【完結】彼此繋穴~ヒコンケイケツ。彼の世と此の世を繋ぐ穴~

月城 亜希人

文字の大きさ
45 / 82
日記

34

しおりを挟む
 
 
 七月二十六日(月)晴れ

 音を立てないように気をつけた甲斐あって、鳴神を起こさずに済んだ。

 頭も大分すっきりしたので、先日、二十五日のことをまとめる。

 昨日は、晴れていたが、一昨日の雨の後だからか湿気が少なく風もあって、気温がそこまで高いようには感じられなかった。虚弱体質の俺でも、鳴神についていけたのは、それがあったからだろう。

 車もリヤカーも調達できなかったので、

「大八車を親父に頼んで借りようか」

 と提案したが、鳴神に、

「大八車は元が重いし幅を取るから狭いところや坂に向かないよ。それに荷の安定性に欠けるから、いちいち縄で物を縛らないといけないし、重い分、移動速度も落ちる。下手をすれば、かえって時間を食ってしまう。昨日はすごい雨だったから、未舗装路の多いこの土地じゃ、ぬかるみに車輪がはまる可能性もあるし、使わない方が良いんじゃないかな」

 と、分かりやすく理由を添えて断られた。それで重たい麻袋を担いでの徒歩運搬になった訳だが、まぁ、重いは怖いはで大変だった。

 鳴神は細身だが、とにかく力も体力もある。俺も負けん気を出したが、ついていくのがやっとで、到底、敵わんと実感した。

 しかし、人より優れている分、消耗も激しいようで、運搬中は、ちょくちょく握り飯を食っていた。訊けば、一日に五食か六食は食わないと痩せてしまうとのことだった。

「飯に金が掛かって仕方がないんだよ。半分は女だから月のものもあるし、頭痛、腹痛は当たり前、乳が張って痛くなるときもある。汗を流そうにも銭湯には行けないし、おまけに立ち小便もできない」

 と、鳴神は苦笑して言った。尿意を催したとき、いちいち便所を探す姿を見て不思議に思っていたが、そういうことかと合点がいくと同時に、不便なところのほとんどが女の部分にあるのだと気づかされ、女というのは難儀な体を持っているのだな、と思った。

 うっかり書き忘れるところだったが、作業時には薬は使っていない。

 勿体ないから処分はしていないが、もう飲むことはないだろう。

 今度、酒と一緒に、イツ子さんにでもやろうと考えている。

 トラバサミというものを初めてまともに見たが、肉食獣の口を連想させるものだった。開閉部には鋸刃が幾つも並んでいて、その外部両側に、二つ折りになった金属の帯がついている。鎖と輪もついていた。

 鳴神に構造をざっと説明されたが、早かったのと怖かったのとで、いまいち頭に入っていないので詳しく書けない。が、要約すれば、バネの伸縮性を利用した罠ということらしかった。

 開いてみろと言われたが、鋸刃があるから怖くてできないと言うと、そっぽを向いてやれば良いと言われた。それに従って、試してみて驚いた。まるで開かない。鳴神が言うには、腕力だけで開く者はそういないとのことだった。確かに、簡単に開くようじゃ罠としては問題だ。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

処理中です...