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第四章ー王都ー

“ハル”として

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「これなんだけど…大丈夫…かな?」

私の秘密のポーチから、アイスブルー色の魔石を取り出し、レフコースの前に差し出す。

『主が、コレを浄化してくれたお陰で、我と主との繋がりが少し強くなったのだ。』

フリフリと尻尾が揺れている…と言う事は、レフコースが喜んでいると言う事だろう。私もつられて笑顔になる。

「それで…これは、どうしたらレフコースの目に戻せるの?」

レフコースは、コテンと首を傾げて

『ふむ─。戻る…のだろうか?』

「え?」

『我にも分からぬ。』

「……」

えーっと…相手はフェンリルだけど、要は、この魔石を目に戻すイメージ?をすれば…良いのかな???

「取り敢えず、戻せるかどうか、試してみても良い?」

『勿論』

先ずは、手に持っている魔石を両手で包み込み、

ーレフコースの目に戻りますようにー

綺麗な、透き通ったアイスブルーの瞳。綺麗な真っ白な毛色のレフコースに、とても似合っている瞳。夢の中でも、とても印象的だった瞳。もう一度、レフコースの左目に戻りますように─。

ー本来あるべき場所へー

両手がほんのり温かくなって、水色の光が溢れた。その溢れた光が、そのままレフコースの左目へと流れて行く。そこからレフコースの全身を包み込んだ後、その水色の光は消え─



『あぁ…左目も見える。我が力もその分戻って来た。主、ありがとう。』


そう言いながら、レフコースは私の手に顔を擦り寄せ、嬉しそうに笑った。













「そう言えば…私って…あの時、気を失ってから誰が助けてくれたの?」

魔力封じの首輪を着けられて、気を失う寸前にレフコースの名を呼んだ所までは覚えている。お見舞いに来てくれたティモスさんも、何も教えてくれなかったし…と言うか、その時はパルヴァン様の事でいっぱいいっぱいだったから、訊けなかったんだよね…。

「レフコース、教えてくれる?」

『…あの時、主が我の名前を呼んでくれた故、更に繋がりが強くなった。あの魔導師が、贄の魔法陣を展開させていたのは覚えているか?我は、光の檻を解除させ、我にかせられていた枷も解除し、その魔法陣が発動しないように我の魔力を一気に解放したのだ。』

ー私を護る為に…あぁ、だから、あんなに魔力が溢れていても、全く怖くなかったのかー

『その後すぐだったな。あの騎士がやって来たのだ。』

「あの騎士?」

『ふむ。以前、パルヴァンで我が主に飛び掛かった時に、主を助けてくれた騎士だ。今回も、またその騎士が主を助けてくれたのだ。』

ーカルザイン様だー

『まぁ、今回は少し危なかったが、主の魔力が込められたピアスが発動して、あの騎士も無事だった。』

ーえ…あのピアス、発動しちゃったの!?ー

「と…とにかく…今回もまた、カルザイン様に助けられたんだね…。」

『…主は、その騎士と、魔導師には、あまり会いたくないのだろう?』

「……」

その問に、すぐに返事をする事ができなかった。


ーこのまま、何も言わずに黙っている?それともー


私は、レフコースのお陰で、この世界に居る意味を…居ても良いのだと言う事を知った。
正直、今でも王都に居る事には抵抗があるし、王族やその関係する人達には苦手意識がある。でも…私が本当にこの世界で生きていくと言うのなら…黙ったまま…では駄目なんだろう…と、思う。

“春ノ宮琴音”は無理でも…せめて…“ルディ”ではなく、“ハル”として、この世界で前を向いていけるように…したい。

ー魔法使いと言う事は、絶対に言わないけどね!ー

私は、レフコースの目をしっかりと見据える。

「会いたくなかったんだけど…助けてもらったのなら、ちゃんとお礼が言いたい。それに…もう、逃げたり隠れたりするのは…止めようかと思うんだけど…レフコースは…どう思う?」

『我は、主の側に居れるなら何でも良い。主がしたい事、する事を側で見守るだけだ─害を成す者には容赦しないが─』

「ん?最後…見守るだけ─の後何て言ったの?聞こえなかったんだけど…??」

コテンと首を傾げて

『何も言っていない。』

ーくっ…このコテンって言うの、本当に可愛いよねー

なんだか、その仕草で誤魔化されてる様な気もしなくもないけど…まーいっか…。

“側で見守る”か…。

「ふふっ。心強い味方だね。でも─私だって、レフコースの事、ずっと側で見守って行くからね!」

そう言うと、レフコースはパチクリと目を瞬かせた後、また嬉しそうに尻尾をフリフリしながら笑った。



よし。また前に進む事にしたけど、先ずは、このベッドから出る許可をもらったら、パルヴァン様達に私の話を聞いてもらおう。
そして…今度こそ、ちゃんとカルザイン様にお礼を言おう。あー、謝罪が先…かな?いや、そもそも会ってくれるかどうか…だよね…。拒否られたら…その時はその時に考えよう!

「うん。頑張れ!私!」

ベッドの上で握り拳を作りグッとしている私を、レフコースはやっぱり尻尾をフリフリしながら見ていた。









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