82 / 426
連載
【兄視点】視察の目的
しおりを挟む
「はあぁ…。」
視察の名目で街へと向かう馬車の中。
レイ殿下が大きなため息をついたのはこれで何度目だろうか。
「レイ殿下、どうしたんです?そんなにため息ばかりついて。」
理由はわかっているけど。
「ん?…ああ…。せっかく街へ行くのだからクリステア嬢も連れて行けたら良かったのに、と思ってな…。」
まったく、油断も隙もない。今朝いきなり視察に行くと言ったかと思えば、クリステアも一緒に行かないかと誘うとは。
「用事があるのなら仕方ないでしょう?」
…同じ街に行く用事なんだけどね。
目的地は同じだが、クリステアのことだ、きっと上手く立ち回ってばったり出会うなんてことは避けるのだろうな。
せっかくだから、クリステアも連れて行きたかったけれど…レイ殿下とこの狭い馬車の中で一緒に移動するのはちょっとね。
レイ殿下はこの移動の間にもクリステアとの距離を詰めようと思っていたに違いないから。
…クリステアたちは、もう街にいるのだろうか。
転移で移動すると言っていたからな…。
僕にも転移魔法は使えるのだろうか?
転移魔法が使えたら、もう少しマメに帰れるのに…。
「…マン、おい、ノーマン?」
「えっ…?…あ、申し訳ありません。少しぼんやりしていました。」
「珍しいな。お前がぼーっとしてるなんて。」
「そうでしょうか?」
確かに、普段はレイ殿下の護衛のために気を張っているから、ぼんやりしてるなんて僕らしくない。帰省中だからって気を抜きすぎたかな。
「申し訳ありません。気をつけます。」
「いや、いいんだ。帰省中くらいのんびりしてろ。お前はいつも頑張りすぎだ。俺だって王都を離れてる時くらい羽を伸ばしたいよ。視察と銘打って遊びたいだけだしな。」
ニッと笑うレイ殿下。こういうところは憎めないんだよな。
「そんなことを言って、いつも自由気ままに過ごしているでしょうに。」
今度はこちらがため息をつく番だ。
「いいや、お前はわかってない。王宮では王太子たるもの、次期国王として国民に恥ずかしくない振る舞いと気品を持てだの何だのガミガミ言われ、学園にいたらいたで、身分の上下は問わないと言いつつも、王太子として全生徒の模範となるようにと何かあるごとにガミガミと言われ…気の休まる時がない。」
僕以外の人の目がないからか、ズルズルと背もたれからズリ落ち、ぐだ~っと姿勢を崩した。
ちなみに後半の、学園でガミガミ言っているのは僕だ。
「レイ殿下、だらしないですよ。どこで誰に見られているか分からないんですから気を抜かないようにしてください。」
先ほどぼんやりしていた僕が言えた義理ではないけれど。
「へいへい。…あ、そうだノーマン。さっき聞こうと思ったんだが…。」
「何でしょう?」
「クリステア嬢に土産を買おうと思うんだが、何を渡せば喜ぶと思う?」
「…さあ、何が良いでしょうね?僕も何を選ぼうかと考えていたところです。彼女は僕が何をあげても喜んでくれるので、逆に悩んでしまいますね。」
行き先は同じでも、クリステアには何か贈ろうと思っていた。
レイ殿下も同じことを考えていたのか。
「…ふうん。今回はどうするつもりなんだ?」
「最近はヤハトゥールに興味があるようですので、ヤハトゥールの品を買おうかと思っていました。」
「ああ…そういえば、食材もヤハトゥールのものをよく使うようになったんだったな。」
「ええ。これから向かう街には、最近王都でもヤハトゥールの品を豊富に扱う商会として名が知られはじめたバステア商会があるので、そこで買おうかと。」
「よし!俺もそこで何か選ぶとしよう!まずはその商会に向かおうか!」
レイ殿下は嬉々として行き先を御者に伝えたのだった。
僕に選ぶのを手伝わせるつもりだな?まったく…。
視察の名目で街へと向かう馬車の中。
レイ殿下が大きなため息をついたのはこれで何度目だろうか。
「レイ殿下、どうしたんです?そんなにため息ばかりついて。」
理由はわかっているけど。
「ん?…ああ…。せっかく街へ行くのだからクリステア嬢も連れて行けたら良かったのに、と思ってな…。」
まったく、油断も隙もない。今朝いきなり視察に行くと言ったかと思えば、クリステアも一緒に行かないかと誘うとは。
「用事があるのなら仕方ないでしょう?」
…同じ街に行く用事なんだけどね。
目的地は同じだが、クリステアのことだ、きっと上手く立ち回ってばったり出会うなんてことは避けるのだろうな。
せっかくだから、クリステアも連れて行きたかったけれど…レイ殿下とこの狭い馬車の中で一緒に移動するのはちょっとね。
レイ殿下はこの移動の間にもクリステアとの距離を詰めようと思っていたに違いないから。
…クリステアたちは、もう街にいるのだろうか。
転移で移動すると言っていたからな…。
僕にも転移魔法は使えるのだろうか?
