37 / 82
二度目の召喚
アレの行方は?
しおりを挟む「何と言うか……うん。兎に角、ウィステリアさんが無事で良かった。」
ポンポン─と、アズールさんが私の頭を優しく叩く。
「ルーファス、嫉妬からの圧は見苦しいからな?」
「くくっ──」
「?」
アレサンドル様の突っ込み?からのアズールさんの苦笑……チラッとシーヴァーさんを覗い見てみるけど、そこには、やっぱり穏やかに微笑んでいるシーヴァーさんが居ただけだった。
「それじゃあ、私からも報告させてもらうわね」と、今度はニッコリ微笑むキッカさんが嬉々として語った内容は──
「アレを……向こう側に連れて行った!?」
私を召還させたアリシア様の処遇は“一生涯幽閉”だったけど、それは大福より甘過ぎる!とキレたキッカさんが、アリシア様を預かり……日本へ連れ渡ったそうだ。
「連れて行ってあげたのだけど、つい、うっかり落としてしまったみたいでね?何処に落とし─落ちてしまったか分からなくて……見つける迄…半年位はかかると思うわ。」
“落ちた”
“半年見付からない”
“因果応報って、良い四字熟語だと思わない?”
ーなるほどー
何処に落としたのかは訊かない。訊いたところで、私がアリシア様を助ける事はない。私はそこまでお人好しじゃない。“ざまぁみろ!”とまでは思わないけど、“他人の痛み、苦しみを知りなさい!”と思う。
「ウィステリアさんも、文句の一つや二つ、言っても良いんじゃない?慰謝料の請求なんかもできそうだよね?」
アズールさんの言葉に、キッカさんはうんうんと頷いているけど──
「文句を言ったところで、再召還された事実が無くなるわけじゃないし……それよりも……あぁ、万能な筈の神様達も、私達─人間と同じでミスをするんだなぁ──なんて思って…」
と言っても、キルソリアン邸に居る時に愚痴ったけどね。それに……謝罪されても受け入れられるモノじゃない。
「ウィステリアさんは、欲?が無いね…俺なら、一生遊んで暮らせるお金を強請るかも」
なんて言って笑っているアズールさんは、この世界に残って、今では王城での生活より国内を飛び回って魔獣を狩りまくっていると言う事は、ここでの生活に満足している─と言う事なんだろう。
それからもアズールさんと色んな話をしたけど、その話のなかで、久保さん─エメラルドの名前が出て来る事はなかった。
「それじゃあ、ウィステリアさん、俺はまたあちこち飛び回るけど、王都に帰って来た時は、またお茶でもしような?」と言って、アズールさんはまた、魔獣狩りの旅に出て行った。
「………」
「ウィステリア殿、どうかした?」
少し、ボーッとしていた私に声を掛けてくれたのはシーヴァーさん。シーヴァーさんに言っても良いのか?と少し躊躇いもあったけど……
「あの………エメラルドは……どうしてるんですか?」
私の問に、少しだけ目を大きくしたシーヴァーさん。
「エメラルド殿に関して……私から少し話をしておくよ」
と、少し困ったような顔をしたアレサンドル様がいた。
『──ウィステリアが………憎いけど…羨ましかった…嫌いだけど……羨ましいの………』
日本に居た時も喋った事はなくて、この世界に来てからも殆ど喋った事はなかったのに
「嫌われてるとは…思わなかった………」
好かれてはいないとは思ってたけど…
「私、エメラルドに何かしたっけ?」
「あー…その辺の話は…キッカ殿、少しだけで良いから、ルーファスに時間をやってくれないか?」
「良いわよ。」
何故か、アレサンドル様とキッカさんはそれだけ言うと、私とシーヴァーさんを残して部屋から出て行ってしまった。
「「…………」」
どうしよう?と少し焦っていると、「少し、話を聞いて欲しい─」とシーヴァーに言われて、コクリ─と頷いた。
*アレサンドルとキッカ(アレサンドル視点)*
「私からお願いしておいてなんだが…すんなり2人にして…良かったのか?」
「ウィステリア様が、本気で嫌がるのなら、私だって2人になんてさせないわ。でもね──あの2人には、もっと会話が必要なのよ。」
んー…と、キッカ殿は少し考えるように黙った後
