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第四章ー王都ー

夜会③

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「ティモスさん、ダンスって、そんなに簡単に踊れるようになるものなんですか?」

「俺も貴族じゃないからよく分からないけど、ダンスは小さい頃から習うらしい。このダンスの曲は基本の物で、一番踊りやすい曲なんだ。必死で覚えたかもしれないな。それに、殿下のリードも上手いんだろうな。」

成る程…ミヤ様やベラトリス様に弱いイメージしかないけど、やっぱり“王子様”なんだなぁ。

曲が終わると、2人は向き合って礼をする。そして、王太子様が聖女様をエスコートして玉座横にある椅子に座った。そのタイミングで、大広間に居る男女ペアの何人かが中央寄りに集まり、2曲目の曲が流れ、またダンスが始まった。

ーあ、ベラトリス様だ!ー

聖女様に気をとられて気付かなかったけど、王女様だもんね、絶対居るよね。

「あ、ベラトリス様と踊ってる人って…もしかして…。」

「そう、あの相手の人がイリス=ハンフォルト様。宰相の息子で、ベラトリス王女の婚約者だ。」

あの人は確か…還る日にショウさんをエスコートしてた人だ。王太子様の側近って事は、あの人も攻略対象者だったんだろう。でも、あの人は早い段階でベラトリス様を選んでいたと言っていた。本当に、ゲームの世界だけどのだと、更に実感する。

この新たな聖女様は、一体どんな扱いになるんだろう?そして、彼女は…時が止まっているのかいないのか。何もかもが分からない事だらけだ。彼女がどんな選択をするか分からないけど、この世界で楽しく過ごす事ができたら良いなと思う。

そんな事をつらつら考えいると、2曲目の曲が終わり、3曲目が始まった。ベラトリス様達は続けて踊り続けるようだ。
そっか、だから、続けて踊っても良いんだっけ。ミヤさんを離さず踊り続けた王太子様。その王太子様を引き摺って行ったベラトリス様。実際に目にはしていないけど、王城ここに居ると、どうしても色んな思い出が蘇る。そして、今日のこのたった今の事も、思い出の一つになっていくんだろう。

そして、ダンスの時間はそのまま暫く続いた。










「ルディ、そろそろリーナと一緒に控え室に下がってくれるかい?」

ダンスの時間が終わり、暫く談笑した後、レオン様がそう切り出した。

「分かりました。レオン様は、これからどうされますか?」

「後少しだけ挨拶回りをして、国王陛下に挨拶をしたら戻るよ。私が迎えに行く迄、控え室でゆっくりしていてくれ。」

と、レオン様とティモスさんは貴族の居る所へ、カテリーナ様と私は控え室へと向かった。





「カテリーナ様、体調や気分はどうですか?」

控え室に向かう間に問い掛けた。

「うーん。本当に何ともないわ。ドレスで締め付けていない分、いつもよりも体が軽い位だわ。」

と、笑顔で答えるカテリーナ様。確かに顔色も良いから、本当の事なんだろうけど、念の為、控え室に戻ったら、体調をコッソリみよう。

控え室のドアを開けて、カテリーナ様に先に入ってもらい、私が後に続いて入りドアを閉めた。

ーん?何か…部屋の感じが変わってる?ー

カテリーナ様に気付かれないように、視線だけで部屋の中を確認する。

ー何も…変わってない…かな?ー

少し気にはなったけど、取り敢えず先にカテリーナ様の着替えをする事にした。緩めのドレスを選んだと言っても、やっぱり窮屈な物には変わらないので、邸からワンピースを持って来ていたのだ。そのワンピースに着替えてもらい、レオン様が来る迄、のんびりする事にした。

ーうん。ところ、特に問題無しー

そして、コッソリと秘密のポーチから私のピアスを取り出す。

「カテリーナ様、これ、私がいつも着けてるピアスなんですけど、これ、“防御”の魔術が掛けられてるんです。念の為に、カテリーナ様が持っていてくれますか?カテリーナ様とお腹の子に何かあったら、レオン様も大変な事になっちゃいますから…。」

と少しおどけながら言うと

「ふふっ。それは…否定できないわね。何かあっても、私もいつもの様には動けないから…有り難く、お借りします。」

そう言って、ピアスを手にしてくれた。




ー何だろう…やっぱり変な感じが…するー

     

          カシャン



静かにティーカップが音を立てた。

カテリーナ様を見ると、机に突っ伏した状態で寝てしまっていた。

「カテリーナ様?」

ー疲れていたのかなぁ?ー

ハッとして、魔法を使って部屋全体を視る。

すると、部屋に飾ってある花を生けている花瓶から何かが溢れ出ていた。急いで花を引き抜き、花瓶を覗き込み中を鑑定すると

「眠り草が…混ぜられてる?」

何故?“眠り草”とは、その名前の通り、薬草の一つで、煎じて飲むと眠ってしまうのだ。特に体に影響を与えるような副作用もないから、カテリーナ様は勿論、お腹の子にも問題なないだろう。でも…一体、誰が、何故?

「兎に角、これを捨てて…窓も開けなきゃ…」

と、花瓶を持って立ち上がり窓辺に移動しようとした時、私の後ろでドアが開く音がして─


「あれ?まだ動ける奴が居たのか。」

と言う声がした。




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