転移魔法が使えたら、もう少しマメに帰れるのに…。
「…マン、おい、ノーマン?」
「えっ…?…あ、申し訳ありません。少しぼんやりしていました。」
「珍しいな。お前がぼーっとしてるなんて。」
「そうでしょうか?」
確かに、普段はレイ殿下の護衛のために気を張っているから、ぼんやりしてるなんて僕らしくない。帰省中だからって気を抜きすぎたかな。
「申し訳ありません。気をつけます。」
「いや、いいんだ。帰省中くらいのんびりしてろ。お前はいつも頑張りすぎだ。俺だって王都を離れてる時くらい羽を伸ばしたいよ。視察と銘打って遊びたいだけだしな。」
ニッと笑うレイ殿下。こういうところは憎めないんだよな。
「そんなことを言って、いつも自由気ままに過ごしているでしょうに。」
今度はこちらがため息をつく番だ。
「いいや、お前はわかってない。王宮では王太子たるもの、次期国王として国民に恥ずかしくない振る舞いと気品を持てだの何だのガミガミ言われ、学園にいたらいたで、身分の上下は問わないと言いつつも、王太子として全生徒の模範となるようにと何かあるごとにガミガミと言われ…気の休まる時がない。」
僕以外の人の目がないからか、ズルズルと背もたれからズリ落ち、ぐだ~っと姿勢を崩した。
ちなみに後半の、学園でガミガミ言っているのは僕だ。
「レイ殿下、だらしないですよ。どこで誰に見られているか分からないんですから気を抜かないようにしてください。」
先ほどぼんやりしていた僕が言えた義理ではないけれど。
「へいへい。…あ、そうだノーマン。さっき聞こうと思ったんだが…。」
「何でしょう?」
「クリステア嬢に土産を買おうと思うんだが、何を渡せば喜ぶと思う?」
「…さあ、何が良いでしょうね?僕も何を選ぼうかと考えていたところです。彼女は僕が何をあげても喜んでくれるので、逆に悩んでしまいますね。」
行き先は同じでも、クリステアには何か贈ろうと思っていた。
レイ殿下も同じことを考えていたのか。
「…ふうん。今回はどうするつもりなんだ?」
「最近はヤハトゥールに興味があるようですので、ヤハトゥールの品を買おうかと思っていました。」
「ああ…そういえば、食材もヤハトゥールのものをよく使うようになったんだったな。」
「ええ。これから向かう街には、最近王都でもヤハトゥールの品を豊富に扱う商会として名が知られはじめたバステア商会があるので、そこで買おうかと。」
「よし!俺もそこで何か選ぶとしよう!まずはその商会に向かおうか!」
レイ殿下は嬉々として行き先を御者に伝えたのだった。
僕に選ぶのを手伝わせるつもりだな?まったく…。
231
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。