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日記
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しおりを挟む俺は、イツ子さんの肩を掴み、体から引き離した。そして、
「あれは何なんです」
と訊いた。座敷牢と、その中にいる者、両方について明かせと、その一言に込めたのだ。イツ子さんは、泣きながら、力が抜けたように座り込んでしまったが、俺がまた家の奥に行こうとすると、察したのか、足にすがりついて、
「駄目、駄目です。行ってはいけません」
と叫ぶように言って止めた。そして、
「どうしても行くと言うのなら、まずは蔵をご覧になってください」
と目を剥いて呟いた。
その尋常ではない様子に、俺は身を凍らせた。座敷牢に近づいてはいけない。迂闊に、あの中にいる者の側に寄ってはいけない。イツ子さんの恐怖に染まった眼差しが、そう戒めているように思われた。
俺は、即座に襖を開けて居間を抜け、縁側の板戸を乱暴に一枚外し、家の中を突っ切る形で庭に出た。蔵に行くには、そちらの方が近い。靴は履いていないが、構わなかった。
気が気ではなかった。池の横を通り、蔵の前に立つなりに重い扉を開いた。隙間から、むわりと腐臭が流れ出てきて、俺は思わず顔を背けた。
差し込む光によって、中にあるものが明らかになると、俺は腰が抜けてしまった。
そこには幾つもの死体があった。親父の弟子、神主、巫女、二人の乞食遍路、派手な坊さん、見たことのある顔ぶれが乱雑に重なっていた。そして、婆さんまでもがいた。
俺は開いた扉に掴まって立ち上がり、その光景をしっかりと目に焼き付けた。
遺体はそれぞれ度合いの違う腐り方をしていて、所々鼠と虫に食い荒らされていた。
頭が割れている者、首が折れ曲がっている者、或いは抉れている者、服が破れて赤褐色に染まっている者。死因は様々のようだったが、婆さん以外は、確実に殺害されたのだと分かる死に様だった。
俺は遺体が殺されたものであると確信した途端に、自分が危機に陥っていることに気づいた。やったのは家族だ。俺に知られまいとしていたのは、俺を殺人事件に巻き込まないように取り計らうためだったのではないか。
であれば、ここにいてはいけない。そう思った。
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