあったかな?」
「え……」
そう言われてしまえば、断る事は難しい。
私が、ちゃんと教育を受けている伯爵令嬢だから任せられる─とでも思っているのだろう。
「私が役に立てるかどうかは分かりませんけど、精一杯、頑張らせてもらいたいと思います……」
「ありがとう!受けてもらえて良かっ──」
「ただ、迷惑ついでに、一つだけお願いしても良いですか?」
「お願い?できる範囲でなら……」
「それでは………」
*ウィル=スペンサー視点*
『入学迄の3ヶ月、私に貴族のルールを教えてくれる人を付けてもらえませんか?』
「ウェント嬢は真面目だよね」
「ウィルが強引にいくからだろう。あそこで国王を出せば、誰だって断る事なんてできないからな」
「仕方無いよね?あそこで国王を出してでも頷いてもらわないと、ウェント嬢を守れないからね」
本当に、ウェント嬢を見て驚いた。黒色持ちと言うだけで、あんなにも酷い仕打ちができるのかと。勿論、相手は女性だから、直接俺の目で確認した訳じゃないけど、オティリーの報告書によれば、他人の目に入らない背中やお腹には、無数の傷痕や打ち身の痕があるそうだ。痩せ過ぎと言う事はないが、栄養失調の手前迄来ていて、このままではいつ寝たきり状態になってもおかしくない状態だったそうだ。
『そんな体で、よくここまで動けてたのかが不思議なくらいよ』
叔父上も、ウェント嬢を抱き上げた時『軽過ぎて心配になる』と言っていた。調べればすぐに分かる筈の事が、国から派遣された調査員が把握し切れていなかったのだから、国王が俺達に頼って来たのも仕方無い。
「国の調査員達も、暫くの間泳がせるらしいよ」
この国の黒色持ちは、ウェント嬢だけではなく、他にも数名居るそうだけど、調査員がマトモに機能していないのなら、他の黒色持ちも虐待をされていたり、不当に補助金を受け取っている場合もある可能性があると言う事で、今回、ウェント嬢の事ですぐには動かず、調査員や保護者を泳がせて監視して調べる事にしたそうだ。
「兎に角、ウェント嬢が引き受けてくれて良かった。後は、ここでの生活では彼女が平穏に過ごせるようにしないとね」
何事も諦めたような目をしたウェント嬢。その目に少しでも、光が灯るように───
*??????*
『ようやく痕跡を見付けたところで……』
『アレも焦っているんだろう…』
『でも……二度も同じ事は繰り返さないわ。今度こそ、彼女の願いを叶えて、アレにはお礼をしっかりさせてもらうわ』
酷く冷たい黒色の瞳で、黒色の長い髪の女性が呟けば、黒色の瞳と髪の男性は愉快そうに笑った後、片手を翳して魔法を展開させた。
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