「また還るとしても、1年はこの世界に居るのなら、ウィステリア様が楽しく過ごせるようにしてあげたいし…あの2人か微笑み合っているところを……見せつけてやりたい──なんて事は思ってないけどね。」
ーいや、それ、絶対思っているよな?寧ろ、そっちが主な理由では?その前に、エメラルド殿も愛し子ではなかっか?ー
「そうそう、話は変わるけど……お前の妹だった者だけどね?」
どうやら、キッカ殿もアレの名前を呼ぶのも嫌なようだ。私も嫌だから気持ちはよく分かる。
「アレが…殺した魔導士が居たでしょう?あの魔導士はね、私の主が掬ってくれて……そのまま、あっちの世界に転移させたのよ。魔力は失ったけど、今は楽しそうに過ごしているわ。」
「それは……ありがたい。本当にありがとうございます。」
アレの犠牲になったのは、平民の魔導士だった。平民ではあるが、そこそこの魔力持ちで身寄りの無い40代の女性だった為、居なくなっても騒ぎにはなっていなかったのだ。
「彼女ね、あっと言う間に向こう側に馴染んでね…あ、私、その彼女が居る辺りで、アレを落としたのかもしれないわね……」
ふふふっ──とほくそ笑むキッカ殿。
魔力なんて無い世界。聖女を必要としていない世界。王族の身分も関係のない世界。やってもらって当たり前に育ったアレが、自分勝手な理由で殺された筈の者の目の前に現れたら──
ー私なら、とことん……やり返すー
64
お気に入りに追加
2,547
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
魔法使いの恋
みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。
そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。
❋モブシリーズの子供世代の話になります❋
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
双子の姉妹の聖女じゃない方、そして彼女を取り巻く人々
神田柊子
恋愛
【2024/3/10:完結しました】
「双子の聖女」だと思われてきた姉妹だけれど、十二歳のときの聖女認定会で妹だけが聖女だとわかり、姉のステラは家の中で居場所を失う。
たくさんの人が気にかけてくれた結果、隣国に嫁いだ伯母の養子になり……。
ヒロインが出て行ったあとの生家や祖国は危機に見舞われないし、ヒロインも聖女の力に目覚めない話。
-----
西洋風異世界。転移・転生なし。
三人称。視点は予告なく変わります。
ヒロイン以外の視点も多いです。
-----
※R15は念のためです。
※小説家になろう様にも掲載中。
【2024/3/6:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
【完結】前世聖女の令嬢は【王太子殺害未遂】の罪で投獄されました~前世勇者な執事は今世こそ彼女を救いたい~
蜜柑
恋愛
エリス=ハウゼンはエルシニア王国の名門ハウゼン侯爵家の長女として何不自由なく育ち、将来を約束された幸福な日々を過ごしていた。婚約者は3歳年上の優しい第2王子オーウェン。エリスは彼との穏やかな未来を信じていた。しかし、第1王子・王太子マーティンの誕生日パーティーで、事件が勃発する。エリスの家から贈られたワインを飲んだマーティンが毒に倒れ、エリスは殺害未遂の罪で捕らえられてしまう。
【王太子殺害未遂】――身に覚えのない罪で投獄されるエリスだったが、実は彼女の前世は魔王を封じた大聖女・マリーネだった。
王宮の地下牢に閉じ込められたエリスは、無実を証明する手段もなく、絶望の淵に立たされる。しかし、エリスの忠実な執事見習いのジェイクが、彼女を救い出し、無実を晴らすために立ち上がる。ジェイクの前世は、マリーネと共に魔王を倒した竜騎士ルーカスであり、エリスと違い、前世の記憶を引き継いでいた。ジェイクはエリスを救うため、今まで隠していた力を開放する決意をする。
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる