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第四章ー王都ー
パルヴァンの騎士とリス
しおりを挟むパルヴァン様とレオン様とティモスさんは…分かる。でも…えー…ルナさんもリディさんも…とんでもない…女騎士だったのか…。
ーえ!?私の専属侍女になる為に勝ち抜いたって、そう言う意味だったの!?ー
「…少しは、目が覚めましたか?」
静かにだけど、少し怒りが込められたような低い声が響いた。
どうやら、パルヴァン様達は私とレイナさんには気付いていないようだ。
「あぁ…目が…覚めた。助かった…。」
そう答えた人の声は─王太子様だった。
後ろ姿しか見えないけど、満身創痍で立っている数名の騎士様達のうちの一人だ。何故、王太子様が第一騎士団の訓練にいるんだろうか?
『…少しは、目が覚めましたか?』
『あぁ…目が…覚めた。助かった…。』
レフコースが言っていた。
『一番酷い症状が出ているのは、主と我の魔力が込められた魔石をピアスにしている3人のうちの1人だ。』
成る程。王太子様は、かなり症状が悪化していたんだろう。それで、この訓練に参加させられたと言う事か。そして、パルヴァン様も、容赦無くやったと…。
え?第一騎士団より、パルヴァンの騎士の方が凄いって事…なの!?
『狼の群れの中のリス』
ーうん。私はリス…以下だろうー
「えっと…薬師として訊きますけど…治療とかした方が良いんでしょうか?」
「パルヴァン伯様次第…ですね。」
ーですよね!勝手に治療したら、その分また、その人がしごかれそうだー
「「ルディさん!!」」
「ふぁっ!?」
急に大声で名前を呼ばれて、また変な声を出してしまったよ!と、呼ばれた方を見ると、ルナさんとリディさんが私の方に向かって走って来て─
「ぐふぅーっ」
はい、またそのままの勢いで抱き付かれました。
ー抱き枕なハルですー
「ルディさん、もう身体は大丈夫なんですか?」
ルナさんが泣きそうな顔をしながら訊いて来る。
「はい、もうすっかり元気ですよ!心配を掛けてごめんなさい。」
「本当に、元気になって…良かったです。」
リディさんも泣きそう顔をしながら、でも笑顔で良かったと言ってくれた。
感動的な再会?なんだけど…よく見たら…ルナさんもリディさんも…服に血が付いている…恐らく…返り血だろう…。ルナさんもリディさんも、怪我をしている感じは全く無い。
ー恐るべし、パルヴァンの騎士ー
「ルディ、どうして訓練場に?何かあったのか?」
と、パルヴァン様に声を掛けられた
「えっと…訓練も、そろそろ終わりかなと思いまして…あーお迎えに来ました!」
「…そうか…まだまだ足りないかと思ったが…。」
ー足りないって、何が!?ー
「仕方無い、ルイス、後は頼んだ。」
「…承知しました。」
パルヴァン様の後ろに控えていた年配の騎士様が、やや引き攣り顔で頭を軽く下げた。誰だろう?と思って見ていると、その騎士様も私の方を見て来たので、目が合ってしまった。
「あなたが…薬師のルディ殿だろうか?」
「あ、はい。」
「私は、第一騎士団団長を務めている、ルイス=カルザインだ。此度の事、我ら第一騎士団の落ち度でもある。すまなかった。」
と、第一騎士団長様が頭を下げる。
「そんな、頭を上げて下さい!」
第一騎士団のトップに頭を下げられるなんて、心臓に悪過ぎる!って─“カルザイン”って、言わなかった?
「あのーっ、カルザイン様と言うと…私を助けてくれた─…」
「あぁ、それは私の息子のエディオル=カルザインだ。」
ーやっぱり。確かに、よく見ると似ている気がするー
「私、目が覚めてから、まだお会いしていないので、お礼も言えていないんですけど。」
「そう…なんですか?あぁ、丁度良かったのかも知れない。エディオル!」
騎士団長様が、私の後ろへと視線をやり、声を張り上げる。何だろう?と思い、騎士団長様の視線の方に振り返ると─エディオル=カルザイン様が居た。
居たのだけど…
「まぁ…今日は酷い惨状ですね?誰がこんな酷い事を?怖いです…」
と、カルザイン様の左腕にギュウッとしがみつく聖女様を伴っていた。
ー今時の高校生は…積極的なんですねー
と、少し遠い目になった。
この子…この世界の勉強はしていないんだろうか?日本では問題がない言動でも、この世界では問題になる言動がたくさんある。言動一つで見方やその人の評価さえ変わる。私は、それらを身をもって感じさせられた。お姉さん達だって、4人だけの時は口では自由気ままな事を言ってはいたが、行動ではこの世界のルールに倣っていた。“聖女だから”と、傲る事もなかった。
チラリと、横に居るレイナさんを見ると、何かを我慢するように口をグッと閉じている。
そんな中で──
「惨状…ですか…」
と、低い…今までに聞いた事がない程の、低い声が響いた。
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