上 下
36 / 82
二度目の召喚

アズールとの再会

しおりを挟む

三日三晩寝続けたキッカさん。

「よく寝たわ!妖力も魔力も完全回復!」

と元気良く目覚めた──と思ったら

「ちょっと出掛けるけど、すぐ戻るから!」

と言って、また邸から出て行ってしまった。何とも忙しい妖狐である。

結局、キッカさんが帰って来たのは、その日の夕方だった。そして、何故かとても上機嫌だった。

「何か良い事でもあったんですか?」と訊けば、「“因果応報”って、良い四字熟語だと思わない?」と、笑顔で訊かれた。

ーどっちの意味での因果応報ですか?ー

とは訊けずに、「ソウデスネ」とだけ答えておいた。








“アズールが王城にやって来る”


と言う手紙がアレサンドル様から届き、キッカさんも丁度良いわ─と言う事で、私達もアズールさんに合わせて登城する事にした。アズールさんにはお礼を兼ねて……みたらし団子を作ってみた。イチコとニコが、和菓子大好き妖狐で、色んな和菓子を作ってくれるのだ。それを、ブランも一緒になって4人で炬燵で食べる─が、毎日のルーティンになりつつある。

今回の登城は、アレサンドル様からの提案で、キッカさんの転移魔法で、アレサンドル様の執務室に転移すると言う事になった。アレサンドル様は、相変わらずよく気の利く王子様だ。






「ウィステリア殿、キッカ殿、来てくれてありがとう。本来なら、私が足を運ぶべきところだったんだが…」

「そんな!まさか!態々王太子様に来てもらうなんて、とんでもないですから!それに、私もキッカさんの魔法で一瞬で来ましたから!」

ー王太子が家に来るとか、色んな意味で遠慮したいー

「ウィステリア様、大丈夫です。私の邸には、私が許可した者しか辿り着きませんから。」
「え?」

ニッコリ微笑むキッカさん。

キッカさんは、本来の仕事を終えた後『本日から、私は愛し子である志乃様をお護りする役目を務めさせていただきます!』と言って、様呼びされるようになった。何でも、キッカさんの主である神様から、私がこの世界に居る間は私に付いて護るように─と言われたそうだ。アフターサービス…だろうか?
兎に角、キッカさんはとても頼りになるから、一緒に居てもらえるのは嬉しい。

「そうか…キッカ殿は凄い魔力の持ち主なんだな…そうか……辿り着かないのか………」

顔を少し引き攣らせて呟いているアレサンドル様からすると、キッカさんは本当に凄い魔力持ちなんだろう。

「ウィステリア殿、お久し振りです。」
「あ、シーヴァーさん。こんにちは。」

シーヴァーさんは、相変わらずの優しい目で微笑んでいる。

ー少しドキッとしたりしてなくもないですけどねー

「アズールももうすぐ来ると思うから、ウィステリア殿とキッカ殿はそこに座ってくれ。」

私とキッカさんは言われた通りに座り、アレサンドル様が私の向かい側の椅子に座った時「殿下、アズール様をお連れしました。」と、扉の外側から声が掛かった。「入ってくれ」とアレサンドル様が返事をすると、アズールさんが入って来た。

ー久し振りの…本間君だー

「アレサンドル様、召喚された者らしき人って……かん─ウィステリアさん!?」

ーあ、本間君、私の名前知ってたんだ!?ー

「え?何で…え?」

ーそりゃ驚くよね?私、4年前に還ったからねー

「まさか!召還されたのって……」
「はい、そのまさかです。再召還されました。」
「───マジか…………」
「はい。残念ながら、マジですね。」
「「…………ふっ───」」

と、私とアズールさんは同時に笑い出した。






「ルーファス、その嫉妬からの圧を抑えろ……アズール殿も愛し子だからな?」
「分かってます」
「ルーファス、ウィステリア殿がその圧に気付く前に抑えろ……嫌われるぞ?」
「分かりました……」


アレサンドルとルーファスのそんなやりとりを、志乃だけは気付く事はなかった。





それから、改めて、アズールさんのお陰で私を見付けてもらえたからと、お礼にみたらし団子を渡すと「うわー、めちゃくちゃ懐かしいな!」と、喜んで受け取ってもらえて、その場で早速食べてくれました。勿論、多目に作って来ていたから、アレサンドル様とシーヴァーさんにも食べてもらったら、「美味しい」と言ってもらえた。

「それで?一体誰が、召還魔法なんて使ったんですか?」

とアズールさんが質問すると、アレサンドル様が「その事について、2人には全て話しておくよ」と、私がキッカさんの邸で引き篭もっていた間にあった事を話してくれた。



それは、アリシア様の自分勝手な行いであり、とても残酷な話だった。

私は、本当に運良くこの世界に辿り着いて、売られて買われたけど、運良く未成年に間違えられて、そこで、運良く使い(妖)魔のキッカさんに会えた。

「あ、そう言えば、初めてキッカさんに会った時、一瞬驚いたような顔をしてましたよね?」

「はい。それはそれは…本当に驚きましたからね。還った筈の愛し子様が、枷を嵌められて目の前に現れたので……それに………」

千代様あるじから怒りを喰らうよね──”

と、その時、体が震えてしまったのは、菊花わたしだけの秘密だ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

【完結】前世聖女の令嬢は【王太子殺害未遂】の罪で投獄されました~前世勇者な執事は今世こそ彼女を救いたい~

蜜柑
恋愛
エリス=ハウゼンはエルシニア王国の名門ハウゼン侯爵家の長女として何不自由なく育ち、将来を約束された幸福な日々を過ごしていた。婚約者は3歳年上の優しい第2王子オーウェン。エリスは彼との穏やかな未来を信じていた。しかし、第1王子・王太子マーティンの誕生日パーティーで、事件が勃発する。エリスの家から贈られたワインを飲んだマーティンが毒に倒れ、エリスは殺害未遂の罪で捕らえられてしまう。 【王太子殺害未遂】――身に覚えのない罪で投獄されるエリスだったが、実は彼女の前世は魔王を封じた大聖女・マリーネだった。 王宮の地下牢に閉じ込められたエリスは、無実を証明する手段もなく、絶望の淵に立たされる。しかし、エリスの忠実な執事見習いのジェイクが、彼女を救い出し、無実を晴らすために立ち上がる。ジェイクの前世は、マリーネと共に魔王を倒した竜騎士ルーカスであり、エリスと違い、前世の記憶を引き継いでいた。ジェイクはエリスを救うため、今まで隠していた力を開放する決意をする。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

魔法使いの恋

みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。 そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。 ❋モブシリーズの子供世代の話になります❋ ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

王太子妃候補、のち……

ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。

処理中です...