今更ですか?結構です。

みん

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急展開?

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『フェリにまた…してもらえるように頑張るから…後1年と少し…私に時間が欲しい。』


『今は何も…言わないで欲しい。ただ、聞いて欲しかっただけだから。』




何も分かってない───

聞いて欲しかっただけ?それで、私がまた、心を傾けるとでも……思ってる?



それに───



「いやいやいや!言わせて欲しかったですけど!?」

「何を?」

「ひぁっ!?」

あれから第一王子と別れ、帰る為に待機させていた馬車に乗り込んだ瞬間、我慢ができずに叫ぶと、そこには─

「なっ……何でリオが馬車ここに居るの!?」

何故か、リオが長い足を組んで座っていた。

「寮で荷物整理をしてたんだけど、どうやらフェリの部屋に忘れ物をしたみたいで。それで、一緒にエルダイン邸に連れて行ってもらおうと思って、待ってたんだ。」

「待ってたって…早く終わったけど、もっと遅くなる可能性とかもあったのよ?どれだけ待つつもりだったの?」

「フェリとメルヴィルのお茶会が長くなる─って事があるのか?」

「──無いわね。」

「だろう?」

そう言って、リオはしたり顔で笑う。

「で、何を言いたかったのか、聞かせてもらいながら帰ろうか?」

と言われて、私はリオの向かい側の椅子に座り、移動する馬車の中で、さっきのお茶会のやりとりを話した。







エルダイン邸に到着して、リオの手を借りながら馬車から降り邸の方へと歩いていると

「あ、馬車に忘れ物をしたから、フェリは先に行ってて。」

と言われて、リオは馬車に戻り、私は先に邸へと入って行った。




「あぁ、お嬢様。お帰りが遅かったですね。」

「──王城に行くと、連絡を入れた筈だけど?」

「そうでしたか?」

邸に入った早々に、妹付きの侍女に捕まった。

「お帰りが遅いので、夕食は要らないと思って、料理長には要らないと伝えてしまいました。なので、今日のお嬢様の夕食は…ありませんよ?」

と、ニヤリと口を歪ませて嗤っている。

ーなるほど。それが言いたくて、態々玄関ここで待っていたって事ねー

もう、溜め息すら出ない。そのまま、私は何の反応もせずに自室へと足を向けようとした時─

「ふん。返事も無しです────」
「へぇ…この邸の侍女は、辺境伯令嬢のフェリシティよりも、身分が上なんだな。」

いつもよりトーンの低い声と、全く笑っていない目をしたリオが私の後ろに立っていた。

「なっ──チェスター様!?」

「お前は、侯爵か公爵のご令嬢なのか?」

「いえ、私は───」

この子は確か、ミルア。子爵家の三女だった筈だ。勿論、リオだって、私より下の身分だと分かって言っているんだろうけど。

「え?違うの?じゃあ、子爵か男爵なのか?その上で、自分が仕えている邸の令嬢に、その態度なのか。」

「わ─私っ─私がお仕えしているのは、アナベル様で──」
「アナベル嬢付きの侍女だから、その姉のフェリシティはどうでもいいと?」

ミルアの顔色かどんどん悪くなり、震え出した手をギュッと握って、私にチラチラと視線を向けて来る。

ーえ?そんなに私を見ても、助けないわよ?ー

自分達は、もっと酷い事を私に言ったりやったりしてるからね?こんな事位で私に助けを求めないで欲しい。

「俺が知ってる頃のエルダインの使用人達は、きちんとしていたが…今では質の悪い者になってしまったんだな。この事は、辺境伯様はご存知なのか?」

「──すみません。おそらく…知らないかと。」

リオが後ろに視線を向け、その問に答えたのは兄だった。

ーいつから居たの?と言うか…コレは何?一体何が始まったのかよく分からないけど、私は口を出さない方が…良いのよね?ー

そう思い、私は黙って3人のやり取りを眺めている事にした。

「知らないとは言え、俺はこんな質の悪い使用人の居る所に、預けられていたんだな。」

「質の…悪いとは…言い過ぎではありませんか?私は、アナベル様にはしっかりとお仕えしてます!他の使用人達も、奥様やシリル様には────」
「フェリシティだけに対して悪くなるのか?人を…仕える立場の相手を冷遇しておいて、“しっかりとお仕えしてる”なんてよく言えたもんだな。いっそ、笑えるな。こんな所に、フェリシティを置いておくと…心配になるな。第一王子の婚約者候補の1人でもあるって分かってる?何かあった時…困るのはお前達だよ?これは─現辺境伯様と、次期辺境伯のシリルも同罪だと見做されても仕方無いけど?」

「─そう思われても…仕方ありませんね。私は今迄、黙って見過ごしていましたから。」

「それで?これからは…どうするんだ?」

「そう…ですね…。今すぐにこの邸の使用人を精査すると言っても、あくまでも雇い主は母ですし、私も嫡男と言えども、人を動かせる力はまだありませんから…。フェリシティ。」

と、兄が急に私へと視線を向けて名を呼んだ。

「はい。」

「ここに居ても…息が詰まるだけだろう?フェリシティの気持ち次第だが……お前も、寮に入るかい?」



その時初めて、兄シリルの少し困った様な顔だったけど、笑顔を見た。




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